似ているようで全く別物。愛玉子(オーギョーチー)と冰粉(ビンフェン)の違いとは?

愛玉子と冰粉は、作り方も食感も似ている。なんなら中国では、地域によって愛玉子の原料を冰粉籽と呼んでいるところもある。そこで気になるのが、愛玉子と冰粉は何が違うのか?ということだ。

まず原料だが、愛玉子(愛玉凍)はクワ科イチジク属の愛玉子(Ficus pumila var. awkeotsang(Makino)Corner)の種子から作られる

乾燥させた種子は、薄茶色で小さな籾(もみ)のような見た目をしている。熟したイチジクを割ると、中の赤く色づいた部分にびっしりと小さな種子が入っているが、その延長線上にあるイメージだ。

果実に包丁を入れ、中をバカッとひっくり返して乾燥させる。photo by shutterstock

一方、冰粉(ビンフェン)はナス科オオセンナリ属の大本炮仔草(Nicandra physalodes)の種子から作られる。

大本炮仔草の種子は、冰粉の原料として假酸浆籽(ジャースァンジャンズ)、冰粉籽(ビンフェンズ)、石花籽(シーホゥアーズ)(※籽は種の意味)といった俗称があり、どちらかというと中国の食の現場では俗称の方が通じると思う。

乾燥させた種子は、焦げ茶で平べったく、ゴマ粒ほどの大きさだ。ちょっと熟れすぎたナスを2つに割ると、黒っぽい粒状の種の原型が見えるが、形としてはそれに近い。果実はホオズキにも似ている。

石花籽(假酸浆籽、冰粉籽とも)。これを水の中で揉むと冰粉になる。

色合い、食べ方、固まり方。愛玉子(オーギョーチー)と冰粉(ビンフェン)のさらなる違いとは?

両者は、できあがったゼリーも微妙に違いがある。まず色合いだ。愛玉子はやや黄色みがかった色、もしくは薄い琥珀色に仕上がるが、冰粉は極々うっすらと黄色に色づく程度。ちなみに市販されている「冰粉の素」を使うと、ほぼ無色透明にできあがる。

さらに食べ方も異なる。愛玉子は、ゼリーの黄色にぴったりのレモンシロップをかけて食べるのが定番。そこにかき氷を組み合わせることもある。

愛玉子(愛玉ゼリー)。レモンシロップにレモンを入れて爽やかに食べるのが王道。

一方、冰粉は黒蜜と白ゴマ、もしくは醪糟(ラオザオ:四川の甘酒。酒醸)をかけるのが伝統的な食べ方だ。

砕いたピーナッツ、サンザシや緑の干しぶどうなどドライフルーツをのせるのも定番で、専門店ではパイナップルやスイカなどのフルーツや、かき氷をあしらい、華やかにしたものもある。

中国茶カフェ「甘露」の糍粑冰粉(ツーバービンフェン)。黒蜜、糍粑(モチのこと)、ゴマなどをあしらった伝統的な味わいだ。

そして、決定的な違いは、前出の通り、愛玉子は水の中で種子を揉むだけで固まるのだが、冰粉(ビンフェン)は固まらないという点である。愛玉子の固まるメカニズムについては、こちらの論文に詳しい。

ちなみに、クワ科イチジク属の薜茘(ビーリー)の種子でも、愛玉子や冰粉のようなふるふるゼリーが作れる。

薜茘(Ficus pumila)と愛玉子(Ficus pumila var. awkeotsang(Makino)Corner)は同じ植物分類に属しており、学名を見ればわかる通り、愛玉子は薜茘の亜種だ。

実際、両者は種子のかたちはそっくりだが、葉の形や実の大きさは異なる。同じ環境で育つと交雑することもあるようだ。

薜茘で作ったゼリーは木蓮凍(ムーリィェンドン)、白凉粉(バイリャンフェン)などと呼ばれ、寧波や紹興など浙江省を中心に、ミントシロップなどをかけて夏場にさっぱりと食べられている。

愛玉子は台湾固有の品種だが、もしかすると大昔、大陸から台湾に薜茘が持ち込まれて独自の進化を遂げたのかもしれないし、それぞれの地域で似たような品種が育っていったのかもしれない。ふるふるゼリーの世界はなかなか奥深い。

揉み終えた冰粉袋と、冰粉のペクチンが溶け出た液体。

現在、愛玉子は都内の中華物産展、通販であればAmazonや楽天市場、「愛玉籽研究室」などで購入できるほか、こちらの記事でご紹介した店で年間を通じて楽しめる。

一方、冰粉籽の小売は残念ながら日本ではほぼ見ない。西早稲田の中国茶カフェ「甘露(かんろ)」では夏の冰粉が名物になっているので、本物を体験したい方は訪れてみてほしい。

また、最近は火鍋店のデザートメニューでも見るようになっている。今回ご紹介したような手揉み式はややコツと手間がいるので多くないと思うが、雰囲気は体験できるはずだ。

なお、冰粉も愛玉も薜茘もとても儚い。水信玄餅のようにふるふるとゆるやかに固まっていて、1日半もしたら半分以上は水に戻ってしまう。夏の夜の夢になる前に、するりと食べきろう。

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参考資料
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食力FoodNEXT|短影音美食當道!夏日消暑小吃「冰粉」究竟是什麼?
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TEXT&PHOTO サトタカ(佐藤貴子)