ルーツを知れば二度おいしい!中国料理とは似て非なる〈韓国中華〉の世界
三河島エリアには焼肉店を含めた韓国料理店が点在しているが、各店のメニューを見ていると、王道の韓国料理以外に、中華的なメニューを揃えている店をいくつも見かける。特によく見るのが、三大コリアン中華ともいえるチャジャンミョン(짜장면)、チャンポン(짬뽕)、タンスユク(탕숙육)だ。
日本にも、天津飯などに代表される日式中華と呼ばれるジャンルがあるが、コリアン中華はその韓国版のようなもの。中国料理と思って食べると「?」となるが、韓国料理の中に中華のエッセンスがある…と思うと腑に落ちる。
そこで今回は、三河島の韓国出身者も通う、尾竹橋通りの「世味」の代表的な韓国中華料理をご紹介したい。
炸醤麺をルーツに持つ和え麺・チャジャンミョン
麺料理における韓国中華の代表格といえばチャジャンミョン(炸醤麺:짜장면)、すなわち韓国式ジャージャー麺だ。韓国・仁川のチャイナタウンには「チャジャンミョンストリート」があるほどで、その発祥の地としても知られている。
しかし、食べるときに日本のジャージャー麺をイメージしてはいけない。肉は圧倒的に少なく、かなり黒っぽく、かなり甘い。ついでにいうと、挽き肉も使わない。味の決め手は、チュンジャン(春醤:춘장)と呼ばれる甘味噌で、玉ねぎと豚肉を黒くなるまで炒め煮にした餡だ。これが太めの麺にどろりとかかっている。
韓国では、このチャジャンミョンをタンスユク(韓国式酢豚)と一緒に食べるのが定番。どちらも、とても甘い。そして本場・中国北京の炸酱面ともまったく違った佇まいなのは言うまでもない。
日本、韓国バージョンともに炸醤麺の発展ぶりは凄まじい。いずれも各国の料理に昇華したのだと、口にするとしみじみ思える料理だと思う。
日式とはルーツが異なる韓国式チャンポン
チャジャンミョンと並んで人気のある麺料理、チャンポン。日本には福建料理由来の長崎ちゃんぽんがあるが、韓国中華のチャンポンは、山東省の炒碼麺(チャオマーミェン)が元になったと言われる。
具はイカ、エビ、アサリなどの海鮮ベース。スープは赤いがそれほど辛くなく、うまみはしっかり。これは比較的万人にうける味ではないだろうか。
ちなみにこのチャンポンは、一部の中国料理店でも非常によく似たものが食べられるのが興味深い。例を挙げれば、以前は銀座、今は神田にある「天津飯店」や、日暮里駅前の「馬賊」などだ。
これらの共通項は山東省。「天津飯店」の先代は山東省出身。昔は季節になると名物の鰆の餃子を出していたし、「馬賊」は店内に掲げた「手打拉麺の由来」の看板に、山東省済南に関する記述が書かれている。
俄然中国料理のチャンポンも気になってきたぞ…!という方は、三河島でチャンポンを食べた後、その足で日暮里駅前の「馬賊」でまたチャンポンを食べ比べてもいいだろう。
ちなみに「馬賊」には前述の韓国式ジャージャー麺もある。こちらは麺が手打ちで、餡の味わいは「世味」ほど甘くない。具の量も微妙に違う。きっと好みが分かれると思うので、胃袋に余裕があれば2杯合わせていっちゃってください。
具沢山で甘くフルーティー!韓国式酢豚「タンスユク」
そしてもうひとつ、韓国中華で外せない料理がタンスユク(糖醋肉(糖水肉とも):탕숙육)、韓国式の酢豚だ。
肉に片栗粉でしっかりと衣をつけ、バリッと揚げて甘酸っぱい餡をかけているのは中国と一緒。韓国だと餡が別の場合もあれば、甘酢の色が赤い場合もあるが、やはりここでも違いはその甘さ。酸味は控えめで、ともかく甘い。これはごはんが進むおかずというより、焼酎のアテかおつまみといったほうがしっくりくる。
ちなみに日本でよく見るオレンジ色の酢豚は中国南方の広東省由来のものと言われるが、モランボン薬念研究所によると、タンスユクは山東地方の清国人が清国料理店を開いたことに遡るそうだ。
実際の色合いは店にもよるが、思えば中国北方や東北地方で食べられている酢豚・鍋包肉(グォバオロウ)の雰囲気に似ていなくもない。
韓国中華も日本の中華も、発祥の地がどこなのか、あれこれ想像しながら食べれば、味わいはより一層深まる。さらに軽食のマンドゥ(餃子)など、中国由来の韓国中華はほかにもいろいろある。このあたりも三河島で散策・発見の楽しみがありそうだ。
さて、お腹が満たされたところで、次はお茶でひとやすみ。さらに日暮里駅前にある第二ラウンド会場をご案内しよう。