日本では、当たり前のように中国料理を「中華」と呼んでいるけれど、そもそも「中国料理」と「中華料理」の違いって…?

そんな素朴な疑問の解明に始まり、日式中華という“発明”や、中国料理のローカライズ&進化について、さまざまな視点から語った比較文化論『中国料理進化論』がイーストプレスより発売されました。

著者の徐航明さんは、日本在住20年超の中国人(陝西省西安出身)。外資系通信メーカーを経て、日系大手電機メーカーに勤務の傍ら、二束の草鞋で本書を書き上げた才人。現在は日本のメディアのみならず、中国のメディアにも食文化について寄稿されています。

そんな徐さんが食文化考察に目覚めたのは、1990年代に来日して間もなくのこと。

世話になった日本人に手作りの水餃子を振るまった折「皮がすごくおいしい」と言われ、「具にこだわったのに、なぜこの皮がおいしいと言われたのだろう?」と疑問に感じたことが、日中の料理の比較と変化に着目する原点となったそう。

餃子店がひしめく大連市の人気店「大清花餃子」の水餃子。中国では水餃子=餃子が基本だ。

本書では中国生まれの水餃子が、来日して焼き餃子として定着し、さらには世界の“GYOZA”として認知されるようになった過程や、中国の拉麺が日本でラーメンとして進化、そして即席めんの発明に至った背景を徐さんの視点で分析。

さらにエンジニア出身の知見を生かし、食文化とテクノロジー、食とビジネスの視点から日本の中華料理を分析した点にオリジナリティがあります。

内容はFood Watch Japanや、日経×TECH(日経クロステック)で連載した「技術者のカフェタイム 食文化とハイテク」などをベースに、大幅に加筆して書き上げたもの。

後半には徐さんが作る家常菜(家庭料理)のレシピも掲載。新書ながら盛りだくさんの内容となっています。身近な中華を入り口にした近年珍しいユニークなコラム、ぜひお手に取ってみては。


中華料理進化論(amazonにリンク)
出版社:イースト・プレス
定価:880円(税抜)
ISBN:978-4781680507
イーストQ新書/223ページ


text & photo 佐藤貴子(サトタカ)
書影提供 イーストプレス