INDEX|自家製中華干し肉、腊肉(ラーロウ)を作ろう

① 肉の選び方
② さっぱり塩燻製
③ こっくり醤油味
④ 腊肉料理2選←いまココ
⑤ 手抜き干し肉
⑥ 腊肉の地域性

腊肉(ラーロウ)とは、中国の漬け干し肉のこと。言うなれば自家製ベーコンのようなもので、調理の際にあれこれ調味料を加えなくとも、腊肉に凝縮された肉の旨み、脂、熟成された香りを生かして、風味の良い料理を作ることができます。

鍋料理と麺料理のレシピを教えてくれたのは、腊肉の作り方を教わった田村亮介シェフ。自家製の腊肉を作ったら、さっそく料理でその味を楽しみましょう。手間と時間が育んだナチュラルなうまみがここにあります。

田村亮介シェフ

使う前に蒸す!皮なしなら20分が目安

腊肉は、使いたい分量をカットし、蒸籠に入れて塊のまま蒸します。干した状態は肉が硬く締まっているため、加熱して肉と脂をゆるめておくと食べやすく、さらに調理過程で味や香りが出やすなるからです。

蒸したての皮付き塩燻製味腊肉。断面がピンクっぽい。
蒸したての皮付き醤油漬け腊肉。ほんのり全体が琥珀色っぽいです。

蒸し時間の目安は、皮なし豚バラ肉で作った場合、柔らかくなるまで約20分。数日しか干していない腊肉の場合は、より短い蒸し時間で柔らかくなります。また、皮付き豚バラ肉の蒸し時間は約40分。皮付きはどうしても皮の部分が硬くなりますので、長めに蒸してください。

土鍋煮込みで腊肉の滋味を引き出す!腊肉白菜粉(中華干し肉と白菜と春雨の煮込み)

腊肉白菜粉(中華干し肉と白菜と春雨の煮込み)

塩燻製味の腊肉の塩分と燻製香を生かし、白菜と春雨を煮込んだ手軽な鍋料理です。腊肉の半量を風味付けの調味料として使い、もう半量は具として楽しむのがポイント。おかずにもなり、スープにもなり、春雨の量を増やせば主食としても楽しめます。

材料(2人前)

白菜…150g
春雨…30g(乾燥した状態で計量)
腊肉…16切れ(蒸してから2mmの薄切り)
清湯(チンタン)…600cc(無塩の透明な鶏ガラスープ)
白葱…少々(1cm角切り)
生姜…少々(薄切りにして1cm角切り)
炒め油…適量

▼調味料
塩…小さじ1/2
醤油…小さじ1/2
黒胡椒…少々(粗挽き)

青葱…少々(小口切り ※薬味として使用)

作り方

1:白菜の繊維に直角に包丁を入れ、1cm幅にカットする。
2:春雨を水またはお湯で戻しておく。急ぎの場合は直接入れても。
3:中華鍋またはウォックパンに油を入れて白菜を炒め、腊肉の半量(8枚)を加えて炒める。
4:香りが立ってきたら、清湯(無塩の鶏ガラスープ)を600cc、戻した春雨、白葱、生姜を加える。
5:ふたをして、強火で約半量に煮詰め、腊肉の旨みを出す。
6:ひたひたの状態になったら、塩、醤油、黒胡椒を入れて味を調える。
7:器に移し、残りの腊肉(8枚)と小口切りの青葱を盛り付けてできあがり。

料理メモ

・ここでは中華鍋で調理したあと、7の工程から土鍋に移して仕上げています。
・清湯がない場合は、無塩の鶏ガラスープを使用します。

焼いた腊肉の香ばしさを満喫!腊肉菠菜拌面(腊肉とほうれん草の和え麺)

腊肉菠菜拌面(腊肉とほうれん草の和え麺)

一見パスタのようなこの一皿は、腊肉を使ったの和え麺。醤油漬けにした腊肉ならではの、キュッと締まったコクのあるおいしさが堪能できます。

味の決め手は、腊肉を炒めた時に出る脂。それを麺に絡めて調味する…そりゃあ、おいしくないわけがないでしょう。冬はほうれん草、春菊、春先はキャベツと、野菜を変えても作れます。パスタで作るのもおすすめですよ。

材料(2人前)

生麺…1玉(ここでは平打ち太麺を使用)
腊肉…10枚(醤油味 約2mmの薄切り)
ちぢみほうれん草…60g(茎と葉を分けておく)
葱油…大さじ2(ない場合はサラダ油で代用可)
塩 …少々(ゆでる用)

薬味・調味料
葱…大さじ1(みじん切り)
生姜…小さじ1(みじん切り)
塩…小さじ1/4
醤油…小さじ1と1/2
米酢…小さじ1/2

作り方

1:ほうれん草を茎→葉の順にサッと炒める。
2:1の鍋にお湯または無塩の鶏ガラスープを入れ、塩を少々加え、ほうれん草の芯が柔らかくなるまでゆでた後、水気を切る。
3:麺をゆで、ぬめりをとるために一度水で洗い、再び湯に通して温める。
4:腊肉を葱油(大さじ1杯分)で、弱火で炒める。
5:脂が半透明になり、肉の表面がカリッとしたら取り出す。
6:ボウルに麺と具、塩、醤油を入れて軽く混ぜ、葱、生姜のみじん切りを上にまとめて乗せる。
7:煙が出るまで高温に熱した葱油(大さじ1杯分)を、薬味を目がけてジュッとかけ、香ばしい香りを出す。
8:和える直前に酢を加えて混ぜ、器に盛りつけてできあがり。

8番目のプロセス。
料理メモ

・ちぢみほうれん草は、根元をよく洗い、赤い部分まで使いましょう。
・麺は、和える工程で徐々にのびていくことを考慮し、心持ち早めにゆで上げてください。
・仕上げに酢を入れると、口の中の脂切れをよくします。加えるときは、酸味が出ないよう少量に留めます。

炒めてよし、炊いてよし。肉の保存食・腊肉で豊かな食卓に!

腊肉は、今回ご紹介したレシピのほかにも、カリカリに炒めてその脂で青菜と炒め合わせたり、カリフラワーと煎り焼きにして干鍋風に仕上げたり、刻んだ蕪の葉と腊肉をごはんに混ぜて菜飯にするなど、さまざまな使い道があります。

四川省でいただく回鍋肉(ホイゴウロウ)は腊肉で作るものもありますし、シンプルに蒸したものは、お酒のつまみにもぴったり。作ったら、ぜひ身近な食材としていろんな料理に活用してみてくださいね。

さて、ここまで腊肉の作り方を仔細にご紹介してきましたが、「自分には無理…」という方のために、驚くほど簡単な干し肉の作り方をご紹介します。

恐らくこれなら、料理をしたことがない方でも失敗しません。腊肉ではありませんが、干し肉の楽しさとおいしさを体感したい方は、ぜひ次のページの干し肉にトライ!

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① 肉の選び方
② さっぱり塩燻製
③ こっくり醤油味
④ 腊肉料理2選←いまココ
⑤ 手抜き干し肉
⑥ 腊肉の地域性

TEXT サトタカ(佐藤貴子)
PHOTO 丸田歩、佐藤貴子(調理プロセスカット)