決め手は洗面!自家製涼皮(リャンピー)の作り方

涼皮とは何か? それをひと言で表すならば、小麦粉の“分解の結晶”です。相反する2語。一体どういうこと? その意味は、リャンピーの製造過程をたどるとわかります。そこで実際に作ってみました。

1:小麦粉に水を加え、ひと塊にまとめる。

小麦粉の重量の約40%の水を加え、ひと塊にまとめたら、30分ほど寝かせます。今回は薄力粉を使いましたが、中力粉、強力粉でもOKです。

小麦粉に水を加えてひと塊に。
2:水の中で生地を揉み、生地を白濁水とグルテンに分解する。

ここからいきなり涼皮の核心となる工程に突入! ボウルに生地全体が浸るくらいの水を入れ、その中で生地を揉み洗いします。

中国語で「洗面」と呼ばれるこのプロセスこそ涼皮づくりの肝。洗面といっても、キンキンに冷えた水でザバッと顔を洗い、気合を入れ直しましょう、ということではありません。面(麺=小麦粉)を洗うのです。

水の中で生地を揉むという新鮮な体験。

実はこの白濁した水は、小麦粉からでてきたデンプン質(面糊)。しっかり白濁したら、別のボウルに移しておき、数回水を替えて揉み洗いを続けます。

両手でクニュクニュ、手を止めずに20分ほど続けると、水は透明に近づき、生地は白い球形から、薄黄色の海綿スポンジのようなグルテン(面筋)へと変化。つまりここで、小麦粉は2つに分解された状態になります。

生地を揉んで出たデンプン水(面糊)。これこそが涼皮のもと。
水の中で生地を揉み、でんぷん質が取り除かれた後に残るグルテン(面筋)。
3:白濁水を静置し、沈殿したデンプン質を取り出して漉す。

別のボウルに移しておいた白濁水を1時間ほど静置すると、上澄みと沈殿した粉に分離します。上澄みは捨て、粉を多く含んだ濃厚な水を濾すと、きめ細かくとろりと滑らかなデンプン水ができあがります。これが涼皮のもとです。

上澄みと沈殿したデンプン質に分離した様子。
4:デンプン水を蒸す。

皿に薄く油を塗り、デンプン水をレードル1杯分流し入れ、2~3分蒸します。流し入れる厚さの目安は2~3mm。厚めなら少し長く蒸してください。生地の上に大きな気泡が現れたら、蒸し上がりのサインです。これを1枚ずつ繰り返し、重ねていきます。

デンプン水はとろりとした質感。
蒸し上がったデンプン水。
5:グルテン(面筋)を蒸して一口大に分ける。

最後に生地を切り揃えたら涼皮のできあがり! ですが、デンプン水を取り出す過程でできたもうひとつの産物がありますよね。そう、グルテン(面筋)です!こちらは塊のまま蒸し、水分を軽く絞り出したら、一口大にちぎり分けます。

小麦粉から取り出したグルテン(面筋)。ふすまを含んだ小麦粉(麦麸面粉)を使い同じ手順でグルテンを取り出し発酵させると、上海料理の烤麸(カオフ―)の原料になります。
6:切って盛り付ける。

最後に生地を切り揃え、麺状にしたら素材の完成です。水の中で離ればなれになった小麦粉は、姿を変え、再びひとつの皿の上で“結晶”となり、豊かな食感を生み出します。これらはどちらも欠けてはならない“凉皮的灵魂(リャンピーの要)”と表現されます。

食べるときは皿に盛り付け、きゅうり、もやし、蒜水(刻みニンニク・塩・黒酢・醤油などを合わせた水)、辣油、お好みでゴマだれをかけて召し上がれ!

お手製涼皮の完成!!

小吃(軽食)としてつるり、ぺろりとあっという間に食べられる涼皮ですが、想像以上に多くの手間と時間をかけて作られているものです。

涼皮は小麦粉の分解の結晶ーー。そんなことを思いながら、テイクアウトや専門店、レストランで味わい、また実際に作ってみると、以前とはまた違った味わいが感じられるかもしれませんよ。

文中でご紹介したお店

張小記 西安味道
東京都新宿区百人町2丁目14-4(MAP
TEL 03-6794-1283
営業時間 11:00-22:00
臨時休業・臨時中休み(15:00-17:00)あり

刀姐涼皮(蒸屋)
東京都板橋区大山金井町49-2 坂本荘102(MAP
TEL 080-4629-8400
営業時間 11:30-18:00
火曜日定休
※現在、涼皮のテイクアウト販売のみ

池袋友誼商店(『刀姐涼皮』販売店として紹介)
東京都豊島区西池袋1-28-6 大和産業ビル4階(MAP
TEL 03-5950-3588
商店(スーパー部門)営業時間 7:30-24:00
友誼食府(フードコート)営業時間 11:00-22:00
※早餐(油条や包子、豆乳などを販売する朝食コーナー)も7:30開店。夕方頃、売り切れ次第閉店。
年中無休


text & photo :アイチー(愛吃)
中華地方菜研究会〜旅するように中華を食べ歩こう』主宰。中華料理にまつわるコーディネート、アドバイス、監修などを行う。一つの「食」を愛し、味も知識も徹底的に極めた「偏愛フーディスト」がプロデュースする期間限定レストラン『偏愛食堂』中華料理担当として、多彩な中華地方菜の楽しさを伝えている。★アイチー執筆・出演記事はこちら