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80Cイベント 第1回「順徳料理を食べる会 at 香宮」vol.3 甜品編

技ありデザートが目白押し!広東省の食の古都・順徳をテーマにした宴会レポート、最終回は甜品編です。

2015/9/29up

「順徳料理を食べる会 at 香宮(シャングウ)」
vol.3 甜品編

前菜編料理編に続いてご紹介するのは甜品編。シンプルな材料で形作るお菓子は、日本ではほとんど見ないものばかり。これぞ「技」あり!

■甜品

大良薑撞奶(生姜ミルクプリン) 白糖糕(天然酵母の蒸しケーキ)
煎堆皇(巨大揚げ団子) 鶏仔餅(ナッツ入り焼き菓子)



大良薑撞奶(ダイ リョン キョン ジョン ナイ)

大良薑撞奶

生姜酵素とたんぱく質の化学反応で生まれるプリン

大良薑撞奶は、ミルクを使った料理を数多く生んだ、順徳大良名物の生姜ミルクプリン。発祥の地は順徳のお隣、広州の沙湾エリアですが、この一帯は双皮奶(卵白を加えて二度蒸しする牛乳プリン)とともに、水牛のミルクを使った甜品が名物。フレッシュな水牛のミルクの入手が難しい地域では、牛乳で作られるのが主流です。

ユニークなのは、これが食品の化学反応をダイレクトに利用して作られていること。生姜に含まれるたんぱく質分解酵素・ジンジベイン(ショウガプロテアーゼ)の働きが最も活発になる温度に牛乳を温めて、生姜の絞り汁に注ぐとあら不思議。牛乳のたんぱく質が一度分解され、その成分が再凝集する際に、プリン状に固まるのです。

口に入れると、フッとほどけるように液化するはかなさは、このプリン独特の食感。生姜の辛みがあると、牛乳のほんのりとした香りと甘みがかえって引き立つもので、その相性のよさに驚きの声も聞かれました。薑撞奶そのものは、「香宮」はもちろん、香港の「義順牛奶公司」や、順徳の「民信双皮奶」などの専門店で食べることもできるので、旅行の際にぜひ食べ比べてみては。

※大良薑撞奶は、薑汁撞奶、薑埋奶、姜撞奶とも記されることがあります。
「大良」は順徳の地名、「薑」は広東語における生姜、「撞」はぶつける、(鐘などを)撞く、「埋」は埋める、「奶」はミルクの意味。いずれも生姜とミルクを勢いよく注いで作る調理法を表現した料理名です。

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白糖糕(バッ トン コウ)

白糖糕

ほのかな酸味が魅力!米粉の発酵蒸しケーキ

白糖糕は、順徳区倫教鎮発祥の蒸し菓子「倫教糕(ロンガウコウ)」が元祖。清朝1855年、この界隈に住む梁礼成さんが、うるち米、砂糖、発酵種(老面/広東語では麺種)で作った、シンプルな米粉の蒸しケーキです。

甘く白く、しっとりと瑞々しく、ほんのり酸の香りが鼻に抜ける素朴なこの菓子は、広東省を中心に他地域に広まって、白糖糕という呼び名に。一方で、本家の味は「歓姐倫教糕」という店で受け継がれている、お菓子の世界遺産的存在です。

この日は本場同様、大きな蒸籠で蒸したものを取り分ける前に披露。料理を手がけたのは、なんと新卒で入社半年の岡田奈実さん(写真左)。岡田さんは2015年の冬に順徳を訪れた時、「倫教糕」をお持ち帰り。本来は発酵が容易に進みやすい春夏に適した料理だそうで、気候の異なる日本で、常に同じコンディションに仕上がるよう、数えきれないほど試作を重ねて臨みました。

ここでは日本のお米と「香宮」で作ってある発酵種を使ってその味を再現。ほのかな酸味と、艶があるしっとりとした蒸し上がりは本場に遜色なく、甘さは少々控えめ。素朴ながら飽きのこない味に、心が順徳に富んだのでした。

白糖糕

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煎堆皇(チン トイ ウォン)

煎堆皇

唐代から伝わる巨大な球形伝統菓子

「えっ、なんですのこれは…?」 テーブルに運ばれてきた瞬間目が釘付け、そしてざわつかずにおれないお菓子がこちら。「煎堆(チントイ)」は唐代にその記述が残る伝統菓子。その特大版ということで「煎堆皇(チントイウォン)」です。

「煎堆はもともと胡麻団子の原型とも言われています。順徳では、中に落花生やココナッツ、冬瓜の砂糖漬けなどを餡で固めたものを餡にして作るのですが、僕が練習してできるようになったのは、香港でも食べられる中が空洞のタイプ。旧正月などおめでたい日に食べられる料理で、日本で提供している店はほぼないので、本日お出しすることにしました」と篠原シェフ。

大きさは直径約20cmほどで、皮はチュイルのように薄く細かい網状で、光が透けるよう。口にするとほのかに甘く、クリスピーさが身上です。材料はもち米、砂糖、水のみ。油に入れてコロコロと回していくと、生地が膨らみ、このような空洞になるのだそう。まさに技の“タマモノ”ですね!

煎堆の食べ方


ざっくりハサミで切る


生地を手づかみで食べる


中に種があるならつまんでも

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鶏仔餅(カイ ジャイ ペン)

鶏仔餅

奉公中の娘が発明、広東を代表する銘菓に

篠原シェフが「この宴会のために鶏仔餅の木型を買ってきた…!」という肝入りの一品。こちらも古典菓子のひとつで、発明されたのは清朝咸豊年間の1855年ごろ。広州の富豪・伍さんの家に小鳳(「鳳ちゃん」といったニュアンス)と呼ばれるお手伝いがおり、彼女がこの餅を作って焼いたところ、皆に喜ばれて「成珠館」で出すようになったのが由来。

元々の菓子名は作り手の小鳳にちなんで「小鳳餅」と言い、のちに店は広州の大茶楼「成珠茶楼」に発展。1985年に火災で240年の歴史に幕を閉じますが、同店がひよこの絵を商標に描いたことから、この餅は「鶏仔餅」と呼ばれるようになり、今に受け継がれてきたのです。

見た目や質感は月餅の鶏型といった感じですが、具には豚の脂身や梅菜を入れ、ナッツを使った甘じょっぱい五目餡が特徴。ほのかな腐乳が香しく、風味からしていかにも古い料理という感じがあります。

鶏仔餅

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こうして順徳料理を中心に、マニアックな広東料理を楽しみつつ、シェフの「順徳アルバム」(なんと写真600枚)を片手に見ながら、めくるめく順徳ナイトは23時前に閉幕。手間のかかる伝統的な料理を再現してくださった「チーム香宮」に、心より御礼申し上げます。

そして翌日「もっともっと腕を磨いて、ぜひまたトライしたいです!」と言ってくださった篠原シェフ。まだまだシェフも、私たちも知らない料理が広東省にたくさんあるはず。現地に足を運び、歴史を紐解きながら、ぜひ今後も様々な中国料理を楽しむ機会を作っていきたいと思います。


Text & Photo 佐藤貴子
料理名広東語読み監修 篠原裕幸

参考資料
『中国名菜譜 南方編』(中山時子 訳 / 柴田書店 / 1976年)
蘋果日報(煎堆王)
百度百科(煎堆)


カテゴリ:
Chuka Lovers

記事公開日: 2015/9/29

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