南方の香りに心が躍る―ジャスミンライスは常備食材。プラナカンの食文化にも惹かれます

いつもおいしそうな香港料理をご自宅で楽しんでいるイラストレーターの小野寺光子さん。愛用の調味料や、次の旅先についてうかがいました。▶最初のページから読む

香港料理というと、オイスターソースをイメージする方もいるかもしれませんが、実は香港の家庭料理では、案外多用しないものです。

茹でた青菜にオイスターソースをかけた一皿「油菜(ヤウチョイ)」は定番ですが、それ以外は「これぞ相性のいい食材!」という時でないとそれほど出番はありません。とはいえ、ないと困る。

サッと湯引きしたレタスにオイスターソースをかけた「油菜」も香港の定番。

そこで現在愛用しているのが、流浮山「汝記(イュゥゲイ)」の「極品蠔油 (金蓋)」。大体76HKDほど(日本円で約1,520円)

この商品は地元で養殖した牡蠣のエキスと水、塩しか使用しておらず、純粋・そして無添加。誰もがベタ褒めするオイスターソースで、確かに美味しい。

でも、本当に使いたいのは「Yuan’s(頤和園)」の「御前金牌蠔油(無味精)」250ML。この「御前金牌蠔油」は上品でくどくなく、もちろん甘ったるくもなく、舌の上に海が広がるような美味しさ。

しかし、元々高価+値上がり+円安で、今では315 HKD、今の日本円で約6,300円!これはちょっと手を出せない…というわけで、前出のオイスターソースに落ち着いています。(「汝記」の近所にある「裕興蠔油有限公司」の金蓋ラベル無しのオイスターソースも気になっています。)

左が「Yuan’s(頤和園)」の「金標老抽」。Illustration by Mitsuko Onodera

そしてもうひとつ、欠かせないのが老抽。Yuan’s(頤和園)」の「金標老抽」または「九龍醬園 (金牌抽油)」を愛用しています。(そのほか「八珍」「悦和」の老抽も使います。)

老抽(ロウチャウ)とは、熟成やカラメル色素の添加によって色と風味を調えたもの。香りと旨味は醤油(生抽)に劣りますが、料理を塩辛くせず、コクのある深い色艶を出すためにはなくてはならない「色付け醤油」。煮込み料理や焼きそば、煲仔飯のタレには欠かせません。もちろん、ジャスミンライスも切らさないようにしていますよ。

生抽(サァンチャウ)は日本の濃口醤油で代用してもなんとかなりますが、老抽は替えが利かないもの。いずれの醤油も香港で天然醸造を守っている醸造所のもので、品質の良さに加えて、応援したい気持ちもあり、常備しております!

なお、老抽は日本で「中国たまり醤油」と訳されることが多いのですが、香港の料理家や醸造所のオーナーからは「たまり醤油ではありません」と言われています。塩味控えめで軽い甘みを持ち、少しとろりとしているのが似ているからかもしれませんね。

料理をするときに気をつけているのは、くどい味にしないことと、油っぽい、味の濃い料理にしないこと。まだまだ入り口に立っているだけの(自習)勉強中の身の上なので、調味料や食材はできるだけ香港と同じか近いものを使っています。

代用品だらけだと、本来の味がわからなくなってしまうし、身についていないのでアレンジなんてまだまだ先。香港がどういう土地なのか、どういう思考回路の人たちなのかを感じたくて作っているので。

パスポートと胃袋だけ持って飛んでいくなら、プラナカン文化の息づくペナンがいい

もし、今行きたい場所にいけるなら、マレーシアのマラッカと、イポー、ペナンですね。特にペナン島にある菓子店「莫定標娘惹粿廠(Moh Teng Pheow Nyonya Koay & Canteen)」。本当に飛んで行きたい。

ここは、マレーシアやシンガポールに暮らすプラナカン(ニョニャ)の女性たちが代々伝えてきた伝統菓子「ニョニャクエ(Nyonya Kueh)」の専門店。見た目の色鮮やかさに反して、自然で大変優しい味わいです。米や米粉を蒸したものも多く、もちもちとした食感やパンダンリーフの甘く香ばしい香りの虜になってしまったのです。

「莫定標娘惹粿廠(Moh Teng Pheow Nyonya Koay & Canteen)」のニョニャクエ。

ペナン島のジョージタウンにあるブルーマンション(The Blue Mansion|チョンファッツィーマンション)に宿泊したとき、散歩から戻って、部屋に届けられていた蒸籠入りのニョニャクエもこの店のものだったようです。ウットリ…もう一度体験したい。

また、潮州の魅力は友人たちから聞いていて、かねてより「ぜひ行ってみたい」と思っている場所です。「今日は潮州料理を食べに行こう」という時の香港人の少し嬉しそうな顔や、SNSで流れてくる友人たちの旅行写真を見るたび、興味が募ります。

今はまだ、潮州系の人々が多く暮らす九龍城で話を聞きながら食材を買うにとどまっていますが、近いうちにぜひ現地を訪れたいです!


TEXT & ILLUSTRATION & PHOTO 小野寺光子

★次回「私の中華偏愛録」もお楽しみに!