中国料理留学をテーマにした座談会もいよいよクライマックスへ。シェフからのアドバイスは必見です!

留学シェフの留学指南

――さて、これまで留学前の準備や、現地での様々な体験など話は尽きないところですが、そろそろまとめに入らせていただきたいと思います。まずは、まだ決して多くはない留学経験シェフであることから、3シェフには留学志望者からの相談も多いかと思うのですが…。

高木――「高木さん、台湾でうちの若い子が修行したいって言ってるんだけど…」なんて話はあるね。僕はそういう場合、一度本人と会ってみることにしています。むやみやたらに紹介できないからね。

――そこでどんなことを確認するのでしょうか。

高木――まずは言葉が話せるかどうか。ちんぷんかんぷんなようであれば、「よしなさい。言葉覚えてから行きなさい」と言います。言葉ができなくちゃ、厨房に入ってもお客さんのまま。ただボケーッとして、何も仕事が与えられないまま過ぎていくよ。でも、行くからにはやっぱり仕事をしないと意味がないだろう?だから言葉が重要なんだよ。

陳 ――僕のところにも「行きたいんだけど」という相談はよく来ますが、やっぱりそんなに簡単に紹介できるものじゃなないですよね。なので、そこは一度会って話をします。 でも、中国や台湾に料理修行に行きたい人が多いというのは、僕は嬉しいです。どんどん行ってほしいし、やっぱり現地を感じてもらいたい。地域や店によって料理の方向性も違うし、それに対する感じ方も十人十色。行けるというチャンスがあるのなら、絶対行ったほうがいいです。

――最後に、留学を志す人にメッセージをいただけますでしょうか。

陳 ――行く前に、自分を一度空っぽにして、全部捨てていった方がいいと思います。きっとその方がいろんなことを吸収できるはずです。

小林――その通りですね。また、留学は年々留学に行きやすくなっていると思います。これまで行った人の情報も蓄積されてきているので聞くことができるし、先方に拒否されることも少なくなってくるでしょう。今は政治的に緊迫した関係が続いていますが、それを超えればまた行きやすくなる時がくるかもしれません。
あと、何度も話に出ましたが、まずは基本的な語学力を身に付けて、会話したり、理解しようとすることを諦めず、コミュニケーションをとっていくことが大切です。また、優しくしてくれる人とだけ口をきくのではなく、何でも聞く、誰にでも話しかける。4人いたら4人全員とコミュニケーションをとっていった方がいいですね。

陳 ――僕は留学をして、料理だけじゃなく、いろんな経験…とくに友達、兄弟弟子があちらにできたというのが一番よかったことです。今は年に一度しかあちらに行く機会がありませんが、彼らはメールで現地でこんな料理が流行ってるとか、こんな調味料ができた、っていうような生きた情報をくれるんですよ。それで気になれば、こっちに来てもらって教えてもらうこともできますしね。
また、僕ら四川飯店のスタッフも、みんなであっちに行けるよう、毎月少しずつでも貯金しようって言い合っています。そうやってどんどん交流していければいいなと。

高木――それはいいことだな。

陳 ――せっかくできた縁ですし。

小林――それはぜひ繋げていったほうがいいね。

高木――やっぱり、友だちができると、仕事の技術以上にもっともっと大きなものを得ることができるよね。俺を引き受けてくれた馥園のオーナー、楊さんとは30年もの付き合いになる。現地の料理人仲間だって、25年たっても交流している。俺にとってかけがえのない宝だよ。

陳 ――最終的には人と人の繋がり。それは間違いありません。

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Text 佐藤貴子(ことばデザイン)
Photo 林正