「次回はいったいどの店だろう?」と、井之頭五郎ファンを楽しみにさせてくれる『孤独のグルメ』の新ロケ地。ぱっと見わからないこともありますが、「これは!!!」と一目瞭然な場合もありますね。

例えば2021年8月20日(金)放送の『孤独のグルメ Season9』第7話。この回は、番組のオフィシャルサイトに「貴州本格火鍋」「新小岩」の告知が出るや否や「これはもう『貴州火鍋』の店名が出たようなものでは…!」と中華好きをざわつかせました。

中国料理の中でも、控えめに言ってマイナーな貴州料理。そんな地方の美味を『孤独のグルメ』が採り上げたことは胸アツです。そこで今回はテレビ東京の協力のもと、井之頭五郎を演じる松重豊さんに、『貴州火鍋』で体験した貴州料理についてお話をうかがってきました。

火鍋の登場は番組初。しかも貴州の火鍋です!

『孤独のグルメ』で、火鍋を採り上げるのはこれが初めて。一方、松重さんの火鍋体験を聞いてみると「火鍋は、僕はもうほんと大好きで。中国のいろんなところで食べています」と、実は火鍋LOVERだったことが判明!

赤と白の2色のスープで食べる鴛鴦火鍋と、北京をはじめ、北の方で食べる酸っぱい白菜の鍋、酸菜白肉鍋も食べたことがありますね」。

さすが、“鍋を火にかけて食べる料理=火鍋”という、中国料理の正しい認識もきちんと理解されていらっしゃいました。しかし、貴州省までは知らなかったようで…。

「申し訳ないです。貴州省、ぜんぜん知らなかったし、あとで地図を見て、こんなところにあるんだ、というくらいイメージがなかったんですよ。貴州の火鍋というのも、残念ながら存じ上げませんでした。初めてでしたね、ええ」。

まずは前菜から味わう井之頭五郎(松重豊さん)。photo ©テレビ東京

「貴州流のおもてなし、ありがたくいただこう」

井之頭五郎も、演じる松重豊さんも初体験となった貴州料理。そんなドラマの中で印象を残したのは、やはり干し納豆を使った豆豉火鍋(トウチひなべ:番組中では「納豆火鍋」)でしょう。

豆豉火鍋(トウチひなべ)のセッティング。右上は野菜やきのこ、豆腐、右下が干し納豆と唐辛子で味付けした豚バラ肉、手前はさまざまな薬味が入った貴州式のつけだれ・蘸水(ジャンシュイ)だ。photo ©テレビ東京

豆豉火鍋は、軽く味付けした貴州の乾燥納豆と、突いて軟らかくした唐辛子、生姜、にんにくを混ぜて作られる糍粑辣椒(ツーバーラージャオ)を合わせてつくる貴州省の郷土料理。見ての通り、納豆と唐辛子を掛け合わせているので、ごはんに合わないわけがない!

豆豉火鍋(トウチひなべ)は貴州の中でも貴陽から西と北が本場。この中に、干し納豆がゴロゴロと。photo ©テレビ東京

納豆がよく出てくるなあー」という台詞もありますが、この風味、松重さんはどのように感じたのでしょうか。

「日本人は納豆を辛くするっていう発想が、そもそもないですよね。もともと、辛いものを食べる食文化がなかったじゃないですか。そこに芥子(の辛さ)ではなく、唐辛子の辛さを加えて鍋に入れると、こんなにも風味が増すんだなって思いましたね。発酵したもののうまみが、加熱されることによって非常にこう、食べやすくなるんだなあと

豆豉火鍋(トウチひなべ)を白米にON!納豆だから、当然合う。photo ©テレビ東京

前菜からごはんが進む!五郎さんが味わった料理を一挙紹介!

さらに井之頭五郎が注文したのは、らっきょうと水納豆(水豆豉)の和えもの、コールラビと燻製肉の炒め、こんにゃくの和え物の「シェフお任せ 貴州のまかない前菜三種盛り」。

加えて、店からのサービスで三椒鶏(サンジャオジー:番組中では「鶏肉の糟辣椒煮込み」)も出ていますが、これらが揃いも揃ってめし泥棒の最高峰!それぞれどんな料理かというと…?

らっきょうと水納豆(水豆豉)の和えもの

ドライな辛さのらっきょうと、水納豆(水豆豉:大豆を水で酸味がでるまで発酵させた調味料)という、クセのあるもの同士が惹かれ合うような組み合わせ。シャキシャキとしたらっきょうの食感と、隠し味の焙煎唐辛子が箸を進ませます。

らっきょうと水納豆(水豆豉)の和えもの。photo ©テレビ東京
コールラビと燻製肉の炒め

干してから漬けた、ポリポリとした歯ごたえのコールラビと、貴州の定番食材・燻製干し肉の組み合わせ。保存食同士の組み合わせに発酵唐辛子が調味料となり、これまたごはんが進まないわけがない!

コールラビと燻製肉の炒め。アブラナ科のコールラビは中国では大頭菜と呼ばれ、漬物などにもよく使われる。球状に肥大した茎部を食べる。photo ©テレビ東京
こんにゃくの和え物

日本でもおなじみのこんにゃくを、高菜漬けと貴州唐辛子で炒めた一品。これは「貴州火鍋」の常連にもこよなく愛されているごはんの友です。

こんにゃくの和え物。photo ©テレビ東京
三椒鶏(サンジャオジー:番組中では「鶏肉の糟辣椒炒め」)

赤唐辛子(紅辣椒)、青唐辛子(青椒)、花椒という三種類の“椒”で味付けした鶏料理。これは井之頭五郎さんが食べた料理の中で最もノージル案件(ノージルの詳細はこちらでどうぞ)。

三椒鶏(サンジャオジー:番組中では「鶏肉の糟辣椒炒め」)。photo ©テレビ東京

さらに一品料理では、家常豆腐回鍋肉(ジャーチャンドウフほいこーろう:番組中では「厚揚げの回鍋肉」)も注文しています。これは貴州の家庭で作られる回鍋肉。唐辛子を刻んで漬けた糟辣椒(ザオラージャオ)で炒めており、酸っぱ辛く、ほんのり甘みも。

回鍋肉は回鍋肉でも、日本の回鍋肉とも四川の回鍋肉とも違う味。photo ©テレビ東京

松重さんも、この風味には非常に新鮮な印象を持ったようです。

今回の『貴州火鍋』では、酸っぱく発酵した野菜(唐辛子)が入っていたんですが、酸っぱ辛いという感覚が、実にいいとこどりをしていると思ってびっくりしましたね。酢の酸味ではなく、発酵の酸味が、辛さと相まって非常に食欲を刺激するんです

五郎さんのセリフにも「四川の辛さとはまた違う」とありましたが…。

どれだけ食べたのかわからなくなるほど、口の中も胃の中も麻痺するくらい食べ進んでしまう感じが、非常におもしろかったですね

家常豆腐回鍋肉(ジャーチャンドウフほいこーろう)をごはんにONする井之頭五郎(松重豊さん)。photo ©テレビ東京

知られざる場所にこそおいしいものが眠っている!?

今回の撮影で、舌と胃袋で貴州省を体験した松重さん。しかし行ったことはないだけに、その印象は知られざる美味が眠っているようにも感じられたかもしれません。

「『日本でいうと鳥取県のようなものだ』って誰かが言ってたんですね、貴州省のことを。実際『孤独のグルメ』では前のシーズンで鳥取に行ったんですが、ここにも知らなかったうまいものがありまして。

思えば、外国の人が知らないような街に、びっくりするようなおいしいものがあったりするじゃないですか。日本と規模は全然違うんだろうと思いますが、この撮影で、貴州は僕の記憶の中には刻み込まれましたね

辛さを和らげるドリンク(豆乳)でひと休みする井之頭五郎(松重豊さん)。photo ©テレビ東京

こうなったらすぐにでも「貴州火鍋」に行きたい…!

そんな気持ちになりますが、現在「貴州火鍋」は新型コロナウイルス感染拡大のため休業中。状況が落ち着き、営業を再開したら、ぜひとも足を運んでみてください。


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住所:東京都葛飾区新小岩1-55-1 多田ビル1F(MAP
アクセス:JR総武線 新小岩駅南口から徒歩6分(アーケード商店街「ルミエール」を直進して左)
電話:03-3656-6250
営業時間:17:00-23:30
★2021年8月20日現在、緊急事態宣言中につき休業中です。営業再開については店のSNSアカウントで適宜ご確認をお願いします。
定休日:日曜日、その他休みあり
席数:28席(うち、掘りごたつ席3卓×4席=12席)


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TEXT:サトタカ(佐藤貴子)
PHOTO提供:テレビ東京