『つらい』や『たのしい』考えたことない。なんだってがんばれる。自分の店だから」
後日、「山西亭」に伺ったとき、「秀珍さんの麺好きが山西料理店を開くきっかけだった」とご主人が打ち明けてくれました。
「麺が大好き。しかも夫が作る刀削麺が大好きで、いつもそれを食べることができたらいいのに。こんな美味しい麺だからみんなにも食べてもらえたらいいのに」。
サービスマニュアルとしてある「笑顔作りの練習」「接客用語」のような「形」の習得などはここにはありません。そのかわりにあるのは、心の底から伝えたいもの、伝えたい味。それを自然な気持ちで表現できるということが、秀珍さんのあたたかなサービスへと結びついているのかもしれません。
寝る前の音楽と家族への電話でリラックス。
そんな秀珍さんの気分転換になっているのは音楽。流行歌が好きで、誰もがよく知るテレサ・テン(邓丽君 / 鄧麗君)も大好きな歌手のひとりです。
店内のBGMとして流れている中国語の歌は秀珍さんのセレクトによるもの。時間が取れないので、最近は行っていないそうですが、実は「カラオケ大好き」。今は就寝前に好きな音楽を聴いてリラックスしているそう。その時間もまた、明るく爽やかな彼女のサービスをつくる要素なのでしょう。
「今は時間が取れないので、外出はほとんどしていませんが、時間ができたら洋服を買いに行ったり、歌を歌いに行ったりしたいな」と、少女のような素顔も見せます。
また、週に1日の休みは「故郷の両親や、ひとり息子に電話します。営業日は、電話する時間はほとんどないですから」と秀珍さん。
そして電話が終われば箸袋をセットするなど、店の準備も必須。「サービスを任せ切りにしているので、とても疲れているはず。お互い睡眠をしっかりとるようにしています」とご主人も気遣うほど働き者です。
「接客をしていて、楽しいと思うこと、つらいと思ったことは?」 その質問に「『つらい』や『たのしい』考えたことない。なんだってがんばれる。自分の店だから」と答えた秀珍さん。
その根底にあるのは、もっと多くの人に美味しい麺や山西料理を知ってもらいたいという想い。「そのために、いつかもっと多くの人が集まれる店にしたい」と、目を輝かせて話してくれる爽やかな笑顔に、改めて惚れ直してしまうのでした。
李秀珍さんのいるお店
山西亭(さんせいてい)住所:東京都新宿区大久保2-6-10 B1F(地図) |
TEXT 本多政子
PHOTO 宮濱祐美子(人物)、小杉勉(平遥古城)、佐藤貴子(不烂子、猫耳朵)
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