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中華マニアックス 広東料理マニアックスVol.1 順徳料理とは?

広東料理のルーツがあると言われる順徳を『香宮』篠原シェフと訪ねる旅。順徳の味、あなたはどれだけ知っていますか?

2015/06/17up

広東料理マニアックスVol.1
順徳料理とは?

ひと口に中華といってもいろんな地域の料理がありますが、日本のホテルや飯店で長らく主軸となり、プリプリの金糸を持つふかひれ、干しアワビ、燕の巣など、文句なしのご馳走が揃った料理といえば、広東料理ではないでしょうか。

そんな広東料理も、さらに各地方に目を向けてみると、また趣が異なってきて楽しいもの。中でも広州市の南方、珠江デルタ地帯の仏山市順徳(じゅんとく)は名菜揃いで有名な場所。古くは「鳳城」と呼ばれ(※山の名前に由来)、「食在広州 厨出鳳城」、すなわち「食は広州にあり 料理人は鳳城から出ずる」の名フレーズとともに、美食の故郷として輝きを放っています。

そんな順徳に「広東料理のルーツを探りたい」と、毎年訪れては料理への見聞を広めているのが 「海鮮名菜 香宮(シャングウ)」の篠原裕幸シェフ
そこで80C(ハオチー)では、人気店のシェフも魅了される順徳を探るべく、シェフの“食旅”に同行。現地で体験した順徳料理、広東ならではの農家レストラン、そしてさらに順徳の奥深く、田舎で味わう家庭料理を3回シリーズでレポートいたします!


今回の旅のプランは2泊3日。早朝フライトの羽田発香港エクスプレスに乗れば、10時には香港に到着。今回は紅磡(ホンハム)駅から鉄道で広州東駅へ向かい、車で南下するというルートです。


広東料理マニアックス

①順徳料理とは? | ②農家レストランは小動物園 | ③自給自足村のおもてなし



順徳の自然農法に想いを馳せ、桑とヘビをを食す

まず到着早々、篠原シェフにご案内いただいたのは、順徳大良大吉村にある「百丈園」。ここは順徳が培ってきた食文化に想いを馳せるには、最適のレストランといえるでしょう。

同店のメニュー冒頭にある文言によると、創業以来「緑色(安全安心)、环保(環境保護)、生态(生態(の保持))」をモットーとし、野菜や家禽、川魚などは自店で育てているとのこと。また、「桑叶(桑の葉)」を使ったお茶や料理は店の一推し。桑とは、絹糸を作る蚕が主食にしている、あの葉っぱことです。



というのも、順徳は約600年前より「桑基魚塘(そうきぎょとう)」という自然循環農法が根付いていた地域。これは、川のほとりに池を作り、その堤に桑の木を植えて蚕を飼い、桑の落ち葉、蚕のフン、死骸などを池の魚のエサとして、養蚕と養殖を両立させるという画期的なもの。

池には中国四大家魚とされる草魚(ソウギョ:広東省では鯇魚(ワンユイ))、大頭魚(コクレン)、白鰱(ハクレン)、青魚(アオウオ)がそれぞれの水域で生息しており、食物連鎖によって餌代がほとんどかからないのが、この農法のすごいところ。

そして年に一度、池の底に溜まったものをさらい、桑の木の肥料とすることで、樹木はさらにいきいきと成長。順徳は養蚕・生糸産業で栄えた街でもありますが、実はこの発展は「桑基魚塘(そうきぎょとう)」によって支えられていたのです。


桑叶(桑の葉)


しかしながら、今は化学繊維の普及によって養蚕業が衰退。30年ほど前からこの農法も急速に姿を消していきますが、伝統を守る動きがあるのもまた事実。「百丈園」も、こうした順徳の伝統的な食のありようを大切にし、「桑叶(桑の葉)」を使った料理を取り揃えているのでした。

その中のひとつを紹介すると、川魚のすり身に桑の葉を混ぜ、団子上に丸めたものを蒸した「蒸桑叶魚珠(川魚と桑の葉の蒸し団子)」。桑の葉はどこか青臭いシソのような風味が特徴で、川魚のほのかな泥臭さをさっぱりとさせるよう。


蒸桑叶魚珠(川魚と桑の葉の蒸し団子)


また、広東省らしい野味が水律(※水蛇の仲間。広東省以外では「滑鼠蛇」の呼称)です。蛇は広東省を中心とする中国南部で1年中食べられていますが、水律は順徳で訪問した店や市場などでよく見かけたもの。味は脂っこさのないウナギと白身魚を掛け合わせたような感じで、淡白な中にもコクのある、非常に食べやすい風味。安くはないので、この界隈の人にとっては精のつくご馳走といえるでしょう。

ここでは2.9斤(1740g)の生きた水ヘビを選び、「水律二味」、すなわち「水ヘビを2つの味で」で調理してもらいました。身は、にんにくなどの香味野菜を効かせ、スパイシーな中に甘味のあるたれで調味した「椒盐水律(ナンジャの塩コショウ風味揚げ)」で。皮は新鮮な野菜と一緒に、塩味でさっと炒めた「時蔬炒水律皮(ナンジャの皮と野菜の炒めもの)」で登場です。


椒盐水律(水蛇の揚げもの)



時蔬炒水律皮(水ヘビの皮と野菜の炒めもの)


この皮が、見た目さえ気ならなければ本当に美味!!ちゅるんとしていて、噛みごたえもあり、飽きのこない味なのです。鮮度もよいからか、生臭みも一切なく、身体への吸収も心なしかよい感じ…。

ちなみにこの蛇、中国では水蛇の仲間に分類されますが、実際は山地や丘陵に生息する陸生。日本では「ナンジャ」と呼ばれ、皮は革小物に加工されたりしています(肉はどこへいってしまうのか)。また、韓国では水蛇が化粧品などに使われていますが、食べたほうが断然効きそうですね。


知っておきたい、順徳名菜ダイジェスト

続いて訪れたのは、定番の順徳料理と飲茶が楽しめる「龍的酒楼」。ここは朝の飲茶から夜の宴会、休日は結婚式まで入る大規模大繁盛店。ここでは知っておくと順徳をより深く味わえる、篠原シェフおすすめの料理をご紹介しましょう。



大良野鷄巻(豚背脂のきじ肉似せ 大良風巻き上揚げ)

「大良」を冠した料理は、順徳区大良鎮発祥の料理ということ。カリッとした食感とともに、玫瑰露酒(ハマナスの酒)のバラのような香り、砂糖の甘味、豚背脂がジュワッと溶け出すハーモニーが素晴らしく、口中には肉の旨みのみ残る…という技巧的な料理。豚背脂、赤身、腊肉または火腿、卵が主原料。




胜瓜竹笙浸魚腐(ヘチマと衣笠茸のスープ入り魚のすり身揚げ団子)

魚腐は順徳発祥の魚のすり身揚げ団子。食感は魚のがんもどきのようなもので、ふわふわとしつつも若干粗めの食感が特徴。“豆腐の魚版”=“魚腐”と考えると、イメージしやすいですね。




鳳城炒鮮奶(順徳式ミルク炒め)

牛や水牛の飼育が盛んな、順徳ならではのミルク料理。牛乳に卵白、鶏レバー等を加え、たっぷりの油で炒めてふわふわに仕上げます。こちらの店は比較的ねちょっとした食感。香港などでも食べられる、知名度・人気ともに高い順徳名菜です。




家郷拆魚羹(順徳風魚のとろみスープ)

羹(あつもの)は、もったりととろみのついたスープのこと。細くカットした川魚がたっぷり入り、いかにもコラーゲンが豊富そうな質感です。順徳界隈では、このような煮込みスープはしっかり濃厚。一方、燉湯(ドゥンタン:蒸しスープ)は香港と異なり、至極あっさりとした印象です。


路地裏で、清代発祥の米粉蒸しパン〈倫教糕〉の元祖に出会う

さらに順徳発祥の甘味として覚えておきたいのが倫教糕(ルゥンジャオガオ)。今や広東省各地で食べられるこの小吃は、順徳区倫教鎮が発祥。清朝時代の1855年、この地区に住んでいた梁礼成さんが発明し、路地裏の小さな店「歓姐倫教糕」で、今に至るまで受け継がれている米粉の蒸しパンです。



原料は米粉、砂糖、水、そして糕種と呼ばれる発酵種のみ。表面は真っ白く艶やかで、女性の美肌に例えられることもあるほど滑らか。あえて言えば、日本の「かるかん」に似ていますね。

とはいえ、口に含めばさっぱりとして口当たりよく、発酵種独特のほのかな酸味が鼻に抜ける風味は倫教糕ならでは。実は見た目以上に熟練の技がいるそうで、篠原シェフも何度かトライしたものの「このようにはいかないんです」とのこと。

素朴ながら飽きのこない味わいはまさに伝統菓子。どこにでもありそうな路地裏に、今もこの味を求めて集う人が絶えず訪れていました。



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さて、次回はさらに一歩踏み込んで、中国各地で人気の農家菜をご紹介。日本も中国も都会人のレジャーとして定着しつつある農家レストランは、どんな雰囲気で、どんな料理を楽しめる場所なのでしょう。ご期待ください。

広東料理マニアックス

①順徳料理とは? | ②農家レストランは小動物園 | ③自給自足村のおもてなし

参考資料:
映画『桑基魚塘 クワとサカナのものがたり』(一般社団法人中日文化研究所 / 2014年)
『中国人都愛吃的 金牌粤菜』(知味堂 主編著 / 成都时代出版社 / 2014年)
『順徳美食一本通2014』(第九届中国岭南美食文化节組委員 / 2014年)
『順徳美食一本通2013』(第八届中国岭南美食文化节組委員 / 2013年)
『中国名菜譜 南方編』(中山時子 訳 / 柴田書店 / 1976年)
『中国食物事典』(田中靜一 編著 / 柴田書店 / 1991年)


TEXT & PHOTO 佐藤貴子

カテゴリ:
Food Travel

記事公開日: 2015/6/17

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