上位3本同率1位!フカヒレ×ワイン、味わいを高め合う赤白泡はこれだ!

赤・白・泡を取り混ぜた全31本から、2フライトのテイスティングを経て、絞り込まれたのは3本。なんと、上位3種は同率1位、しかも赤・白・泡からそれぞれ1本が選ばれるという、実に興味深い結果となった。さっそく、評価のコメントとともにご紹介していこう。

‟マリアージュ実験”の進め方
フカヒレ×ワイン、味わいを高め合う赤白泡はこれだ!
フカヒレとワインの相性を探る言語化手法

[赤ワイン]熟成感と柔らかな果実味が、オイスターの旨味溢れるソースと素晴らしくなじむ

2018 Barolo(バローロ)/Giacomo Grimalde(ジャコモ・グリマルディ)

2018 Barolo(バローロ)/Giacomo Grimalde ジャコモ・グリマルディ(希望小売価格5,700円)

「赤ワインの中では突出してよかった。フカヒレ、というよりはオイスターのきいたソースとのなじみが秀逸!」

「熟成感とフレッシュ感を持ち合わせていて、飲み心地はしなやか。張りがあり、果実感も嫌な感じがしない。フカヒレのソースは五味のなかで旨味が一番強く、ワインもまた旨味があって、甘味もほどよいものがよいと感じた。この1本は旨味のボリューム感が合っていた。フカヒレは咀嚼回数をそう必要としないので、タンニン(渋味)はそう必要はなく、テクスチャーの柔らかいものが合いやすかった」

「赤ワインの場合、フレッシュなベリー感は合わず、樽感も微妙。タンニンをがっしりと感じられるものもあまり合わなかった。そのなかで、これはバローロ的な力強さがありつつも、果実味が柔らかく出ていて、ぴったりと合った」

そんな評価を得た「2018 Barolo(バローロ)/Giacomo Grimalde(ジャコモ・グリマルディ)」は、とてもまろやかな口あたりで、抜栓後すぐに飲んでもそのおいしさを充分に味わえる。やわらかく、オークの香りと完熟ブドウが織り成す複雑な風味をもつ。

【合わせるポイント】赤ワインのピュアなベリー香

赤・白・泡のなかでは、もっとも赤がフカヒレ姿煮に合わせやすかった。フレッシュな果実味や若いベリー香がどれだけ合うかは未知数だったが、今回の実験では、華やかすぎない果実味やベリー感はフカヒレのソースと相乗すると感じることができた。

ピノノワール、ネッビオーロなど、ミディアムボディになるベリー香は、よりいっそう合うことがわかった。一方で、甘みの強いベリー香や樽香が乗ってしまうと、違う方向性になってしまう。果実由来のピュアなベリー香がポイントになりそうだ。

2018 Barolo(バローロ)/Giacomo Grimalde(ジャコモ・グリマルディ)
産地:D.O.C.G. Barolo
品種:ネッビオーロ100%
醸造・熟成:ステンレスタンクで発酵、大樽12ヶ月&バリック(新樽25%)12ヶ月熟成後、ステンレスタンクでブレンドし8ヶ月
アルコール度数:14.5%

 

[シャンパーニュ]熟成による複雑さとボリューム感が、ソースの旨味と重なり合う

「2002 Milesime(ミレジメ)/De Venoge(ドゥ ヴノージュ)」

2002 Milesime(ミレジメ)/De Venoge(ドゥ ヴノージュ)(オープン価格)

「シャンパーニュ×フカヒレ姿煮というだけでも気持ちが上がり、普通に美味しく飲める。けれど、しっかり味わってみると、ものによってはシャンパーニュの酸が際立ってしまったり、ドサージュ由来の甘みが気になってくる。これは20年という熟成による複雑味があり、フカヒレに負けないフレーバーがある」

「熟成からくる複雑さとテクスチャーの柔らかさ、ボリューム感が非常に心地よい。ほかのシャンパーニュが酸や果実のゆるやかさが気になったのに対して、複雑さが非常によかった」

「シャンパーニュから“だし感”や旨味を感じた。フカヒレのソースにも旨味がしっかりあるので、その重なりがとてもよかった」

「2002 Milesime(ミレジメ)/De Venoge(ドゥ ヴノージュ)」は、1837年創業の随一の歴史と伝統を誇る造り手による少量高品質なスタイルで造られるシャンパーニュ。20年という長期熟成により、味わいのさらなる深みが期待できる。

【合わせるポイント】熟成された複雑味と奥行き

深く考えなければ、華やかな組み合わせで純粋に愉しく飲めるシャンパーニュ。しかしマリアージュという点では、フレッシュなシャンパーニュは白ワインより酸度が高く、フカヒレ姿煮とのベストマリアージュにはなりにくいことがわかった。ドサージュしたものが熟成に伴って、フカヒレのソースの複雑味と合うものになったという検証を得られた。

ドサージュ
シャンパーニュの製造過程におけるリキュール添加のこと。デゴルジュマン(澱抜き)と合わせて行う。目減りした液量を補うとともに、糖度の調整を目的としており、リキュールに含まれる糖分の量によって、Brut(ブリュット。添加される糖の量が15g/ℓ以下。辛口)、Extra Brut(エクストラブリュット。6g/ℓ以下。超辛口)、Doux(ドゥー。50g/ℓ以下。甘口)などに分類される。現在のところ、消費されるシャンパーニュの90%以上がBrut。
2002 Milesime(ミレジメ)/De Venoge(ドゥ ヴノージュ)
産地:Vallée de la Marne(ヴァレ・ド・ラ・マルヌ)
品種:シャルドネ15%、ピノ・ノワール70%、ピノ・ムニエ15%
アルコール度数:12%

 

[白ワイン]酸味・トロピカル感・ミネラル感が突出していない“おおらか系”が、フカヒレに爽やかさをもたらして相乗!

「2021 Giallo d’Arles Greco Tufo(ジャッロ・ダルレス グレコ・ディ・トゥーフォ)/Quintodecimo(クイントデーチモ)」

2021 Giallo d’Arles Greco Tufo(ジャッロ・ダルレス グレコ・ディ・トゥーフォ)/Quintodecimo(クイントデーチモ)(希望小売価格6,900円)

「ワインだけ飲むと、トロピカル感やタイト感がフカヒレ姿煮とどう合うかと思ったが、どれもが突出しておらずバランスが取れているため、ソースと合わせてもほどよい酸だと余韻を切りきらずに、うまく飲める印象。ほかの白ワインは酸が出すぎたり、甘すぎるものが多い中で、バランスのよさが際立った」

「フカヒレ姿煮と合わせると、ワイン単体で味わうときと違う香りが出てきた。料理に負けそうと感じたのに、意外にも旨みがしっかり出て、ワインの塩味もきれいに感じられてフカヒレと相乗した」

「飲む前は、フカヒレ姿煮と白ワインの酸が合わないのではないかとネガティブな印象を抱いていた。このワインは個性が強いわけではないが、甘やかさと酸のバランスがよく、フカヒレのソースの甘さとぶつかりつつ酸が心地よく引き締めてくれる」

「2021 Giallo d’Arles Greco Tufo(ジャッロ・ダルレス グレコ・ディ・トゥーフォ)/Quintodecimo(クイントデチーモ)」は、ジューシーな黄桃やアプリコットといった肉感的でクリーミーな果実をミネラル感と酸が支える。余韻は非常に長くピュア。パワフルさと優雅さをもつ格調高きイタリアワイン。

【合わせるポイント】ミネラル感のある大らかな味わい

白ワインのなかでも、フローラル、ハーブのニュアンスがあるワインは、上位に上がってこなかった。フカヒレのソースに消されてしまったり、フローラル感が変に浮き出てしまったからだ。軽やかなミネラル感のある“おおらか系”のワインが意外にも好相性を見せた。

2021 Giallo d’Arles Greco Tufo(ジャッロ・ダルレス グレコ・ディ・トゥーフォ)/Quintodecimo(クイントデーチモ)
産地:D.O.C.G. Greco di Tufo
品種:グレコ100%
醸造・熟成:バリック30%(新樽100%)&ステンレスタンク 70%で6ヶ月
アルコール度数:13.5%

「フカヒレもワインも、単体で味わうよりさらに引き立つ」「ワインがもうひと口、ふた口と飲み進めたくなる」という観点で選ばれたこれらのワイン。飲んだ感覚ではわかるかもしれないが、今後、自身で料理とワインの相性を試すなら、どんなことを意識すると知見として蓄積できるのだろう。

次のページではマリアージュの評価軸とともに、フカヒレ姿煮にワインの大きな特徴である酸味、樽の香り、熟成感がどんなフックになるのかをご紹介したい。

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