海南島が世界に誇る絶品スイーツ!清補涼(清补凉/チンプーリャン/薬膳ココナッツスイーツ)

愛しの清補涼(チンプーリャン)。

海南島が世界に誇る絶品スイーツ、それが清補涼だ。僕が中国で最も愛するスイーツでもあり、初めての海口旅行では毎日食べ続けたし、今も出張するたびにわざわざ専門店へ食べに行くほど気に入っている。

何やら難しげな名前は、「身体の暑気を払い、栄養を補い、涼を取る」といった大仰な意味になる。しかし、その発音は「ちんぷーりゃん」と可愛らしい。皆さんも、親しみを込めて「ちんぷーりゃん」と呼んで欲しい。

その実体は、広東省、広西チワン族自治区の伝統スイーツ・糖水(タンシュイ)が、海南島で独自の発展を遂げたもの。糖水とは、何かしらの具を砂糖と水で煮込んだスイーツで、その組み合わせは星の数ほどあり、温かいものも冷たいものもある。

清補涼は、そんな冷たい糖水の一種と言える。具を別途煮込んでおき、砂糖と水の代わりに採れたて割りたてのココナッツをかけて汁にするところに、海南島ならではの特色と贅沢さがある。

碗の中には、様々な具が姿を隠している。

取り出したばかりのココナツジュースやココナッツミルクは、氷で程よく冷やして供され、自然な甘さが涼を呼ぶ。果肉だって新鮮そのもの。とろけるように白く、舌触りはつるりとして、噛めば鼻から甘い香りがふわりと抜ける。

ココナッツ以外の具も、多彩極まる。アズキ、緑豆、ハトムギ、 ハスの実、ピーナッツ、なつめ、ウズラの玉子、空心粉(米のマカロニ)、珍珠(タピオカパール)、冬瓜伊(冬瓜グミ)など、数え上げるだけでも大変だ。これらの多くが、中医学では身体を冷やす効果を持つとされていることにも注目したい。

あらかじめ具が盛られた碗。ここにココナッツジュースやココナッツミルクを注いで供される。

アズキ、緑豆、ハトムギのホッコリとした食感に、思わず目を細める。ホクッとしたハスの実の仄かな甘みと香り。噛むと甘みが広がるナツメ。ピーナッツのカリッとした食感と香ばしさは良いアクセントだ。ウズラの玉子は意外にも他の具と調和し、ツルツルの空心粉は舌触りがいい。中でも、似て非なるモチモチ感をもつ珍珠と冬瓜伊の競演は特筆ものの美味しさだ。

ひと口ごとに多彩な味が楽しめる。

口の中は始終賑やかで、様々な味と食感が繰り返し現われては、混じり合う。各素材が持つ天然自然の味わいを、ココナッツが爽やかにまとめあげてくれる。全体の甘さはあくまで控えめで、酒飲みのおっさんである僕でも、毎回ペロリと平らげてしまう。それどころか、お代わりすることさえよくある。

そして、驚くべきは食後感。清補涼という名の通り、身体がすうっと涼しくなるのだ。アイスやカキ氷のような直接的な冷え方ではなく、また、クーラーの風に当たるような冷え方でもなく、身体の中から熱が蒸発する感じ。清補涼自体はそれほど冷たくないのに、この不思議な効果には中医学の本領を見る思いがする。

尚、清補涼は、ココナッツジュースベースの椰汁とココナッツミルクベースの椰奶がある。僕は椰汁派。ココナッツジュースと果肉の両方を楽しめるからだ。椰奶も旨いのだが、ココナッツミルクは果肉を削って作るものなので、果肉が入らなくなってしまうのが痛い。でもまあ、旅行者としての正解は「両方食べる」かな。

ココナッツミルクベースの椰奶。これまでの写真は、全て椰汁(ココナッツジュース)。

数年前まで、とある清補涼の有名店は決まった店舗も持たず、昼間は営業しなかった。夜になると、昼間には何もなかった空き地の暗がりに屋台と机と椅子が並べられ、そこに常時100人近い客がやってくるのを見て、驚いたものだ。

屋台の脇では、数人の店員がひっきりなしにココナッツに穴を開け、中身を取り出していた。ある者はココナッツジュースをバケツに注ぎ込み、ある者はスプーンで果肉を削り取る。彼らの周りには、ココナッツの残骸が山のように散乱していた。これは新鮮だな、海南島じゃなきゃ食べられないスイーツだなと、一瞬で理解させられる光景だった。

暑さが落ち着く夜になると、清補涼を求めて大勢の客が集まってくる。
暗がりの中で、ひたすらココナッツと向き合う店員たち。

ただ旨いだけでなく、食べれば身体を涼しくしてくれるのだから、海南島にはうってつけのスイーツだ。海南島の中では比較的四季がはっきりしている海口では、清補涼は暑い時期に食べるものと決まっていて、冬季は休業する店もある。

清補涼の真価は、うだるような暑さの中でこそ味わえるのだと思う。皆さんも、真夏の夜の海口でこの絶品スイーツを食べ、魔法のような納涼効果を体験してみては如何だろうか。ちちんぷいぷい、ちんぷーりゃん!(←適当)

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