青島ビールは無濾過ラガーがうまい!青島啤酒海鮮盛宴(青岛啤酒海鲜盛宴/青島ビールと海鮮料理の宴)

極上の青島ビールをあおりつつ、海鮮にむしゃぶりつく。青島万歳!と叫びたくなる。

青島は、ビールの街だ。白酒文化圏の山東省に位置するにもかかわらず、青島人にとって酒と言えばまずビールになる。

中国には、水ビール(水のように薄いビール)しかない。もしそんな風に思っている人がいたら、今すぐ青島へ飛んで欲しい。今でこそ中国の大都市には店内で本格的なクラフトビールを醸すブルーパブがいくらでもあるけれど、そういうものが流行るはるか昔から、上質な生ビールを日常的に飲む文化が根付いているのが、青島なのだ。

その文化を育んできたのは、もちろん青島啤酒(青島ビール)だ。創業1903年。当時ドイツの租借地だった青島で、ドイツの醸造技術を導入して生産が始まった。創業の地である登州路には今も煉瓦造りの工場があり、青島人はこの工場を「一廠(第一工場)」と呼んで、同じ青島ビールでも他の工場で生産されたものより価値を置いている。

ビール缶型のタンクが印象的な「一廠」。
工場には青島啤酒博物館が併設されている。

青島ビールの真価を味わうには、何をおいても生ビールだ。純生(ラガー)、原漿(無濾過ラガー)、小麦(ヴァイツェン)、黒啤(デュンケル)などの種類があるが、僕のイチオシは原漿(無濾過ラガー)。初めて飲んだとき、僕は叫んだものだ。「…え!? なにこれ旨い!! 普通の青島ビールと全然違う!」と。

やや白濁した黄色い液体は、フルーティーで豊かな香りが特徴。あまり苦味を感じさせずにスルリと喉を落ちていくが、シュワシュワと酵母がまだ生きている感じがあり、後からコクのある旨味と香りが口の中に広がる。いわゆる水ビールとは全く異なるリッチな味わいだ。

驚きで目を丸くした僕を見て、知人の青島人はニヤリとした。彼曰く、旨さの秘密は鮮度。原則として出荷日当日飲み切りで、遠方出荷用の樽詰めですら、賞味期限はわずか6日間だとか。

う、旨い…!

「おれはこの原漿を毎日飲んでいる」と、彼は胸を張った。青島の街を歩いていると、黄色い液体が入った透明なビニール袋をぶら下げている人々がやたらと目につくのだが、その袋の中身はなんと生ビールなのだ。青島には生ビールを量り売りする小さなスタンドがあちこちにあり、酒飲みの青島人ともなれば、馴染みのスタンドで晩酌用のビールをビニール袋に注いでもらってテイクアウトするのが日課だそうだ。彼もその一人というわけである。

ビニール袋に入った生ビール。初めて見たときは、衝撃的だった。このようにストローで飲む人も。(写真提供:池光エンタープライズ)

では、この旨いビールにはどんな料理を合わせるべきだろうか。それはやはり、海鮮料理だろう。青島に星の数ほどある海鮮料理屋に飛び込めば、様々な魚介類がうごめく水槽がずらりと並んでいる。前項で紹介した辣炒蛤蜊(アサリの辛味炒め)は必ず頼んでもらうとして、あとは好きなものを選べばいい。とはいっても、旅行者にとって海鮮の注文はハードルが高いと思うので、ここで青島らしい海鮮料理を紹介しておく。参考になれば幸いだ。

さて、何を頼もう?水槽を見て注文を決めるときは、食べる時と同じくらい興奮する。

海鮮料理店にはずらりと生け簀が並ぶ。

王道路線なら、ババンと豪華に伊勢エビなんてどうだろう。見た目からして華やかな清蒸龍蝦

清蒸龍蝦(伊勢海老の蒸しもの)

是非試してほしいのが、ユムシとニラを炒めた韮菜炒海腸。ムチリとしたユムシと味の濃いニラはベストコンビ!

韮菜炒海腸(ユムシとニラの炒め)

シャコをガシガシ食べるのも楽しい。オススメは、塩ゆでの塩水蝦虎。シャコ本来の味がよく分かる。

塩水蝦虎(塩ゆでシャコ)

葱拌八帯は、イイダコの冷菜。サッと茹でたイイダコに白葱の辛味がピリリと効いた素晴らしい酒肴。

葱拌八帯(イイダコの冷菜)

清蒸海星は、ヒトデの姿蒸し。脚を割って中身を食べると、ズワイガニの蟹ミソに似た味だ。

清蒸海星(ヒトデの姿蒸し)

芙蓉海胆は、半分に割った生ウニに溶き卵を流し入れて蒸した茶碗蒸しだ。

芙蓉海胆(うに茶わん蒸し)

箸休めにオススメの青島涼粉は、青島式のところてん。醤油・黒酢・胡麻油を合わせたタレが爽やか!

青島涼粉(青島式のところてん)

地物のサルエビを茹でた塩水蠣蝦。派手さはないが、小味がある。ミソの味も濃く、ビールが進む!

塩水蠣蝦(ゆでサルエビ)

姜葱炒梭子蟹は、ワタリガニの炒めもの。甘いカニの身に葱と生姜の風味がピタリと合う。

姜葱炒梭子蟹(ワタリガニの炒めもの)

多彩な貝類も魅力的。タイラギに刻み大蒜と春雨をのせて蒸した蒜蓉粉絲蒸珍珠貝は、ビールを呼ぶ味だ。

蒜蓉粉絲蒸珍珠貝(タイラギ貝の春雨と大蒜蒸し)

魚の姿蒸しも贅沢だ。これはヒラメの姿蒸し・清蒸比目魚。甘じょっぱいタレが旨い。

清蒸比目魚(ヒラメの姿蒸し)

キリがないので、このへんで。青島ビールと海鮮料理が目の前に揃ったら、あとは食欲を開放するだけだ。片っ端から料理を頬張り、1リットル入りのジョッキでビールをぐいっとあおる。頭の中に浮かぶのは、「最高!」のひと言だ。海鮮料理が旨い土地は中国でもあちこちにあるが、そこに文句なしに旨い生ビールが付いてくるところはなかなかない。青島ならではの贅沢である。

その喜びに身を浸していると、いつも以上にビールが進んでしまう。僕なんぞ青島に行くたびに酩酊し、ふくらみ切った腹をさすりながら、ふらふらとホテルへ帰るのが定番になっている。満腹泥酔こそが、青島の醍醐味だ。

どんどんジョッキが空いていく。小さなグラスがもどかしくなり、途中からはジョッキから直接飲むようになる。そして後半戦は黒啤(黒ビール)で。黒ビールにしては軽めの飲み口なので、量をこなせる。

なお、青島ビールと言うと、毎年八月に開催される青島ビール祭りが有名だが、ここだけの話、僕はオススメしない。ビールも料理も割高だし、この時期は航空券やホテルまで高く付く。それなのに、会場に殺到する客をさばくためか、あらかじめ注ぎ置きしたビールや冷え切って鮮度もイマイチな海鮮料理を出す店が少なくない。美味しい青島ビールと海鮮料理を味わうならば、むしろ祭りの時期を外して行くことをオススメしておきたい。

次回予告:湖南省長沙市で食べるべき料理3選(2019320日更新予定)