大塚は普段着の街だ。ターミナル駅の池袋から山手線でたった一駅、隣の街にいくだけで、ぐっとカジュアルでおいしいものが楽しめる。

居酒屋、焼き鳥、洋食、ラーメン、カレー、もちろん中華もいろいろある。特にこの街は、ふらりと入って、びっくりするような中国郷土料理があったりするから侮れない。

そんな店のひとつが「豫見ハーラー麺(ユージェンハーラーミェン|豫见饸饹面|豫見餄餎麺)」だ。

河南省の非物質文化遺産、ハーラー麺とは?

2024年2月15日からプレオープンしている。

ハーラー麺とは中国語で饸饹面(フールーミェン|hélemiàn)と呼ばれるもので、中国北方を中心に作られている麺料理のひとつ。端的にいうと、ところてんのように生地を押し出して作る、押し出し麺である。

食べ方は、羊や牛のスープ麺に仕立てるほか、焼きそばなどにすることも。特に河南省の羊肉スープで食べる羊肉餄餎麺は名高く、同省では非物質文化遺産に認定されている。

そしてここ、大塚の「豫見(ユージェン)ハーラー麺(豫见饸饹面)」では、河南省新郷出身で、饸饹麺の伝承人として30年以上のキャリアがある店主の青姨(青おばさん)が、現地同様の手順で仕込んだ「羊肉ハーラー麺」を食べさせてくれるのだ。

生パスタ系もっちり麺に、羊スープ×羊辣油×羊肉スライスの羊尽くし!

羊肉饸饹面(羊肉餄餎麺)

そんな羊肉ハーラー麺は、押し出し麺の独特の食感、老湯と呼ばれる羊のスープと、羊の脂を使った羊油香辣椒の3つが揃って、唯一無二の味わいを生み出している。

まず、中太の麺は生パスタのようなもっちりとした弾力。表面はかすかにざらっとしているため、味が乗りやすいのもメリットのひとつだ。生地には粘りの出やすい強力粉を使い、あまり長く寝かせずに押し出すため、讃岐うどんのようなコシはなく、それでいてむちっとしている。

生地づくりはこね機と手を併用。あらかじめこね機で生地をまとめ、仕上げは手で行う。

注文が入ったら、この生地を饸饹床子(フールーチュアンズ|hélechuángzǐ|餄餎床子)という、押し出し型の製麺機に投入。ところてんのようににゅる~っと麺を出しながら、ダイレクトにゆで湯の中に入れてゆで上げる。

製麺機には無数の小さな穴があいており、そこから麺を押し出す。ぐらぐらと沸く湯の中で、長い麺が踊るようにゆで上げる。

そして、麺をゆでる鍋のすぐ隣にはふつふつと沸く老湯(ラオタン)がスタンバイ。この老湯とは、羊の骨、羊の肉、羊の油というトリプル羊要素に、複数の香辛料用いて何時間も煮込んだもの。羊のスープとしてよく見る白湯(パイタン)とは異なり、茶色みを帯びている。

そこに香りを添えるのが羊油香辣椒。溶けるまで熱した羊の脂を唐辛子粉に加えたもので、一見辛そうに見えながら、口にすると辛くない。どちらかというと、コクと香りを加えるために使われるものだ。

左が羊油香辣椒。右は麺にのせる羊肉スライス。しっかり煮込まれている。

驚異の替え玉・追いスープ無料。こんなに食べていいかしら?

こうしてできあがった羊肉ハーラー麺は、羊の老湯と羊油香辣椒が一体となり、太くたくましい味わいを描き出す。

中国の汁麺料理というと、比較的薄いスープに調味料で味を付けたものも少なくないが、それとは真逆の味づくり。汁そのものに濃厚な素材のうまみが満ち、表面がややざらりとした中太の麺と絡み合う。

羊肉饸饹面(羊肉ハーラー麺)980円。現在、替え玉・追いスープは無料。なんという太っ腹サービス。

さらにこの自家製麺、「替え玉」もできるのだ。

聞けば、麺の重量は250~300g。一般的に日本の中華麺は1玉120~150gなので、そもそもが2倍の量である。であるにも関わらず「替え玉無料」。足りなければスープも足してくれるというから、なんと太っ腹なサービス!

羊肉饸饹面(羊肉ハーラー麺)

また、麺は焼きそばにもできる。こちらはコクのある醤油味で、つまみになるタイプの味付けだ。替え玉サービスはないが、ボリュームは十分。冷めても伸びにくいので、持ち帰りにも適している。

羊肉炒饸饹面(ラム肉焼きそば)1,080円
羊肉炒饸饹面(ラム肉焼きそば)。冷めてものびにくいので、持ち帰りにも向いている。

ハーラー麺を皮切りに、河南省の郷土料理を楽しもう

ハーラー麺以外の麺料理としては、これからの季節におすすめの凉拌饸饹面(冷やしラム肉混ぜそば)や、红烧牛肉饸饹面(牛肉の醤油煮ラーメン:紅焼牛肉饸饹麺)が気になるところ。

また、店主が「ディナーにイチ押し」という红焖羊肉锅(ホンメンヤンロウグゥオ:紅燜羊肉鍋)は、羊スープを醤油ベースで調味し、ラム肉を煮込んだ鍋料理。なんとラム肉2キロ!に、麺が1人前ついて6,000円なので、みんなでいけばお値打ちだ。

虎皮鹵蛋。ゆで卵を油で揚げてから煮込むため、表面に虎皮のような模様がつく。シンプルな鹵蛋より香ばしさが加わる。

また、店主手作りの卤味(煮込み置き料理:鹵味)も自慢の一品。こちらはセルフサービスで、おすすめは虎皮卤蛋(油で揚げてから香辛料入りの汁で煮込んだ卵:虎皮鹵蛋)※写真上。麺の具はシンプルなので、合わせて楽しむのもよし、お酒のアテにしてもよし。

軽く飲むなら、ちょっとした冷菜と煮込んだアヒルの砂肝などをつまみに、ハーラー麺で締めるのもいい。ともあれ、ここに来たら本場河南省スタイルのハーラー麺は必食。羊好き、麺好きはぜひ体験していただきたい。

鹵味はセルフサービス。卵のほか、鶏の足、アヒルの首、アヒルの砂肝などがある。
豫見ハーラー麺(豫见饸饹面:ユージェンハーラーミェン)

東京都豊島区南大塚3-50-3 TJ大塚ビル201(MAP
※JR大塚駅南口より徒歩2分。天祖神社の向かい
営業時間 11:00-22:00(21:30L.O)
TEL 03-6907-0344
オフィシャルサイト


TEXT&PHOTO サトタカ(佐藤貴子)