餃子を山ほど食べたい。いろんな餡の餃子を、みんなでわいわい分け合って食べたい。そんな気分にぴったりな店が「餃子封神榜(ぎょうざほうしんぼう)」だ。

場所は「ガチ中華」のメッカ、JR池袋駅北口界隈。あらゆる中国料理店が軒を連ねるエリアだが、ここまで餃子に特化した店は、意外にもこれまで出現していなかったのではないだろうか?

ここで食べられるのは、作りたての水餃子や蒸し餃子。注文が入ると、フロアに隣接したガラス張りの厨房で、面点師が皮をのばし、餡を包み、ゆでたて&蒸したての餃子がすぐに運ばれてくる。

厨房の中はまるで中国の餃子専門店そのもの。

餡たっぷりで皮は薄め。「薄皮大餡」な餃子を特製だれで召し上がれ

餃子の種類は約30種類。餡は、牛肉×大根、羊肉×香菜×白菜、牛肉×玉葱、鶏肉×ニラ×トウモロコシ、羊肉×ニンジン、豚肉×蓮根、豚肉×香菜、豚肉×フェンネル、豚肉×ピーマンなど実に多彩で、これだけあると、数人で行ってあれこれシェアしたくなる。

紙のメニューはあるが、基本的にスマホでQRコードを読み込んで注文する。メニューは、カメラで読み込んだ場合は日本語、Wechatで読み込んだ場合は中国語で表示される。

日本で手作り皮の餃子というと、「味坊」のような中国東北地方で食べられているような皮がむっちり厚めの水餃子が多いが、この店は「薄皮大餡」、すなわち皮が薄めで餡たっぷり。餃子を包む面点師によって若干の差は生じるものの、どちらかというと北京や天津の餃子専門店で食べるような餃子、という印象を受けた。

「薄皮大餡」、すなわち皮が薄めで餡たっぷりな豚肉と蓮根の餃子。蓮根の食感が心地よい。

また、想像以上に汁を孕んでいるのも特徴のひとつ。うっかりかみ切ると、肉汁がじゅぶぶと溢れでてしまうので、下に小皿を当てるなど心して臨もう。この汁の多さは餡に油を練り込んでいるためだが、これまたひとつの魅力になっているので抗えない。

豚肉と香菜の蒸し餃子。見てください、つゆだくなんです。

そして、優秀なのがオリジナルの餃子のたれだ。一般的に、中国で餃子につけるのは黒酢、さらに加えるなら辣油といったところだが、ここでは黒酢、にんにく、生姜、辣油などを合わせたつけだれが卓上に用意されている。これが重たくなく軽すぎず、それでいて味の方向性を決めるというすぐれもの。一度使うとクセになってしまう。

オリジナルの餃子のたれ。辣油の唐辛子も入っているが、香りや香ばしさを加える程度て辛くはないのでご安心を。
こんな感じでつけだれにつけていただきます。

蒸し餃子やベジタリアン対応の精進餡(素三鮮)も。餃子以外の点心も作りたて!

中国系の餃子専門店というと水餃子が主流だが、特に蒸し餃子が8種類ある充実ぶりには目を見張る。なかにはトウモロコシを練り込んだ黄色い皮の餃子や、肉を一切使わない精進餡(素三鮮)も。

豚肉と酸菜(発酵白菜)の蒸し餃子。包み方が美しい。

注文単位は蒸し餃子が6個、水餃子は10個単位の注文で、プラス300円で水餃子は15個に増量も可能。「そんなに食べられないよ」と思うかもしれないが、中国では「餃子は主食」だ。

特にこの店の場合、「薄皮大餡」の傾向なので、生地で腹パンになりにくいのはメリットといえる。その一方で、餡はややうまみ調味料が効いたあと味なので、気になる方はご留意いただきたい。

また、餃子ではないが、同じ中国北方の粉ものも必食。ニラタマの軽やかな餡を包み、煎り焼いてカリッとした食感が軽快な韮菜盦子(ニラタマお焼き)は、水餃子と蒸し餃子の合間のアクセントとしておすすめだ。

さらに胃袋に余裕があれば、餅(ビン)もトライしていただきたい。餅とは小麦粉を原料にした丸型でやや薄い食べ物全般をいい、この店では庶民的な糖酥餅(タンスービン|砂糖を混ぜ込んだサクサクの菓子)南瓜餅(ナングァービン|カボチャ餡入り菓子)、草帽餅(ツァオマオビン|焼きパイ)などを作ってくれる。

特にできたての糖酥餅を食べられる店は珍しく、残ったら持ち帰るつもりで注文してみては。粉と油と糖分で構成された背徳の味だが、作りたてで熱々のおいしさがたまらない。

糖酥餅(タンスービン)。熱々はサクサクで格別!
草帽餅(ツァオマオビン|焼きパイ)。焼きたてのふわふわ!飲む用に食べられる。

日本で消えゆく中国料理「抜絲(バースゥ)」がここに!

さて、ここまで餃子と点心のみを推してきたが、メニューには、中国東北料理を中心とした炒めものや和えものもある。

特に餃子の箸休めとして一品おすすめするなら、老醋菠菜(ほうれん草の黒酢和え)はいかがだろう。ゆでたほうれん草を黒酢だれで和えたもので、カリッとした歯ごたえの揚げピーナッツが絶妙なアクセントとなっている一皿だ。餃子と黒酢は最高の相性なので、この一品もまた餃子との相性抜群だ。

老醋菠菜(ほうれん草の黒酢和え)

また、日本で消えゆく中国料理のひとつ「抜絲(バースゥ)」がメニューにあるのは見逃せない。抜絲とは飴がけ料理のことで、サツマイモ、バナナなどが定番の食材。ここでは抜絲地瓜、さつまいもの飴がけが食べられる。

さつまいもの飴がけというと、大学芋を思い出すかもしれないが、抜絲地瓜は大学芋とは似て非なるもの。飴(糖液)の糖度が高く、氷水に入れて仕上げるため、飴の表面がカリッとした食感となり、さらに飴に糸引きが生じるのが特徴だ。

価格はこの店で上から2番目の価格となる1,680円だが、料理遺産と調理技術を食べると思えば安いもの。オールド中華好きな方はぜひ、胃袋に余力を残して注文してみてほしい。

餃子封神榜(ぎょうざほうしんぼう)

住所 東京都豊島区西池袋1-29-7 大野ビル2F(MAP
TEL 050-5462-3864
営業時間 11:00-24:00
無休
50席(テーブル席45、カウンター5)個室なし
オフィシャルサイト


TEXT&PHOTO サトタカ(佐藤貴子)