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ひる中華ランキング 【400回記念⑤】惜しまれて閉店か?ひっそりと消えていったのか?

大好きだったけど閉店するなんて!相次ぐ閉店の理由をひる中華から考察します。

2014/5/20up

①TOP20 | ②印象的な店 | ③店選び | ④繁盛店の秘密 | ⑤消えた店 | ⑥まとめ

惜しまれて閉店か、ひっそりと消滅か

◆なぜあの店はなくなってしまったのか?

サトタカ:気に入っていたけれども、閉店してしまった店ってありますよね。

コスギ:ありますねえ。家の近所にも、職場の近くにも。

サトタカ:私の場合は、銀座「巴馬(バーマ)ロハスカフェ」。閉店は不振ではなく、松坂屋再開発計画によるものでしたが、立地がよくていいメニューがあるな、と思った店だけに惜しいと思いました。紅酢とザクロを使った糖醋(タンツウ)なんておいしかったなあ~。
それにしても、コスギさんの訪問店の方はたくさんなくなってますね。

巴馬ロハスカフェ
銀座「巴馬ロハスカフェ」の平日限定ランチセット 1500円2013年5月2日掲載


コスギ:リストを見ると、新小岩で「徽苑」「博鵬軒」「火鍋番長」。小岩で「南京亭」「味居屋」「香港亭」「郷味源」「溢香坊」。移転ですが、ラブホの中華で本格福建料理の「榕荘園」。閉店後、居抜きで中国料理店が入ってるところもあるけど、小岩は「太陽島」以外全滅。

榕荘園
西小岩「榕荘園」の福建南部風五目あんかけ麺 780円2013年5月16日掲載
(現在は四ツ谷に移転し台湾料理店に)

太陽島
小岩の星!「太陽島」の牛肉ゴロゴロ炒飯 650円2013年4月10日掲載


コスギ:小岩の「南京亭」は中華で初めて“通った店”ですね。どの料理も700円前後で、私が食べたのは水煮牛肉680円、鶏肉クミン炒め600円、地三鮮580円、牛ハチノスのオイスターソース炒め680円、車エビとカボチャの炒め780円、冷し担々麺580円。ランチタイムは単品の料理がライス、スープ付きになるので気に入ってたけど、「ひる中華」で行った店で、最初に閉店してしまった店でもあります。

サトタカ:料理名だけ見ると悪くないよね。

南京亭
西小岩「南京亭」の地三鮮 580円(現在は閉店)201275月28日掲載
地三鮮は“大地で穫れる三種類の野菜を使った料理”という意味。
定番はじゃがいも、なす、ピーマンの組み合わせ。


サトタカ:閉店した店の共通点って何かあります?店内の匂いとか、メニューとか、看板の系統とか。

コスギ:同じレベル感の店でも、続いているところと閉店しているところがあるんですよね。その違いってなんなんだろう。閉店チェックができてるところは、何回も食べに行ってるところだから、個人的には大ハズレではないんですがね…。そんなに味の差があるようには思えない。

サトタカ:オーナーやスタッフが中国人の店?

コスギ:そうですね。

サトタカ:よく、海外に店を出すときは「料理を現地にわかってもらえるよう翻訳することが大切」といいますよね。となると、日本人のシェフが現地っぽい中国料理をやるときは、日本語で説明できるし、なんなら日本人に受け入れられるようなアレンジもできる。一方外国人だと、どうしても日本人に好まれる絶妙なニュアンスがわからないことがあるから、いいものだったとしても苦戦する。お客さんの中には、知らないものを食べたがらない人っていうのも少なくないからなあ。

中国人オーナー&料理人&スタッフでも、「味坊」みたいに表現したいものがハッキリしてるなら、みんなそれを求めていくからいいんだけど。そうでない場合で、雰囲気も価格もカジュアルな店となると、ウォークインでアラカルトの注文が主体でしょ。その結果、出た料理にしっくりこなかったら、一回こっきりになりかねない。

味坊
神田「味坊」の孜然羊肉(羊のクミン炒め)定食 1100円2013年6月5日掲載


コスギ:あと、私はさっきのような方法で訪問すると、中国人オーナーで中国人料理人の店が多くなるんですが、そこで料理について尋ねても、ホールの人がよくわかってないということがよくあります。結果的に、そのままでは店と客との距離が縮まらなくて、本場のものを出しても理解されないことも。

サトタカ:ありますねえ。オーナーやシェフと中国語で話せるか、中国人の友人と行かないとおいしいものが食べられないという…。コミュニケーションができればお互いにいい思いができるのは当たり前にしても、接点がなさすぎるとね。言葉の壁を超えるために無理やりつくった接点が“日式ラーメン”だとしても、お客さんはそれを期待しているわけじゃないし。

コスギ:閉店してしまった「徽苑」のシェフも日本語が全然通じなかったね。中国国家職業資格1級 高級技師で、麻婆はおいしかったし、日本ではちょっと食べられないようなメニューもあったのに。

徽苑
新小岩「中国安徽料理 徽苑」のマーボ豆腐ランチ 500円2013年7月18日掲載


サトタカ:現地に近い料理を出していて、それがおいしかったとしても、早目に在日中国人や台湾人コミュニティと接触していないと店の維持が難しくなるっていう現実。それは中国人の店の場合、特に強くなる可能性があるかもしれませんね。ところで事前に閉店の兆候は見えないんですか?

コスギ:わからない。昼はみんな普通にお客さんが入ってるんですよ。

サトタカ:じゃ、通っていて「ああ、きっとここは閉店する」なんて予感はみじんもないから、ある日突然「閉店!?」ってのは避けれらないということ?

コスギ:みんなそんな感じで、ある日突然貼り紙で告知される。

サトタカ:渋谷の「龍の髭」も、いきなりの張り紙で閉店ですもんね。自分の土地でも店より賃貸に出した方が儲かるとか、逆に借りてて地価が高すぎてつらいとか…。いろいろあるけど、みんな東京の地価が高すぎるのがいけないのか。

コスギ:ランチがそこそこ人気でも、夜にお客さんがこないと厳しいからなあ。

サトタカ:ランチのお客さんとディナーのお客さんは別、っていうのはお店からもよく聞く話です。ランチではまっしぐらに来てくれるのに、夜は駅に向かってまっしぐらに帰ってしまう、なんて話も。

コスギ:ランチの品数が多いと食材のロスも増える、っていうのはあるのかな。

サトタカ:それは夜のメニューとの兼ね合いでは。それより「何がとりえかわからない」ってのが潰れてしまう理由ではないかと思うよ。 名物メニューがあるとか、雰囲気がよくて、男女問わず「1人ひる中華」でも安心して楽しめるとか、店員さんと相性がいいとか、家から近所の中華の中では一番いいとか、味に限らず、何かしらお客さんが感じる“とりえ”があるかどうかじゃないですか。

私は自由が丘に住んでたとき、駅前の「梅華」にかなり通ってたんですが、ここは、この店ならではの味ってのと、いっつも同じレジのおじちゃん、いっつも同じホールの中国人、この三点セットに安心感を覚えてましたね。おいしいとかまずいとか、そういうのを超えた“梅華らしさ”があるんです。私はいつも「三鮮麺」を頼んでいて、店の人には「たまには違うのも頼めば~?」って言われていたんですがね。
日暮里の「馬賊」も、おいしいまずいを超えた、あの空間にいる楽しさがあります。でも、その存在になるまでには年月が要りますよね。

馬賊
日暮里「馬賊 日暮里店」の担々麺 900円2014年5月14日掲載
「馬賊」では、手延べ麺をつくる厨房が客席から垣間見える。


コスギ:高級店の場合は接待需要があるけど、そうでない場合は、その界隈の住民が夜、時々行きたくなる中華があるかどうかも大事でしょうね。エリアによっては似たような雰囲気の店が多すぎて、客が分散してしまっていることも考えられる。

サトタカ:あとは価格帯による潰れやすさっていうのはあるのかな? データで見ると、コスギさんの「ひる中華」の平均価格が782円、私の平均価格が1265円。コスギさんの訪問店で閉店したのが、わかるだけで14店、私の訪問店で閉店したのが2店。価格帯×雰囲気×料理系統で考えてみると、この組み合わせパターンは潰れやすいっていう法則が見えるかもしれない。

コスギ:となると、23区で中国人色が強い700円くらいのひる中華店は要注意?

サトタカ:それがひとつの共通項なら、閉店の可能性は高めといえるかもよ。それなりにやっていくにはそこそこ経費がかかり、そこそこ高い値段でも、あそこに行きたいって思ってもらえる店が残りやすいってのはある。

コスギ:しかし、お小遣いサラリーマンがランチで出している平均金額は500円以下というのを鑑みると、みんな口に合わないものを我慢して食べているのか。

サトタカ:毎日外食だとそれはあるかも。だから全部ワンコインランチの「ランチパスポートが完売するわけだ。いつも1000円の店に、500円で食べられるメニューがあったら嬉しいもんね。

コスギ:逆に私があまりいかない、会社近所のちょっと高めのところは続いてる気がする。日本橋人形町「菜心」、水天宮前「翠蓮」、TCATの「龍鳳」も手堅い。ラーメン屋系だけど、すぐ隣の「栄楽」も繁盛。

サトタカ:もしやコスギさんが通うと閉店する疑惑(笑)。
あと、中国料理屋とラーメン屋があいまいになってる新規参入店は、間口が広いようで何屋かわからなくなってしまって微妙だと思うんですよね。
一方で、ラーメン専業店はラーメン屋のプライドを多々感じます。例えばホテルの料理人が独立してオーナーシェフとなり、庶民的な雰囲気の店をオープンすることがあるけど、そこで中国料理屋としての矜持をどう伝えていくか。

閉店の原因は、昼と夜と合わせて考えないと理由が見えないところがありますが、

①昼しか流行らない
②界隈に似たような店が多すぎて、お客さんが分散してしまっている
③中国色が強い店の場合、味の翻訳ができていないか、言葉を超えた味の感動がないかで、その味を愛するお客さんがその界隈にはいなかった
④中国色が強い700円くらいのひる中華店は、閉店する可能性が高いかもしれない

東京23区の「ひる中華」を通じてみると、そんなふうに言えるかもしれるかもしれません。

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Text 佐藤貴子(ことばデザイン)
Photo 小杉勉(中華・高橋)、佐藤貴子(ことばデザイン)



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カテゴリ:
Restaurant Now

記事公開日: 2014/5/20

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