2022年5月末、現代中国ど真ん中のポップな空間で、卓上自動串焼き機で羊肉串を焼きまくれる「羊不同烤小串(ヤンブートン カオシャオチュァン|yángbùtóng kǎoxiǎochuàn)」が御徒町にオープンした。

串焼きといってもいろいろあるが、この店はスパイシーな延辺式串焼きがウリ。延辺(えんぺん|ヤンビェン|yánbiān)とは中国東北地方・吉林省延辺朝鮮族自治州で、北朝鮮やロシアとの国境に位置するエリアだ。

「羊不同烤小串」の本店があるのは延吉市。wechat(微信)の「延辺新聞」のニュースによると、同店の老板(店主)は2006年に串焼きを開始。「延边烤串界的GUCCI(延辺串焼き業界の『GUCCI』)」などと紹介されていて、現地ではファッショナブルな店として位置づけられているようだ。

中国東北地方を中心に、現在10数店舗を展開する気鋭の串焼屋の日本一号店。看板だけみるとまるで中国。
溢れ出る現代中国感。ハングル併記なところが延辺を感じさせる。

スパイシーな延辺串焼き片手に、世界のビールで乾杯!

この店のおすすめは、吉林省が誇る烤串(カオチュアン)の数々。烤串とはさまざまな香辛料を効かせた炭火串焼きのことで、羊肉串をはじめ、肉、内臓、東北地方ではよく見る蚕の蛹(さなぎ)、ニラや茄子などの野菜、意外なところではパン、臭豆腐など、ありとあらゆる食材が串焼きになっている

そこに合わせるのが世界のビールというのが洒落ている。店内に入ると、右手の大きな冷蔵庫にはビールがずらり。日本の中国料理店でおなじみの青島ビール、中国でもよくみるバドワイザーをはじめ、コロナ、ハイネケン、レーベンブロイなどがよく冷えた状態でスタンバイしているのを見れば、飲みたくならないわけがない。ちなみに6月現在、生ビールはプレミアムモルツだ。

エントランスを上がって右手にあるドリンクコーナー。待ち時間にこれを眺めるのも楽しい。
生ビールはオリジナルジョッキで!

50種類超の串焼きに、秘伝の串料がクセになる!

タブレットのメニューから選べる串焼きメニューは、数えてみると50種類超(日によって販売していない串もあります)。何はなくとも注文しておきたいのは、トップにおすすめされていて、他の串よりちょっとおトクな「ラム小串」10本980円。

当然ながら、食べ始めるとこれだけでは済むわけがない。羊肉串なら新疆風味、微辛、まったく辛くないタイプ、牛肉なら吉林省の味付けである延辺風味、四川の麻辣風味、パイナップル×牛肉など、串のバリエーションは選び切れないほど。モツや筋など中国らしい部位もあり、それぞれ1本単位で注文ができる。

メニューは中国語(汉语)と日本語(日语)が選べる。

また、卓上にある串専用スパイス「串料(蘸料)」は、延辺式串焼きの味わいに欠かせない。この店では、鮮やかな朱色の唐辛子風味と、ゴマ、ピーナッツ、ひまわりの種などをブレンドした胡麻風味の二種類がスタンバイ。実際、吉林省では各店串料の配合は秘伝とされ、ここでも包みに「マル秘」と書かれていた。

串料はそれぞれ個包装になっており衛生的。緑はゴマ味、白がよくある唐辛子色の串料。販売はしていない。
見るからに香ばしそうな胡麻味のスパイス。
卓上調味料として板筋料(左:スジの味付けに使われる。甘辛いコチュジャン的な風味)とクミン(右)がある。

眺めているだけで焼き上がる!卓上自動串焼き機が楽しい

日本では串といったら焼き鳥屋さんなどで焼いてもらうのが定番だが、ここではテーブルに設置された自動串焼き機で焼き上がりを待つのも楽しい。

自分でやることといったら、金属の串についているギザギザの部分を機器の溝にはめ込むだけ。焼き時間の目安は、生肉をイチから焼き上げる場合は5分程度、厨房である程度焼いてきたものを温める場合は1分程度。肉から滴り落ちる脂がオガ炭に落ち、白く立ち上る煙や炎を眺める時間もいいものだ。

手前が延辺風味牛肉串、奥が新疆風味羊肉串。オガ炭で焼き上げる。
ニラまでも串に刺す。これが定番だったりする。
牛肉×パイナップル。甘じょっぱい味付けで、辛いものが苦手な人におすすめ。
自動串焼き機は他の延辺料理店でも見かけるが、現代中国的な店だけに、モダンなフォルムに見えるは気のせいか。

異文化体験が気軽に楽しめるタッチパネルの注文方式

店はオープンして間もないこともあり、日本語ができる店員さんは少ないが、そんな時こそ旅気分で楽しむチャンス。注文はタッチパネル式で、日本語(日语)と中国語(汉语)の選択が可能。中国語を選ぶと、下の写真のように一部日本語が併記されるので、勉強も兼ねて中国語を選ぶのもいいだろう。

こちらは中国語画面。ちなみに「ドリアントースト」は必点(must-try=おすすめ)。豚の頭の形の入れ物に入った脳花(脳みそ)や、蚕の蛹の串など、日本では珍しいメニューもある。

タッチパネル上での決済は現時点ではできないため、食事が終わったら定員さんに「买单(マイダン|mǎidān|会計お願いします)」と伝え、レジで自分の席番号を伝えればOKだ。

これまで日本にあった延辺料理店がいい意味であか抜けないローカルな雰囲気であったのに対し、この店はとことんポップで現代的。実際、お客さんは若い中国人が多く、ビールで気軽に楽しめるとあって、今まで延辺料理が縁遠かった日本人でもかなり入りやすいのではないかと思う。

ちなみに、中国語で「真不同」が「他とは違う」という意味だと思うと、店名に掲げる「羊不同」は「羊といっても他とは違うぜ」というところだろうか。たしかに今まで、日本にこんな串焼き店はなかった。さすが「延辺烤串界的GUCCI(延辺串焼き業界の『GUCCI』)」、気になる方は御徒町へ!

〆は酸味と甘みが絶妙な「延辺冷麺」をぜひ。麺が長いので店員さんがハサミを持ってきてくれる。
羊不同烤小串(ヤンブートン カオシャオチュァン|yángbùtóng kǎoxiǎochuàn)

東京都台東区上野1-20-1 ユニゾ上野一丁目ビル2階(MAP
※ローソンの左横にある扉を開け、階段を上がります。エレベーター等はありません。
営業時間 11:00-23:30
TEL 03-6284-2898
予約サイト


TEXT&PHOTO サトタカ(佐藤貴子)