中国料理のシェフが「酢」をテーマに登壇!内容をダイジェストで紹介します。
世界料理学会 in HAKODATE
2016年9月6日(火)、「第6回 世界料理学会 in HAKODATE」のsession部門に、中国料理のシェフが初登壇しました。
登壇したのは「麻布長江 香福筵」の田村亮介オーナーシェフ、「Chi-Fu」東浩司オーナーシェフ、「の弥七」山本眞也オーナーシェフ。コーディネーターは80C(ハオチー)の佐藤貴子が務めました。
各国で使われる調味料「酢」に着目
同学会は「料理人による、料理に携わる人のための料理学会」をコンセプトに掲げ、1年半に1度開催。年々注目を集め、今年で6回を迎えます。
今回、中国料理チームが選んだテーマは「中国料理における酢の活用法」。その理由は、他ジャンルの料理人も参考になるよう、各国で作られ、使われている調味料にフォーカスしたかったから。
そのため、酢豚や酸辣湯のように、誰もが知っているあの「酸味」ではなく、酸味を感じさせずに風味や食感に働きかける、中国料理独特の酢の使い方を掘り下げました。
当日は、世界で作られている酢の紹介とともに、中国四大酢を紹介。田村シェフは米酢、東シェフはシェリーヴィネガー、山本シェフは京都「千鳥酢」などをよく用い、自らの料理に活かす方法を語りました。
「麻布長江 香福筵」で提案する、酸辣湯の再構築。
「Chi-Fu」で提案する土鍋料理。蓮の葉の香りと肉の燻製香を、鍋肌から立ち上る酸の香りと合わせて楽しむ一品。
「の弥七」で提案する「京都の酢豚」。2種類の酢に柑橘の香り合わせた一品。
酸っぱいだけじゃない!中華の酢の使い方
さらに今回の目玉として、日本の酢のトップメーカーの協力を得て、酢を使った中国料理で「パリパリ」「すっきり」「ピリリ」な効果が得られることを調理科学的な側面から紹介。
「パリパリ」は、酢と糖の入った水に漬けてから揚げる、クリスピーチキンこと脆皮鶏(ツイピージー/広東語:チョイペイガイ)の皮の秘密を解明しました。
脆皮鶏(ツイピージー/チョイペイガイ)
また、「スッキリ」は澄ましスープ・清湯(チンタン)を、少量の酢ですっきりと輪郭の際立った味に調える、その働きを分析。味に影響を与えず、香りにのみ影響を与えて料理の印象を変える、酢の効果を検証しました。
清湯(チンタン)
さらに「ピリリ」は魚の豆板醤煮込み・豆板魚(ドウバンユィ)。この料理では、辛味のキレをよくするため、仕上げに入れる酢の役割を紹介。
豆板魚(ドウバンユィ)
準備から発表までの一連の経験で、これまで踏襲されてきた伝統的な作り方が理に適っているのか、実際に検証できたとともに、なぜその効果が得られるのかを明らかにできたのは大きな収穫だったのではないかと思います。
発表は、バンコクにあるアジアのベストレストラン「gaggan」のプレゼンと同時間帯ということもあり、会場は満席とはいかなかったのですが、ご覧いただいた方からは「興味深かった」「勉強になった」「最も学会らしい発表だった」、中には「今回の学会で一番得るものがあった」という声をいただくことができました。
今年、登壇の機会をいただいたことに感謝しつつ、この取り組みが、日本の中国料理の発展に繋がる一歩となることを願います。
Text 佐藤貴子
Photo
天方晴子(「麻布長江 香福筵」料理、脆皮鶏、清湯、豆板魚)
渡部功平(「Chi-Fu」料理)
浜田啓子(「の弥七」料理)
佐藤貴子(調理プロセス)
世界料理学会 in HAKODATE 実行委員会(学会風景)