AI中華鍋ロボットの真骨頂!米粒を宙に高く持ち上げ、パラパラに仕上げる炒飯の秘技
続いては炒飯である。メニューは蝦仁炒飯(小エビの炒飯)。材料は小エビ、ミックスベジタブル、卵をまぶしたごはんに、卵液、塩、胡椒。動画はこちらでどうぞ(2分53秒)。
調理中、鍋蓋の空気穴から覗いてみると、卵を油と細かく炒め合わせた後、米粒を宙に高く舞わせ、空気を孕ませながら炒めていることがわかる。
その効果もあるのだろう、炒飯の仕上がりはふわっと軽やか。1粒1粒に油がきれいにコーティングされ、パラパラで油っぽさは皆無だ。
また、このくらいふわっと仕上がっていると、ある程度時間が経ってもべちゃっとなりにくく、やはり出前などで届けるには都合がよいと思われる。
肉は軟らかく、野菜はシャキッと、米はふんわり。AI中華鍋ロボットの強みと実力は?
ほかにも、清炒豆苗(豆苗の塩炒め)、青椒肉絲、焼きそばを作ってもらった。シンプルな野菜炒めは、素材の食感を残しつつ、シャキッと爽やかに炒め上げることがポイントとなる料理だが、火力と時間の設定によって、かなりキレイに仕上がったのは驚いた。
一方、青椒肉絲はふわっとした仕上がりに。肉の下ごしらえに仕方にもよると思うが、宮保鶏丁の鶏肉もふわっとしていたので、肉に軟らかく均一に火を通すのは得意そうだ。
基本的に蓋をして調理するので、中に蒸気が入ることもその理由かもしれない。なお、炒め足りない場合はその場で火力の増強や時間延長もできるので、設定次第では、また違った食感が得られる。
及第点は、鍋がフッ素樹脂加工であることから、中国料理で「鍋気」と呼ばれる鉄鍋香や独特の香ばしさがあまり出てこないことだ。炎を散らし、ガッガッと中華鍋を振って生まれる勢いのようなものはここにはない。
しかし、Uber Eatsのような宅配で届けられたらどうだろう。ふんわり軟らかく仕上がっているので、どの料理も食べ心地のいいものに感じる気がする。また、熱々のときと冷めたときの落差が、鉄鍋と炎で炒めた料理よりも比較的少ない印象を受ける。もし出前専門の飲食店をやるなら、こうしたマシンが活躍する可能性は大いにある。
実際「麻辣大学 ららテラス HARUMI FLAG店」は他店舗に比べて出前の多い店舗だそうで、ここに導入したのもそうした状況を考慮してのことかもしれない。
AI中華ロボットは厨房を変える存在になり得るか?
時代を振り返ると、プロの厨房を変えた万能調理器に、スチコン(スチームコンベクションオーブン)があった。これ一台で焼く、蒸す、煮る、蒸し焼きにするといった調理ができるスチコンは、今や給食施設や老人ホームなど、大量調理の現場に欠かせない存在だ。小型サイズもあるので、レストランでも導入している店も少なくない。
しかし、万能に見えるスチコンにも苦手分野があった。それは炒め調理だ。炒め物風の調理はできるが、どこか煮浸し風になってしまい、中華鍋で炒めたようなシャキッとした仕上がりにはなりにくい。その苦手分野を引き受けたのが、このAI中華鍋ロボットともいえる。
では、AI中華ロボットが厨房を変える存在になり得るのだろうか。それは、レストラン、給食施設、出前専門店など業態次第だろう。また、味を決めるのはすべて作り手。AIを使いこなすのは人だ。
「麻辣大学」のオーナーさん曰く、中国では有名シェフのレシピがこのAI中華鍋ロボットに提供されており、新たな仕事を生んでいるとのこと。日本でも同様の流れが生まれていくのだろうか。今後の展開に注目したい。
取材協力 麻辣大学 ららテラス HARUMI FLAG店
TEXT&PHOTO サトタカ(佐藤貴子)