中国の縁起食材がわかる!春節料理の食材に託された願いとは?

前々ページの冒頭にあるクイズ。最初からお読みいただいた方は、だいたいおわかりになったのではないでしょうか。実は中国では、語呂合わせやダジャレを愛する文化があります。春節の料理もそのセンスで、さまざまな幸せを願っているのです。

Q:春節の前夜にいただく年夜飯(大晦日の晩餐)。よく使われる食材は以下の通りです。それぞれの食材に、どんな意味が託されているのでしょうか?

【鶏】 鶏(jī)と発音が似ている吉(jí)、さらに鶏(jī)計(jì)の音を合わせて、一年の計にもかけています。鶏は頭から尻尾までまるごと一羽「有頭有尾」あるとなおよし。家族が一人も欠けることなく集まる「全家福」を表します。

【豚足】 中国語で豚足は豬手。豬手(zhūshǒu)と発音が似ている就手(jiùshǒu)にかけて望みやお金が手に入ることを表します。

【餃子】 中国の古代の貨幣「元寶(げんぽう)」の形と餃子が似ていることから、招財進寶の意味があります。

【魚】 魚(yú)と同じ発音の餘(yú:余)にかけて余裕ある暮らしができることを表します。

【海老(特に伊勢海老)】 伊勢海老は中国語で龍蝦。そのにかけて、龍馬精神=年老いても壮健で意気揚々とした気持ちがあることを表します。

【あわび・とこぶし】 中国の古代の貨幣「元寶(げんぽう)」の形に似ていることから、招財進寶の縁起物とされます。

【フカヒレ】 フカヒレは中国語で魚翅大きく羽ばたき飛躍することを表します。

【肉団子】 丸いものは「団円」にかけて、円満に行くことを表します。

【貝柱】 ずばり、お金を表します。

【羊】 羊(yáng)と同じ発音の陽(yáng)にかけて、縁起のいい漢字のごろ合わせです。

【スペアリブ】 骨ごとにカットするスペアリブの「」を春節の「節」にかけています。

【柑橘】 橘(jú)と発音が似ている吉(jí)にかけて、大吉大利=縁起がよく順調であることを表します。

【湯葉】 湯葉(乾燥湯葉)は中国語で腐竹。腐竹(fǔzhú)の発音が似ている富足(fùzú)にかけて、満ち足りることを表します。

【髪菜】 髪菜(fācài)と発音が似ている発財(fācái)にかけて、お金が儲かることを表します。

【餅・大根餅】 餅は中国語で糕(gāo)。糕(gāo)似た発音の高(gāo)の語呂合わせで、上に行けることを表します。

【レタス】 生菜(shēngcài)と発音が似ている生財(shēngcái)にかけて、財を生むことを表します。

【白玉団子】 丸いものは「団円」にかけて、円満に行くことを表します。

【大根】 広東省の一部の地域や台湾など南方で、大根は菜頭と言います。菜頭(coi3tau4:広東語読み)と発音が似ている彩頭(coi2tau4:広東語読み)にかけて、幸先のよいことを表します。

【白菜】 白菜(báicài)と発音が似ている百財(bǎicái)にかけて、多くの財産を表します。

【ゴマ】 小さくてたくさんの種をつけるゴマは、子孫繁栄を表します。

【里芋・八頭】 親芋の周りにたくさんの小芋がつくことから、子孫繁栄を表します。

個性的な春節料理を味わいに、横浜中華街へ行こう

ほかにもいろいろご紹介したいのですが、膨大な数になってしまうので、一度では見せ切れないのがもどかしいところです。

横浜中華街にある各店のSNSを見ていると、まだ食べたことのない春節料理がたくさん並んでいます。それだけ料理があるということですし、中華街を楽しんでいる達人もまた、たくさんいるということでしょう。

では、どんな店で食べればいいのかというと、ベストは自分が納得したお気に入りの店です。普通は胃袋にも資金にも限界がありますので、これだと気に入った店が2軒くらいできたら、深掘りするような形で通いましょう。そうすると「この人にはちょっといいものを出してあげようか」と思ってもらえる機会が増えてくるようです。

そんなお気に入りの店の見つけ方ですが、横浜中華街のオーナーシェフの店から探してみてはいかがでしょうか。店の看板に「オーナーシェフの店」と書いてあったら要チェックです。通うようになり、関係ができてきたところで春節料理をお願いしてみれば、シェフの家に代々伝わる、さまざまな料理が出てくることでしょう。

また、中国各地の春節料理が楽しめるのも横浜中華街の魅力です。当連載ではこれまで主に広東料理店をご紹介していますが、掘り下げると順徳の系統、中山(孫文の故郷です)の系統など、オーナーの出身地によって得意とする地方料理が異なります。また、上海、福建、山東など、地方によって特色が異なるのも楽しいところです。

この記事が掲載されてから旧正月までの期間はわずか。ぜひ食べてみたい!と思っていただけたなら、過去の連載でご紹介している店を訪れてみてもいいでしょう。これらの料理をいただけるのは今だけ。この機会を逃せば、来年まで待たねばなりません。善は急げ、ですよ。

文中でご紹介した店

大珍楼(だいちんろう)
住所:神奈川県横浜市中区山下町143(MAP
※中華街大通り
TEL:045-663-5477
営業時間:11:00〜22:00(L.O.21:00)
無休


text & photo:ぴーたん
ライフワークのアジア樹林文化の研究の一環として、台湾・中国・ベトナム・マレーシアを回って飲食文化も研究。10数年前の勤務先で、江西省井岡山に片道切符で送り込まれたことを機に、中国料理の魅力に目覚め、会社を辞めて北京に自費留学。帰国後もオーセンティックな中国料理を求めて、横浜をはじめ、アジア各国の華僑と美味しいものについて情報交換をしている。