今月から、横浜中華街の五目焼きそば全140皿を食べ尽くした男、五目ひでおさんの不定期エッセイが始まります。生まれも育ちも横浜の五目さんが、五目焼きそばに目覚めた理由とは?約1年半かけて食べ歩き、最も心に残った3店とは? |
最初に、私が好む五目焼きそばの特徴は以下の3点です。
- 麺そのものから味と香りを感じられる、褐色の深蒸し麺
- それぞれの具材の歯触りを楽しめるよう、丁寧に施された下ごしらえ
- 餡のとろみは程々で、味付けは濃過ぎない
もうひとつ、大切なことをお伝えしておきたいと思います。
私は五目焼きそばに、お酢をかけません。ですので、お酢を入れた際に引き起こされる化学反応については、未知の状態でのご紹介になることをご容赦ください。ついでに、からしもつけません。
そんな風に考えてみますと、五目焼きそばには食べ方の作法のみならず、調理方法や具材も含めて、思いのほかバリエーションがあるようです。
同じ具は二度とない!? 一期一会のエンターテインメント「龍鳳酒家」の五目焼きそば
麺そのものから風味と香りを感じられる、褐色の深蒸し麺。具材の歯触りを楽しめるほど行き届いた下ごしらえの丁寧さ。餡のとろみは程々に、味付けも濃過ぎないものがベスト。
前出の私的なポイントを完全に網羅しているのが「龍鳳酒家」の五目焼きそばです。
「渡り蟹の餡かけ炒飯」が有名で、休日はもちろん、時間帯によっては平日でも行列必至の人気店。横浜中央卸売市場で仕入れる海鮮を目当てに来るお客さんも多く、旬の海鮮と野菜がたっぷりいただける「海鮮三品炒め」も多くのテーブルで注文されています。
そんな「龍鳳酒家」の五目焼きそばは、しっかりと味のする深蒸し麺を使っています。自店で蒸しているという麺は嚙みごたえがあり、のど越しの良さも魅力。
さらに特筆すべきは一期一会な具材です。これはあれこれ語るより、写真を見ていただければ一目瞭然。その意味を分かっていただけるのではないでしょうか。
これらはすべて「五目焼きそばをひとつお願いします」とオーダーして出てきたもの。ある日はきのこたっぷりだったり、またある日は葉野菜が多めだったり。
特に肉類は毎回何が入っているか楽しみになるぐらいバリエーションが豊富です。ちなみに今回の執筆にあたり、直近でいただいた一皿は、鶏の胸肉、スモーキーな鴨肉、細切りの玉ねぎ入りという変わり種でした(玉ねぎの入った五目焼きそばは個人的に相当ポイントが高いです)。
「市場での仕入れで具材が変わってくるんでしょうか?」と伺ってみると、「今夜は宴会にお肉全部持っていかれちゃったから鴨肉なのー、ごめんなさーい」と、なんとも憎めないお答え。
「またあの具の組み合わせで食べたい」と思っても、次は出会えずがっかりするかもしれませんが、意外な具材のサプライズも含めて、「龍鳳酒家」の五目焼きそばの味わい深さ。このやりとりで、やはり横浜中華街における私の五目焼きそばNo.1はここだと再確認したのでした。
なんといっても、私はこちらのお店と出会ったことで、横浜中華街の五目焼きそばを食べ尽くすことになったのです。次のページでは、少しだけその辺のキッカケなどについてもお話させてください。