プロへの指導経験も豊富な馥香・高木シェフ式「ふかひれの下処理のコツ」を伝授!

※このシリーズは、9月下旬に中国飯店 三田店にて行われた座談会「第2回 中華好き人口を増やす会」の模様をお届けします。


今回の座談会では、年齢の離れたシェフ同士ということもあり、経験豊富な高木シェフから小林シェフ、陳建太郎シェフに対して、食材の扱い方についてアドバイスをするシーンが度々見られました。そこでひとつ、これは使える!という技が「ふかひれの下処理のコツ」。調理場でご覧いただいている読者の皆様のご参考になればこれ幸いです。

高木式・ふかひれの戻し方

高木塾

高木――ひとつ、今日は吉切尾びれの素むきを戻すポイントを俺が教えよう。
まずは必ず1時間蒸す。そうすると、ヒレの繊維から出たゼラチンで、繊維同士が“ピッ”とくっついて、煮ても割れが少なくなる。

小林――形が美しいのは大切ですよね。1時間蒸すんですか?

高木――そうです。

――水に入れるんですか?そのままですか?

高木――そのままです。スムキ、つまり乾燥のままですね。毛羽だったところはカットして、そのまま蒸篭(せいろ)に入れると、“ピッ”となりますよ。
あと、難しいのが毛鹿(モウカ)の背びれだ。これは1時間半蒸す。背びれは内側の縁が中に入りがち。だから蒸した後、蒸篭から出したら重しを乗せて、さらに1枚鉄板を乗せます。重しの重さは一斗缶を乗せるくらいかな。するとこれも“ピッ”となる。やるときは、一晩で2~3回りは大きくなっちゃうから、竹網に糸で余裕もって軽く縛っておくといいだろう。

小林・陳――ありがとうございます。

高木――そうしたら本当にきれいに戻るよ。

毛鹿(モウカ)の背びれ
毛鹿鮫(モウカザメ)の背びれ

――こうした技も、留学先で学んだことですか?

高木――そうです。馥園(フウエン ※注:詳細は第1回)では全部見せてもらいました。9時半のラストオーダーが終わると、みんなで台を囲んで、ふかひれに下味を入れていた。出汁は二番出汁を使うんだよ。
中でも毛鹿(モウカ)は難しい。割れやすいからね。押し込んでも上がってきて、ポコンポコンと割れちゃう。それを避けるのがさっきのような下処理の仕方なんだ。

小林――毛鹿(モウカ)どうしてもヒレ同士の繊維が、お互いがはじいてしまうんですよね。

高木――そう、膨らんできちゃうから難しいんだ。でもうちでは1枚も割れないよ。350から500gくらいのものを用意してるけど、どれもキレイに仕上がる。
あと、最後の仕上げはレモン水を入れること。最後にもう一度熱を加えなきゃいけないというときに、レモン水を入れて脱臭します。鮫は、アンモニア臭が出るでしょう。最後に柔らかくするとき、ひと沸かししなきゃいけないときにレモン水。それで、その日は密閉して蒸すといいよ。

陳 ――こういう乾物勉強会みたいなものが定期的にあったらいいなあ。ありがとうございます。

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Text 佐藤貴子(ことばデザイン)
Photo (座談会)林正 / (フカヒレ)西田伸夫