特製ココナッツだれで食べる「山東」の水餃子は通販でも買える

都内に住む友人知人によく聞かれる質問といえば「横浜中華街で餃子のおいしいところはどこ?」。しかし都内には、中国東北地方出身者による手作り水餃子を出す店も多く、横浜中華街でまで来て餃子はなぁ、とも思うのです。

私も北京にいたことがあるので餃子にはうるさいくち。本心では茴香(フェンネル)を買ってきて自分で皮から作って肉を叩いたものが最高だと思っているのですが、家族も一時期中国に住んでいたため、二人ともなまじの餃子では満足できない体質に。

そんな我が家において、家族から「買ってきて」とご指名が入るのは「山東」の水餃子です。

ニラの風味香る水餃子そのものがおいしいので、黒酢だけつけて食べてもいいのですが、ココナッツの隠し味が効いた醤油との相性が絶妙。これは他にない食べ方で、中華街まで行って味わう価値があると思います。ECサイトもあるので、横浜に行けない人も楽しめますね。

通販で買える水餃子は10個入2パック入1,740円(+消費税129円)。特製ココナッツパウダーもついてきます。
ゆでるとピンポン玉のようにぷっくりと膨れ上がります。
特製ココナッツパウダーに醤油や辣油などを加えてタレに(写真はココナッツのみ)。好みの味はぜひご自分の舌で確認を。

香ばしいごま油とニラの香り。“北京の味”がする焼き餃子「鳳林」

もう1店舗、家族からテイクアウトのご指名が入るのが「鳳林」の焼餃子。口にしてびっくり、「あっ、北京の学食で食べた“鍋貼(グゥオティエ)”の味だ!」。そう、ここは“北方の匂い”がする餃子なのです。

聞けば「鳳林」の李さん一族は、北京のおとなり、天津市出身の家系。修行したのは広東料理の名店「菜香新館」ですが、焼餃子の味はふるさとの味を出していました。

北方の料理人が作る焼餃子はどこが違うかって? それはちょっとパンチの効いたニラの香りと、ごま油強めの味。輪郭のはっきりした鍋貼的な餃子を口に放り込むと「やっぱりこれにはさっぱり系の中国ビールだよ、青島でもハルピンでもどんとこい!」という気持ちに。

テイクアウト用のパッケージ。ぴーたん家の常備されるように。

そして忘れちゃいけないのが「自家製ジャンボシウマイ」。横浜中華街の中では特におすすめの一品で、これを1パック買って冷凍庫に常備しておけば安心なことこの上ない。我が家は弁当のおかずに困ったら、シウマイ2つとゆでブロッコリーでキマリです。

肉がギュッと詰まってぷりっとした食感。肉感的なビジュアルとは裏腹に、軽やかな味付けであり、後味は軽く上品。
2019年の台風で看板が破壊されてしまい、「看板のない名店」という寒いギャグからも半年がかりでやっと復活。

「大珍キッチン」誕生!made in 横浜中華街のおかずセットを全国へ

最後にご紹介したいのが、横浜中華街に来られない人向けに通販に本腰を入れ始めた「大珍楼」。このコラムでも何度かご紹介していますが、同店の点心製造部門「大珍食品有限公司」は、以前より都内高級ホテルの点心を引き受けており、小売りは一部を中華街のロプノール湖的な店頭アウトレットで販売していました。

ファクトリーアウトレットは掘り出し物を見つける楽しさがあります。

しかし業務用の注文が完全にストップしたコロナ禍の中、社長のリッキーさんこと陸定全さんは「横浜中華街を通販で全国に発送する」と発想を切り替え、D2Cビジネスに全力投球。ホテル向けの香港点心や、「大珍樓」の厨房で作るエビチリなどをECサイトで売り始めたのです。

叉焼まんの仕込みをするリッキーさん。先日は80C(ハオチー)の運営母体、中華・高橋の気仙沼工場までバイクで往復してフカヒレ仕入れ旅へ。新商品開発に余念がない。
大珍楼の叉焼は、陸さんの修行先の都内高級ホテルがベース。(写真提供:大珍食品公司)

当初は原価をあまり考えず、箱に気前よく放り込みすぎたため、「#冷凍庫パンパン」と大手ポータルサイトで紹介され大ブレイク。

一時は2ヶ月待ちにまでなってしまいましたが、業務フローを見直し、通販システムも刷新。8月より「大珍キッチン」としてリニューアルオープンし、現在は注文後1~2週間の待ち時間で宅配してもらえるようになりました。新製品も続々投入されるようです。

「大珍キッチン開店記念!特製おかずセットM」は8月中は送料込み6,000円でこの内容。ファクトリー直送の強みだ。
ちょっぴり赤い「スパイシー餃子」はクミンと唐辛子の効いた“あの味”。ぜひ試して(写真提供:大珍大珍食品公司)

なお、工房ではなく、中華街大通りにある「大珍楼」でのテイクアウトは、事前に店に電話で確認を。11時半ごろの開店時間に合わせて焼き上げる叉焼や焼肉(クリスピーポーク)、アヒルの焼物などを狙うのがおすすめですよ。

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現在は民事再生手続きを始めている店舗も少なくない横浜中華街ですが、80Cでご紹介しているオーナーシェフの店は幸いにして営業続行中。美味しいお店を守るのは、お客のほうです。こんなときこそ中華街をはじめ、お気に入りの店にお金を落としてほしいと思います。

また、お持ち帰りの際はクーラーバッグを二重にして保冷剤を入れるなど、厳重に食中毒対策を行ってください。まだまだ暑さは続きますからね。

次回は叉焼、焼肉(シウヨッ:クリスピーポーク)などの焼味(窯焼き)や、ハチノスや豚足などの滷味(煮込み)のテイクアウトをご紹介します。ご期待ください。


文中でご紹介した店

南粤美食(なんえつびしょく)
住所:神奈川県横浜市中区山下町165-2 INビル(MAP
TEL:045-681-6228
営業時間:11:30~14:00 17:00~20:00 (L.O.19:30ごろ)
水曜定休

山東 二号店(さんとう にごうてん)
住所:神奈川県横浜市中区山下町150-3(MAP
TEL:045-212-1198
営業時間:11:00~0:00
年中無休
※本店は休業中
★ECサイト

鳳林(ほうりん)
住所:神奈川県横浜市中区山下町187(MAP
TEL:045-662-2225
営業時間:11:00~15:00 17:00~21:00 (L.O.20:30ごろ)
水曜定休

大珍キッチン(だいちんきっちん)※大珍食品有限公司のEC部門
TEL:045-681-2280
営業時間:オンライン販売
水曜定休


text & photo:ぴーたん
ライフワークのアジア樹林文化の研究の一環として、台湾・中国・ベトナム・マレーシアを回って飲食文化も研究。10数年前の勤務先で、江西省井岡山に片道切符で送り込まれたことを機に、中国料理の魅力に目覚め、会社を辞めて北京に自費留学。帰国後もオーセンティックな中国料理を求めて、横浜をはじめ、アジア各国の華僑と美味しいものについて情報交換をしている。