Food Travel

食材狩人 第5回: 官能検査のスペシャリスト

中華のプロの料理人が指名買いする「あの商品」を徹底解剖。ユニークな食材の背景にある、知られざるストーリーを追い求め、食材狩人が西へ東へ走ります。


2012/6/28up

官能検査のスペシャリスト

その字面のせいか、一見その内容が理解しにくい官能検査。実はこれ、意図する味と風味を保っているかどうかを、人間の五感を使って確認する検査で、決してあやしいものではありません。

昨今は、食品の風味評価のために理化学的な測定も行いますが、やはり食品の場合は、最終的に人が判断するのが一番の肝となるのは今も昔も変わらない事実。このオイスターエキスの味もまた、熟練のコック同様、この味ひと筋ウン年という官能検査のスペシャリストたちが支えてきました。


官能検査スペシャリスト
神の舌を持つ、白衣の二人。
日々あらゆるエキス類の複雑な風味を判定している、官能検査のスペシャリストです。


金森さん
開発部の金森良史さん。毎日官能検査を続けてこの道十数年のベテラン。得意な味判定は「苦味」。

この検査で確認する基本的な要素は、苦味、酸味、甘味、塩味、旨味の五味(ごみ)。五味というと、陰陽五行説の五味を思い出す方もいらっしゃるかもしれませんが、ちょっと違うのは「辛味」ではなく「旨味」が入っているところ。もちろん、味覚だけでなく、視覚や嗅覚、舌の触覚など、あらゆる感覚を使ってオイスターエキスを確認していきます。

検査の方法は意外とシンプル。それは、風味が確認できる最低限の濃度と温度―――、具体的には、エキスを10倍に希釈し、40~50度の温度にして試飲するのだそう。その際の比較対象となるのが前回の合格品。両方のエキスを、超うす味&微妙なぬるさにして、味や香りを判定するのです。検査員は3名で、全員の合格が出ないとやり直し。

「統一しているのは、塩分、溶液中の固形分濃度であるブリックス、phの3つ。そこは数値で測って決めており、粘度も粘度計で計って確認しています。しかし、最も大切なのは味、におい、色の3つ。料理人の方も、そこを判断基準にしますよね」というのは、この道十数年のベテラン・金森さん。

田淵さん
開発部の田淵豊さん。カクサン食品に新卒で入社し、見事官能検査員に抜擢。得意な味判定は「五味ではありませんが、辛味ですね。辛さの中にある旨みの違いがわかります」。

極めて敏感な感覚を持っていないと務まらなさそうなこの仕事。尋ねてみると、やはり味の違いを的確に言える人と言えない人、味によって得意な人、不得意な人がいるそうで、訓練はもちろんのこと、もともとの素質もあるようです。しかし、官能検査のスペシャリストでも、五味をバランスよくパーフェクトに判別できる人は少ないのだとか。

特にオイスターエキスの場合、天然の牡蠣から作られるため、同じように作っていては、当然仕上がりに違いがでてしまうもの。25年間ずっと変わらぬ味を提供できているのは、製造スタッフと官能検査スタッフの二人三脚で歩んできた結果でもあるのです。

こうして官能検査と品質検査で合格が出たら、高温のまま充填へ。充填温度は、牡蠣の旨みを残すため76度以上。短時間の超高温殺菌ではなく、長時間殺菌にすることで、独特の風味を保ったままパッケージングされています。


充填機
充填中のオイスターエキス。


牡蠣の種付けに始まり、約2年の生育期間を経て、クレーンでの水揚げ、選別、洗浄、牡蠣打ち(殻むき)、そして15時間の煮込みと、長い年月をかけて、ひと缶に227粒の牡蠣をたくわえたオイスターエキス。これが小さじ2分の1杯だけでも料理に入るだけで、ぐっと旨みと香りが増すというのも、なんだかわかる気がしませんか。

次回は、このオイスターエキスを愛用している中国料理店に、その活用法をうかがいます。

NEXT TRAVEL>「オイスターエキスの使い方-上海家庭料理 大吉-」


Text 佐藤貴子(ことばデザイン)
Photo 清水武司(joy)

カテゴリ:
Food Travel

記事公開日: 2012/6/28

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