春巻といえば、日本では揚げ春巻が定番。しかし、「老四川 飄香」の井桁良樹オーナーシェフが四川省成都市で修行していた2001年当時、街角の屋台で売られていた春巻は、揚げないものが定番だったそう。

小麦粉を練って焼いた生地に、冷ました炒めものを巻き、辛味の効いたソースをつけて食べる小吃が往年の街場の味。日本で春巻の皮と言えば、市販のくっついた生地を注意深く剥がして使うイメージですが、かつての成都の道端の屋台に思いを馳せ、手作り生地の四川春巻を作ってみてはいかがでしょう。春餅とはまた違った生地の作り方です。

四川春巻

皮の材料は強力粉200g、水170g、塩2g、砂糖3g。これらを練って15分寝かせ、さらに練って1時間以上冷蔵庫で休ませます。ベストコンディションは、生地を手に持ち、ヨーヨーのように伸び縮みするようになっていればOKです。

さあ、ここからが腕の見せ所。生地を片手に持ち、パエリヤパンのような平鍋に向かって一振りし、円を描くように薄く撫でつけるのです。厚くなってしまったところは、生地が乾く前に手に持った生地の先をペタペタくっつけると取り除けます。焼き上がった生地は、乾燥しないよう、濡らしたペーパータオルなどをかぶせておきましょう。

今回用意した具は、チシャトウと生唐辛子を藤椒油で炒めたもの(写真上)と、燻製の干し豆腐とニラを胡麻で炒めたもの(写真左)、にんじんと中国セロリを木姜油で炒めたもの(写真右)の3品。いずれも冷ましてから巻いてください。

チシャトウ
 チシャトウ。外皮をむき、鮮やかな緑色の茎を食べます。日本語では茎レタスとも。

たれは、醤油小さじ4、砂糖小さじ2、老陳酢(熟成させた黒酢)小さじ2、辣油小さじ4、花椒粉少々、煎りごま小さじ1で、酸味と旨みのある味。炒めもの×タレだけでなく、小豆餡を巻いて香ばしく焼き色をつけ、アイスクリームなどを添えれば、デザートとしても楽しめますよ。

料理:井桁良樹( 老四川 飄香
撮影:2016年4月25日の 古樹軒の料理教室にて
中国語料理名:四川春巻(sì chuān chūn juǎn / スー チュァン チュン ジュェン)


text 近江文代
photo 西田伸夫