「和魂漢才」を料理で体現
時を忘れるひと時を広尾の一軒家で

2月10日(金)、広尾・有栖川宮記念公園のほど近くに「茶禅華(さぜんか)」がオープンします。

外観

東京の中国料理業界では、オープン前から密かに話題のこちらの店。理由は多々ありますが、まずは料理長の経歴。つぎに、有栖川宮記念公園の近くの一軒家というロケーション。そして、旬のコースにペアリングという、中国料理ではまだ数少ないスタイルが挙げられます。

●中国料理「麻布長江」と「日本料理 龍吟」に学んだ川田料理長

料理長を務める川田智也さんは1982年生まれ。西麻布「麻布長江」で料理人人生を歩みはじめ、10年間の修行を経て、日本を代表する和食の名店「日本料理 龍吟」へ。のちに「祥雲龍吟」の立ち上げメンバーとして台湾へ渡り、主に炭火焼きを担当、副料理長としても活躍してきた方。

日本料理に5年間学んだことについて「日本の食材の吟味の仕方、素材のいかし方について、最も深く追求されているのが日本料理だと思ったんです」と川田さん。中でも『龍吟』の料理には感動し、よく通った店。「学ぶなら今、若いうちに。そう思って門戸を叩きました」。

川田智也料理長
川田智也料理長

こうして中国料理の世界から一度離れたことで「逆に中国料理のよさが見えてくようになった」のは大きな収穫。また、20代の頃に一時体調を崩したことから「口だけがおいしいと感じるのではなく、身体全体がよろこぶような料理を作りたいと思うようになった」そう。

中国料理と日本料理、両方の経験を経て、導き出した店のコンセプトは「和魂漢才」。日本固有の精神を失わずに、中国の学問と知識を生かす―――。それをまさにこのレストランで体現しようとしています。

●緩急つけた旬のコースは炭火焼きに注目

気になる料理は、季節ごとに変わる15品前後のコース仕立て(20,000円 税別)。15品というと多めに感じますが、前菜が7~8品、料理5~6品、デザートが2~3品という捉え方をするとちょうどいい分量でしょう。

なかでも特筆すべきは炭火焼き。魚も肉も、素材とその部位を生かした火の通し方を追求しており、緩急つけたコースの中で、最も印象に残る山場となるはずです。


赤むつの焼物 中国江南の香り
赤むつの皮目に玄米で作ったおこげを塗り、鎮江香醋を吹き付けて炭火で焼き上げた一品。魚の下には蝦子で風味付けした春雨を敷いています。

 


小鳩
胸肉は低温の油で調理した後、藁で燻しつつ、台湾の香辛料・馬告の香りをまとわせ焼き上げたもの。腿肉は五香粉風味で、脆皮(パリッとした皮)の食感と、肉のジューシーさを味わう趣向。

 


ふかひれ姿煮
ふかひれは気仙沼産の“原ビレ”を使用。ふっくら、ねっとりした食感と、独特の風味が堪能できます。

 

●「茶禅華」の世界を増幅させるペアリング

ドリンクはワインと日本酒を中心に、150種類以上が揃えていますが、おすすめはペアリング。提案するのはアルコールペアリング(8,000~9,500円)、ティーペアリング(5,000~6,000円)、アルコール&ティーのミックスペアリング(7,000~9,500円)の3種類。

それぞれ8種類を組み合わせますが、ミックスペアリングはそれよりやや多め。店の一押しはミックスで、アルコールの合間に、それぞれに茶葉、抽出方法ともに吟味されたお茶をいただくことで、心地よい食後感が味わえる趣向です。


東方美人香槟泡茶。
台湾産の東方美人をスパークリング仕立てにした一杯。


玫瑰古樹紅茶。
雲南省産の紅茶にバラの蕾、桂皮などのスパイスをブレンドし、サイフォンで香り高く、クリアな味わいに淹れた一杯。


酢橘の香りを漂わせた芝麻湯圓には、「満寿泉」のオーク樽熟成貴醸酒。独特の蜂蜜のような風味が、湯圓の甘さにそっと寄り添います。

ペアリングの提案をされるのは、フランスで修行したソムリエールであり、川田シェフの奥様という最強のパートナーで、マネージャーの寺井絢子さん。

ミックスペアリングの場合、ワインに限らず日本酒、中国酒、時にビールも登場。ドリンクの量はゲストに合わせて調整してくれるため、どなたさまも心地よく「茶禅華」の世界を体験できるでしょう。

●円卓個室と小個室、ゆったりとしたフロアという3つの空間

また、足を踏み入れると広がる、凛として軟らかな空間も印象的。ところどころに配されているアンティークの壺や絵皿は、モダンな内装の中でこそ引き立ちます。

店名の「茶禅華」は、相手と向き合う「茶」、自分自身と向き合う「禅」、そして中華の「華」の組み合わせで、もてなす側、もてなされる側の心の交流を願ってつけられたもの。

ぜひこの空間で、大切な人とひと時を楽しみ、その余韻までも味わってみてはいかがでしょう。

茶禅華1F フロア席
2Fに設けられた8席円卓の個室。壁には島根県の石見地方で作られる石州瓦を配しています。
2階へと続く階段の壁に掛けられた龍の大皿。

 

 


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