【CITYWALK】全家庭で醸造中⁉梅州は客家黄酒が根付く街だった
パールレッドの見学を一通り終えた翌日。山を下って梅州市内の街中を巡ると、街中では客家黄酒が「娘酒」と銘打って売られていました。なぜ娘なのでしょうか?
これは、客家の酒造りは女性が役割を担っており、良い家庭を築くのはいい酒が造れるかどうかにかかっていると言われるほど、大切な文化として根付いているからです。娘は中国語の発音で「niang」。醸造を意味する「酿(niang)」とかけていると考えられます。
ふらっと立ち寄ったこちらのお店で、自家製の客家黄酒を試飲させていただきました。

ご覧の通り、色味は鮮やかで透明感があります。原料は糯米を使用し、麹に紅曲(麹)を使用しているとのこと。紅曲は客家黄酒だけでなく、広東や福建、台湾などでは料理にも多用されています。
ほんのりとした紅色は、この紅曲由来です。パールレッドの濃醇な黄酒とはまた違って、フルーティで軽やか。まるでジュースのようにスイスイ飲めました。おいしい!
そういえば、パールレッドのスタッフさんが「この辺りは全家庭で酒を造っている」と話していました。聞いたときは「ちょっと大袈裟に言ってるのかな」と感じたのですが、いく先々で自家醸造酒が売られていて「あながち大袈裟ではないかも」と考えを改めました。
ここは、お酒が日常生活に馴染んでいる。黄酒の名産地である紹興に勝るとも劣らない酒の街。そういっても過言ではありません。

日本では大きく報道されておりませんが、この辺りは今年の6月に大洪水があり、街の建物がほぼ水没した地域。たしかに、破損している建物が多く見受けられました。
それでも半年も経たないうちにこうしてお店を出したり、元の場所で生活していく人々。その姿にたくましさを感じ、「自分ももっと頑張ろう」と元気をもらいました。

ローカルな中国の雰囲気を楽しみたい方にはとても良い場所です。梅州市に行かれた際はぜひ立ち寄ってみてください。

今回の旅では、初訪問となる広東省梅州市のパールレッドで客家黄酒の文化に理解を深め、街中では人々の間に根付く娘酒の存在感を目の当たりにすることができました。
客家黄酒は中国でも多く広まっているわけではありません。しかし、風土に根付いた酒造りは唯一無二。面白い酒文化は中国各地にまだまだ眠っています。
これからも私は黄酒巡りの中国旅を続けていこうと思っています。本やインターネットの情報ではなく、自分の目で確かな情報を掴んでいくこと。それが一番大切だと思うからです。
さて、次回が中国酒ラビリンス2024年の締めくくりとなります。場所は紹興へ戻りますが、古き良き街並みの中で、黄酒が楽しめる酒吧(バー)を見つけました。それでは下次见(また次回)!
連載を読んで中国醸造酒に詳しくなろう!▶中国酒ラビリンス
TEXT&PHOTO 門倉郷史(かどくらさとし)
中国郷土料理店に9年在籍し、黄酒専門ECサイト「酒中旨仙(うません)」の仙長を兼任。退職後、中国酒専門ブログ「八-Hachi-」を運営。黄酒が楽しめる店、ひとり呑みができる中華料理店を紹介するほか、各種イベントを主催。2023年9月、日本初の黄酒ガイドブック『黄酒入門』を上梓する