生死戀(生死恋)――。直訳すると「死ぬまで愛して」。
このインパクトのある名前の主は、新鮮な魚(=生)と、塩漬けにして干した鹹魚(=死)を抱き合わせて蒸した、なんとも洒落の効いた広東料理。細かく見ますと、湛江市陽江市など、広東省南東部の、沿岸地域の料理になります。

ここではアカハタを使用していますが、新鮮な魚と鹹魚が手に入れば、あとは身近な材料ばかり。調理工程もいたってシンプル。「御田町 桃の木」の小林武志先生に作り方のコツを伺いました。

生死恋

まずは魚汁(ユィチャップ)作りから

まずは蒸し上がった魚にかけるソースを作りましょう。分量は醤油25cc、老抽(中国たまり醤油)25cc、ナンプラー30cc、砂糖小さじ1、チキンスープ200cc。これらを合わせておくとともに、フライパンピーナッツ油50ccを入れておき、蒸し上がりに備えます。

豚バラ肉と鹹魚でうまみを増幅

続いて魚の内臓を抜き、下処理をした鮮魚に味が染みやすいよう、切れ目を入れて塩を振り、葱、生姜、豚バラ肉、鹹魚を順番にのせます。豚バラ肉には、蒸すことで脂身が溶け出し、鹹魚との相乗効果で、奥行のあるうまみを感じさせる役割がありますので忘れずに。

蒸し時間の目安は、魚300g毎に約4分

蒸し時間は魚の大きさによって調整しますが、くれぐれも火を通しすぎないようにしっとりと仕上げるのがポイント。目安は300gで約4分。蒸篭を汚さないよう、魚の大きさに合わせ、アルミホイルで蒸し皿を作ってもいいでしょう。蒸し上がった後に出た汁は、くさみの原因となるので捨ててしまいます。

仕上げは熱々に熱したピーナッツ油をジュッ

最後に、魚を崩さないよう皿に盛りつけたら、作っておいた魚汁(ユイチャップ)をかけ、さらに煙が出るまで熱々に熱したピーナッツ油を上からジュッ。美味しそうな音とともに香りが立ち込めめたところに、青葱と香菜を散らしたらできあがりです。丸魚の魅力をとことん堪能できる一品、みんなでワイワイ取り分けて楽しみましょう。

鹹魚(ハムユイ)

鹹魚

中国広東省、香港や台湾などでよく食べられている、塩漬けにした魚を干した発酵食品。“くさや”のような強い香りがあります。魚の種類は馬友(ツバメコノシロ)が有名ですが、ミナミコノシロ、ヒラコノシロなども原料に。 今日ご紹介した蒸し魚以外にも、そのまま焼いてご飯のおかずにしたり、刻んで炒飯や野菜炒めの風味付けにするなど、いつもの料理に少しプラスすれば、味のバリエーションが楽しめます。
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料理:小林武志( 御田町 桃の木
撮影:2016年6月22日の古樹軒の料理教室にて
中国語料理名:生死戀(saang1 sei2 lyun2 / サン セイ リュン)※広東語。鹹魚蒸活魚ともいいます。


text 近江文代
photo 西田伸夫