失敗も旅の思い出。口にあう店もあれば、あわない店もあって当然です。蘭州拉麺食べ比べ in 蘭州、最終回は激辛自慢の店をはじめとする失敗談。そして、全7店舗の食べ比べを振り返り、勝手にランキングする総集編です!

来たれ激辛ファイター!辣油自慢の「馬安軍辣子牛肉面」

蘭州市の見どころといえば、マンモスの化石で有名な甘粛省博物館。そのすぐ横にある路地を入ったところに「馬安軍辣子牛肉面」はあります。

蘭州市「馬安軍辣子牛肉面」外観。

店名に掲げた“辣”の字はラー油の“辣(ラー)”。もともと店名に”辣子”は入っていなかったのですが、特製の激辛辣子(ラー油)で人気が広まり、「馬安軍辣子牛肉面」と改名したというから恐るべし。

10匙まで無料で加えられる辣子は、普通の人は3匙で限界と言われるほど。激辛がウリの店だけあって、厨房でラーメンを受け取る際に「辛さは?」と聞かれます。私は「ちょっとで」と伝えたところ、辣油は2匙ほど。見た目は他の店と大差ありませんね。

蘭州市「馬安軍辣子牛肉面」の牛肉面。こちらの写真でラー油は2杯。中国語ができない方は、親指と人差し指を1cmくらいあけて「ちょっと!」というジェスチャーをすればOK。下手にしゃべるより伝わります!

しかし、2匙を侮るなかれ。ひと口、ふた口、食べ進めるたびに辛さがどんどん増してきて、5口目くらいには唇がビリビリと痛い…!

そこで、そーっと、そぉーっと唇に当たらないよう、慎重に麺を口の中に運ぶスタイルに作戦変更。しかし、痛すぎて箸が進むどころじゃありません。麺をすするなんて無謀!

普通の人より辛いのは平気なはずなのに、たった2匙でこれですよ。酢を入れたらまろやかになるだろうと、テーブルの黒酢適量を投入するも、スープがウスターソースのような甘酸っぱい風味になる始末。そこに激辛が加わって、味変も失敗に…。

とにかく食べ切ることだけに集中。しかし口の痛みは止まらない!

結局、辛さにやられて牛肉面の味がまったくわかりませんでした。しかし「我こそは激辛王」「激辛大好き」という方は行く価値があるはず。その際は、是非10匙に挑戦していただきたい…!

马安军辣子牛肉面(馬安軍辣子牛肉面)
本店:七里河北街与西津东路交叉口东南70米
武都路店:新武都路74号
営業時間:本店6:00~14:00 武都路店5:30~16:00
※中国の口コミサイトを見ると、私が訪れた七里河の本店よりも、武都路店の方がきれいで清潔感もあり、口コミも悪くなかったです。気になる方は、武都路店の方がよいかもしれません。
メニュー:牛肉面(7元)、醤牛肉(8元)

 

チェーン店、本場は味が違う?「伊百年牛肉面」で実食確認!

次なる店は、北京や哈爾濱(ハルビン)などにフランチャイズ展開をしている「伊百年牛肉面(イーバイニィェン ニュウロウミィェン)」。蘭州駅の近くにあり、泊まっていたホテルにも近く、いつ見てもお客さんがいたので入ってみたくなりました。

蘭州市「伊百年牛肉面(火车站店)」の外観。

厨房を見ると、ひょろりとした若い男の子が1人。注文を受けると、ペチペチッと麺を打ち、伸ばしてゆでてくれます。

しかし、磨沟沿老舗牛肉面のように、屈強な男性が三人がかりで力強く打つ麺とはまるで別物。しっかり打ちつけていない麺はコシがなく、スープも特徴を掴めない…。

蘭州市「伊百年牛肉面(火车站店)」の牛肉面(7元)。

麺点は成型の前の生地が命。憶測ではありますが、生地がセントラルキッチンから送られてきて、店では麺を伸ばすだけのシステムになっているのかもしれません。お客さんが多く入っていたのも、駅前で便利だったからでしょう。

広大な中国のフランチャイズなので、店によって差はあると思います。蘭州拉麺店だけで3,000店舗もがある蘭州市。旅行者はやはり、ある程度店を選んで行ったほうがよさそうだと実感しました。

伊百年牛肉面(火车站店)
住所:城关区平凉路6号
営業時間:不明(7:00~14:00は確実。夕方には閉まっていました)
メニュー:牛肉面(7元)、醤牛肉(8元)

 

番外編|世界遺産の街・天水の「金翡翠牛肉拉面」

そして最後の蘭州拉麺は、蘭州市から離れること300km、甘粛省南東部の天水市。同じ省内ですが、蘭州の蘭州拉麺とは言えないので番外編としてご紹介します。

甘粛省第二の都市・天水駅前。

天水は甘粛省第二の都市で、蘭州からは汽車で約4時間。世界文化遺産にも登録されている麦積山石窟が有名です(ここ、非常に良いです!)。

その名の通り、天水には多くの泉が湧き、その泉水を使い続けると肌がきれいになると信じられているそう。2007年にNHK BSで放送された『関口知宏の中国鉄道大紀行』でも、関口さんが天水の泉が湧く甘露寺を訪れていました。

このたび私も訪れてみたのですが、なんと現在、甘露寺の泉は環境の変化によって水位が下がり、飲用としては使えなくなってしまったそう。開発による環境破壊が原因でしょうか、残念ですね。

天水市の世界遺産・麦積山石窟。

そんな天水市で訪れたのは、天水駅の目と鼻の先にある「金翡翠牛肉拉面(ジンフェイツイ ニュウロウラーミィェン)」

天水駅前には「馬子禄牛肉面」「舌尖尖牛肉面」など、本場蘭州市にある牛肉面館の支店も多々。そこで、敢えて蘭州市で見たことのない店を選んでみました。

天水市「金翡翠牛肉拉面」外観。

味自体はまあ、ふつうです。麵もスープもふつう。個人的には、大根が大き目で、存在感があったのがよかったですね。

天水市「金翡翠牛肉拉面」の牛肉面。大根が大きめ。

こちらの店では翡翠を店名に掲げる通り、緑色の翡翠麺も提供しています。蘭州拉麺として翡翠麺を出しているところは珍しいですし、実際人気もある模様。「もう、ふつうの蘭州拉麺は食べ飽きた!」という方にはいいでしょう。

ちなみに蘭州市の人気蘭州拉麺店は朝から昼過ぎの14時くらいまでの営業時間が多い中、ここは24時間営業。いつ来ても蘭州拉麺が楽しめます。

金翡翠牛肉拉面
住所:天水市麦积区陇昌路1号
営業時間:24時間
メニュー:牛肉面(8元)、翡翠牛肉面(10元)など

 

勝手にランキング!蘭州拉麺 in蘭州

こうして7店舗の蘭州拉麺を食べ歩いてみたわけですが、「回族の白い小さな帽子を被った男性が、店先で麺を伸ばして作っている牛肉面」という、これまでの蘭州拉麺のイメージはがらりと覆されました。

どの店も「一清 二白 三紅 四緑 五黄」と言う明確な基準を満たし、老舗の人気店はそれぞれにこだわりや特徴もしっかり。見た目は同じでも、麺やスープはもちろんのこと、ラー油の辛さや大根の大きさまで店ごとに全く異なり、思った以上に奥深い。

こうなると、1,500店舗以上の牛肉面店があると言われる蘭州市で6店舗、そして天水市で1店舗しか食べ比べができなかったのが残念で仕方ない…!

他にも人気の牛肉面店はたくさんありますし、きっと隠れた名店もあるはず。次回は麺の太さも選びつつ、もっといろいろ食べてみたい!じわじわと私の中の蘭州拉麺熱が再燃してきているのを感じながら、今、文章を書いております。

またいつか、蘭州拉麺を食べ比べに行かないと…。そんな想いを胸に、最後は独断と偏見で選んだ牛肉面ベスト3を発表します。

【第1位】陈记清汤牛肉面(陳記清湯牛肉面)

やはりあの麺の味が忘れられない。蘭州市郊外にあり、絶対に日本人が行かなさそうで、穴場感たっぷりなところもツボ。外でしゃがんで食べているおじさんたちもおいしいスパイスです。

蘭州市「陳記清湯牛肉面」の牛肉面。

【第2位】磨沟沿老舗牛肉面

蘭州っ子に大人気!あまりにも人気過ぎるので、天邪鬼な私的には第2位くらいかと(笑)。立地や接客なども含めると、1位よりこちらに軍配が上がりますね。1位とは本当に僅差!

蘭州市「磨沟沿老舗牛肉面」の牛肉面。(牛肉は別皿盛り)

【第3位】塔山半坡牛肉面

蓬灰の天然鹹水を使った麺の店。最後に麺のベタつきが若干気になったものの、「馬子禄」のあと、満腹状態で食べに行って「こちらの方が総合点は上だ」と思ったことを思い出して第3位!

蘭州市「搭山半坡牛肉面」の蘭州拉麺
蘭州市「搭山半坡牛肉面」の蘭州拉麺

あくまで個人的な意見ですので「このランキングを参考にして行ったのに、大しておいしくなかったぞー」と言うクレームはお受け致しかねます。悪しからず!

ちなみに、蘭州市の蘭州拉麺のスタンダード「一清 二白 三紅 四緑 五黄」は他の省では守られていないことも多いようです。なぜなら他の省で蘭州拉麺店をやっているのは、ほとんどが甘粛省の西隣、青海省の人たちだから。中国のどこにでもあると思いきや、やはり本場は違うのです。

蘭州拉麺は蘭州で食べてこそ。以上、80C(ハオチー)特派員、マサラがお伝えしました!


text & photo マサラ