中華マニア垂涎のレシピ本が発売!あの3シェフの料理ノウハウがここに!
おいしい中国料理があれば、日本中どこでも食べに行きたい…!
そう思っている人ならきっと知っている“あの3店”の中華レシピ本が、ついに10月末、出版されました。
気になる店とシェフは、大阪の骨董店ストリートに店を構え、舌の肥えたお客様を夜な夜な唸らす「唐菜房 大元」の國安英二さん(現在は閉店)、豊中市岡町駅前で、地元マダムを足繁く通わせ、遠方のグルメな客をも惹き付ける「中華菜房 古谷」の古谷哲也さん、福岡空港の近くというNOT繁華街ながら、今や業界人の“巴蜀詣で”が止まらない「四川料理 巴蜀」の荻野亮平さんの3人。
掲載レシピは充実の72点。内容はプロ向けではありますが、「大元」は広東料理の中でも潮州系、「古谷」が白湯×北京、「巴蜀」が現地四川系の料理を中心に紹介と、その店“らしさ”が感じれる内容で、各店のファンが見ても納得の仕上がり。また、レシピを見ると、日本では入手できないような調味料の自作方法や、こだわりのスープのとり方まで懇切丁寧、包み隠すところなく赤裸々に披露されています。
そこで80C(ハオチー)では、注目の3シェフがそれぞれどんな想いでメニューを選ばれたのか、思い入れのある料理は何かをインタビュー。ぜひこの機会に本書と各店、シェフににご注目を!
3シェフが語る!「私のメニュー選び&思い入れのあるレシピ」
「大元」國安英二さん | 「古谷」古谷哲也さん | 「巴蜀」荻野亮平さん |
國安英二さん|唐菜房 大元 オーナーシェフ
カウンターとテーブルの小体な店に、夜な夜な食通が通う「大元」は、前職で辻調理師専門学校の中国料理講師をしていた國安シェフが切り盛りする店。
新鮮で質のいい食材が入手できる日本だからこそ、シンプルで素材のおいしさを引き出した料理を作りたい―――。そんな思いで料理しているという國安シェフが選んだ料理は、ご自身の調理スタンスにも通じる潮州料理と「現地の書籍で見たもの、ディープな店で食べて印象に残ったものなどの中から、コツコツ試作を重ね、店で出してきた料理」です。
中でも思い入れがあるというのは招牌酔鍋鶏。「この料理は20年以上も前、香港の朋友(友人)と佐敦(ジョーダン)に夜食を食べに行った時に出してもらったもの。店のオヤジをほめまくり、煙草を賄賂に厨房まで入らせてもらってレシピを教えてもらいました。店の常連さんが、『コレ持って帰れ』勝手に僕のカバンにメニューをねじ込んで来たりして、楽しい店でしたね。今はもう閉店してしまいましたが、昨日のことのように覚えています」と当時を振り返ります。
実は講師時代、「辻調美味しいネット」にも、この料理にまつわるコラムとレシピを執筆していた國安シェフ。今回掲載しているのは、そのレシピをさらにバージョンアップさせ、鍋に入れる魚の団子やタレも仔細に紹介したものになります。本気で作りたい方は、ぜひ本書を見てその味を再現してみては。
古谷哲也さん|中華菜房 古谷 オーナーシェフ
開業は2012年とついこの前ですが、昼も夜も予約の取りにくい店として評判の「古谷」。店のコンセプトは「白湯を使った中国料理」で、そのきっかけは「北京で師事した烹任大師・靖三元氏の白湯を使った料理に感銘を受けたこと」と言う古谷シェフ。本書でも、白湯を使った料理を幅広く紹介しています。
そんな古谷シェフが選んだ料理は「河北省唐山市の『鴻宴飯荘』や、北京で研修してきた料理の中から、日本であまり紹介されていないもの、北京の名菜といわれるもの、現地で地味ながらもおいしい料理」の数々…!
紹介している中でも「思い入れのある料理は、芫爆里脊絲(細切り豚肉・香菜の強火炒め)、葱焼海参(ナマコの白湯醤油煮込み)、白扒魚翅(フカヒレの姿 白湯塩煮込み)ですね。この3品は北京の名菜で、靖三元氏が来日された際、実際にうちの店で作っていただいたものです」。
というわけで、本書では「その日に仕込む白湯を風味豊かなうちに使い切ことを信条としている」古谷シェフこだわりの白湯のとり方もしっかりご紹介。白湯好きの方垂涎の内容となっています。
荻野亮平さん|四川料理 巴蜀 オーナーシェフ
都内にいるとなかなか福岡まで足を運べませんが、中国料理人の中ではすでに「巴蜀詣で」が始まっている…!
ということで、80C(ハオチー)編集部が熱いまなざしを注いでいるのが「巴蜀」。同店のテーマは「街場の伝統料理」「庶民の中国料理」であり、本書でもそのコンセプトを踏襲。「四川では誰でも知っているけれど、日本ではなじみのないもの」を中心にメニューをチョイスされています。
思い入れのある料理を伺うと、「“水豆豉”とその料理です。水豆豉を作ろうとしたきっかけは、これを使いたくても日本には売ってなくて、たまたま妻の親(四川の人)が昔作ったことがあると言うので、作ってみました。中国の街で食べるような調味料が日本でも作れるということを、レシピ付きで紹介できたことに誇りを持っています」と荻野シェフ。
本を見ると、荻野シェフのレシピだけ、各種調味料の作り方から使用する酒の銘柄まで事細かに紹介されていますが、「本のレシピが僕だけ多いのは、見て作る人のことを考えて包み隠さず記すよう、古谷先輩に促されたためで、うまいことのせられたと思っております」とのこと。
ちなみに荻野シェフが更新している同店のブログでは、こうした自作調味料の過程が時々紹介されており、中華好きならやみつきになること必至。日本にこんなおもしろい料理人がいるんだなあ~、と思わずにはいられません。ぜひこちらも本と合わせてお楽しみください。
『伝統×現代 深化する中国料理』
共著:國安英二/古谷哲也/荻野亮平
「伝統中国料理の持つ不変の新しさ、現代中国料理に息づく珠玉の伝統技術。伝統と現代が交錯し、魅力が深まる中国料理に挑戦する評判3店が、料理72品を紹介する本です。
これまで中国料理の本を何冊か編集しましたが、初めて知る料理、調味料も多く登場し、中国料理の奥の深さを改めて感じました」と言うのは編集担当・旭屋出版編集部の井上久尚さん。
80C編集部的には「我こそは中華料理マニア!」という方に、読んで唸って、挑戦していただきたい1冊です!
出版社:旭屋出版
定価:本体3500円+税
ISBN978-4-7511-1110-9
B5判 236ページ
Text 佐藤貴子/ことばデザイン
写真提供 旭屋出版