横浜伝統のシウマイの味を伝える、伊勢佐木町の至宝「龍鳳」

「龍鳳」は、初代が来日した100年前から伝わる広東省仏山市順徳の味をベースに、考え抜かれた料理が皿の上に出てくる店。

順徳といえば「食在広州 厨出鳳城(食は広州にあり 料理人は順徳に出づる)」の言葉でも有名な美食の街。先代は東京の神楽坂のとあるお店で、日本の錚々たる美食家たちを唸らせていた方だといいます。

龍鳳の焼売。

そのシウマイの味は「博雅」から受け継いだというわけではないのですが、似ているという証言から、広東省出身同士で丁寧に美味しいものを研究し突き詰めた結果ではないかと思います。そして筆者にとっては、中華料理を愛する80C読者だけにしか紹介したくない、そう思える味でもあります。

特筆すべきは、挽き肉の風味と舌ざわりのよさ。特別なものを使っていないにも関わらず、割ってみると空気がきれいに入っており、口の中でほどけます。この、ふわっと仕上げる混ぜ具合と、餡の味付けが料理人の技。休日の昼にこんなシウマイにチャーシュー盛り合わせ、ビールがあったら日本一の幸せ者です。

龍鳳の焼売。

往年の「博雅亭」の手作りシウマイが、こんなできたての味であったのであれば、舌の肥えたハマっ子の大きな支持を得て当然のはず。「博雅亭」は高級店と言われていましたし、こちらの店も今の横浜中華街の相場よりはやや高めです。

でも、自分で肉屋さんに行って作ることを思えば決して高くない。むしろ非常に安いと思うのです。

宴会スペシャル「ふかひれ焼売」。

ちなみにこちらの店は、タケノコ中華宴会の回でもご紹介した広東スローフードの店。すべて手作りのため、売り切れの場合も多いですから、事前に「シウマイを食べたいです」と伝え、準備しておいてもらうとよいでしょう。最低でも一人3,000円以上の料理予算で予約してください。

大きさは「博雅亭」より小さめですが、古き良き横浜シウマイの味を残しているはず。ハマッコの失われたソウルフードの味を尋ねて、ぜひ足を運んでいただきたいと思います。

文中でご紹介したお店

順海閣(じゅんかいかく)
住所:横浜市中区山下町147(MAP
TEL:045-681-1324
営業時間:11:00~21:30
不定休

ヨコハマ博雅
住所:神奈川県横浜市神奈川区神大寺2-36-6(MAP
TEL:045-488-3351
営業時間:11:00~17:00
土日定休
工場直売および通販 http://hakuga.net

龍鳳(りゅうほう)
住所:神奈川県横浜市中区長者町7-112(MAP
※イセザキチョウ三丁目交差点そば。オデヲンビル前
TEL:045-261-0308
営業時間:11:00~14:30 17:00~21:00(L.O.20:30ごろ)
水曜定休
※オーナー多忙につき臨時休業があります。訪れる際は店に確認されることをおすすめします。
※宴会予約は5名以上、市場休日は宴会不可。おまかせ宴会予算の目安は一人あたり6,000円(税込)~。


参考文献:落地生根 横浜中華街物語(読売新聞横浜支局)


text & photo:ぴーたん
ライフワークのアジア樹林文化の研究の一環として、台湾・中国・ベトナム・マレーシアを回って飲食文化も研究。10数年前の勤務先で、江西省井岡山に片道切符で送り込まれたことを機に、中国料理の魅力に目覚め、会社を辞めて北京に自費留学。帰国後もオーセンティックな中国料理を求めて、横浜をはじめ、アジア各国の華僑と美味しいものについて情報交換をしている。