俺のシリーズ中華版!
6月27日「俺の揚子江 銀座四丁目」オープン

一流シェフが調理した高級素材を破格値で提供し、イタリアン、フレンチ、割烹など、次々と新業態を出店している“俺の”シリーズ。

その運営を手掛ける「俺の株式会社」が6月27日オープンさせたのが、我らが中国料理。「で、実際どんな感じなの?」。知りたいのはそこですよね、これだけ話題の“俺の”ですから。

そこで今回の新店紹介は、これまでのような取材記事ではなく、編集部のオープン初日実食レポートとしてご紹介いたします。


店の前には開店祝いの花が、すぐ後ろには料理人と支配人である“俺たち”の写真がずらり。

「俺の揚子江 銀座4丁目」は、日比谷線・都営浅草線東銀座駅A2出口すぐという好立地の中国料理店。“俺の”といえば立食上等という共通認識があると思いますが、中華はシリーズ最大席数となる174席(立席118席、座席56席)と、従来の店舗より座って食べられる率が高くなっています。

今回、我々が選んだのは16時の回(予約受付は朝の9時~11時で、予約時間帯選択制。10分遅刻すると自動キャンセル)。「この時間帯ならまだ空いているのでは…」と思いましたが、さすがはオープン初日とあって盛況です。通されたのは厨房を取り囲むように設置されたカウンター席。食べる派の人は間違いなくここが特等席ですね。

カウンターから撮影した厨房

気になるメニューは、定番の酢豚や回鍋肉、麻婆豆腐、玉子炒飯などに加え、金沙、XO醤炒め、帆立のカダイフ揚げマンゴーソースなど広東系、さらに四川系、創作系など“まんべんなく中華”な印象。

しかしこれだけではふつうの中国料理店となってしまいますが、そこはさすが“俺の”シリーズ。「ミシュランクラスの一流の料理人が高級食材を使用した最高の料理を圧倒的な低価格で提供する」という確固たるビジネスモデルを踏襲し、3品の「特別料理」を用意しています。

スペシャルメニューは乾貨&魚貝!

まず、そのひとつが、誰もが納得の高級食材「排翅(ふかひれ)の姿煮」1280円。

料理名にある「排翅(中国語読み:パイツー/パイチー)」とはほぐしていない、ひれの形を保ったふかひれのこと。深めの皿に煮込みスープがたっぷり入っているのでよく見えませんが、1枚100g前後のものを使用しています。100gというと、2人でシェアするのに十分なサイズですね。

味付けは清湯ベースの醤油味。やや塩気を効かせてどこか香ばしさもある、とろみがかった煮込みスープが特徴です。いただいたものは尾びれでしたが、金糸はしっかり太く、厚みもあり、なおかつ味もちゃんと染みていました。これが1280円ってのは、正直かなりおトク。頼んで損はないどころか、おトク過ぎて恐ろしいほど…!

そして次なるスペシャルは「オマール海老のXO醤炒め」1280円。

こちらは殻付きオマール海老のぶつ切りと、花切りにしたイカ、生の帆立貝柱をXO醤で炒めた一品。オマールが小さいのはしょうがないとして、殻からの身離れが悪いのはやや残念。全体的にもう少しXO醤の香りと味とが立ってくると、食べごたえのある一品になるように思いました。

そして最後のスペシャルは「西浦総料理長のメロウの2種の調理法」1480円。

メロウ(メロ)は「銀むつ」という呼び名でピンと来る方もいらっしゃるでしょう。日本では粕漬けなどに加工されることが多い白身魚です。これを中華風の照り焼きにして卵白炒めを乗せたもの(写真左)と、蒸して香菜のピュレをかけたもの(写真右)、2種類を併せ盛りにしています。

ブリリンッと弾力があり、脂の乗ったメロウ(メロ)を、高さ3cmはありそうなぶ厚いカットで提供するというのはインパクトもあり、食べごたえもあり。タロイモチップス(写真中央)や揚げポテトも添えられており、4人くらいでシェアするのによさそうな一皿です。

野菜の炒めや酢豚など、定番にも語るモノあり

さて、食べ終わってみると「特別料理」に肉がないということで、つい頼みたくなるのが肉料理。入店前に遭遇したベテラン業界人の「キャベツと肉とを別盛りで提供する回鍋肉がなかなかですよ」というコメント通り、定番にもひとひねり加えているのが”俺流”です。

例えば定番の酢豚はこちら。

「谷料理長の酢豚」680円

見た目は普通かもしれませんが、実はこれ、泡辣椒(パオラージャオ:湖南料理や四川料理に用いる唐辛子の漬け物)と芽菜(ヤーツァイ:四川の漬け物。担々麺に使用される)を調味料として使用しているヒレ肉の酢豚。ヒレは7mmくらいの厚さにスライスされており、漬物から醸し出される独特の酸味、辛み、コクがよく絡んでいい風味。

また、青菜炒めもいい味を出していました。

「本日仕入の青菜の塩炒め」580円

こちらはフレッシュな青龍菜と金針菜という、中華好きにはうれしい取り合わせ。青龍菜は15cmほどにカットして生のまま炒め、金針菜はざっと油通し。ともに野菜の甘みが感じられる味付けで、野菜料理を1品選ぶなら迷いなくこれを選びたいところ(注:野菜はその日その時間によって異なります)。

そして、既成の冷凍点心に遭遇しがちな点心もしっかり手づくり!

「大野シェフの渾身の小籠包」320円

これは排翅(ふかひれ)に次いで必食の一品!さすがは作りたての小籠包、皮が薄く、柔らかい。見ての通り(思わず皮を破いてしまいましたが)、薄皮の中にはスープがたぷんたぷん。餡は適度に肉肉しく、白酢と黒酢をブレンドした合わせ酢に、細ーい千切りしょうががちゃんとついてくるところも嬉しい。これで320円とは大野シェフ、ありがた過ぎます!

最後になりましたが、前菜もバリエーション豊かでしたよ。

「涼粉」380円

涼粉(リャンフェン)は、緑豆やじゃがいもなどの澱粉を糊状にして冷やし固めたもの。麺状のものもありますが、こちらはダイスカットタイプ。ラー油に揚げ葱、いりごまという辛くて香ばしいタレをかけていただきます。

俺の揚子江 さらなる4つの特徴とは?

目玉料理はこの他にも、席の予約順に案内するという数量限定のふかひれ姿煮、鮑の煮込み、鴨の窯焼きなどがあったのですが、1時間50分という時間制限内で、我々に声がかかることはありませんでした。ふかひれは230g前後で3000円と、これまためまいがするほど破格値。ボリュームを考えると、4人くらいのグループ客に案内していたかもしれませんね。

そして、食事の途中に入る生演奏もこの店のウリ。演奏はランチタイムを除く1日4回約20分で、その時間帯はミュージックチャージ300円、お通し代300円、さらに全席ワンドリンク制となります。つまり、席に座っただけで600円、ビールはキリン一番搾り(生)480円とすると、入店するだけで1080円(税別)は必須。原価ギリギリまたはそれ以上のシグネチャーメニューを持ちつつも、そこで帳尻を合わせているともいえます。

また、ボトルワインが豊富な一方で、老酒(紹興酒)はおいていません。他業態で大量にワインを仕入れているでしょうから、ここは中華だけのために中国酒を仕入れない、という決断をしたのでしょう。これもまた同社らしい合理的な選択。

さらに、時間制限があると思うと客は料理を次々と頼むもの。注文が入ってから提供されるまでのスピードが早いこともあり、お腹いっぱいになる前に頼み過ぎる上、食べ切ってしまうというDEBUのメカニズムここにあり。これもまた、オーダー数増と回転率向上に寄与していそうです。

結局、1時間50分の時間制限ながら、見ているとだいたいみなさん1時間10分程度で切り上げていく方がほとんど。我々もその時間でちょうどいい感じになり、お会計は2名で1万円弱(ドリンクは各1杯ずつ)。通常はもうちょっとドリンクを飲むでしょうから、客単価は6000円くらいになりますかね。

なにはともあれ“百聞は一食に如かず”。厨房内は活気も熱気もあり、サービススタッフもテキパキとしてフレンドリーで、非日常感も味わえます。今の時代の中華として、中華好きならぜひ一度“俺の体験”をしてみては。

 


>>今までの「業界人の耳寄り情報」一覧