[前編から読む]畑から始まるガチ四川。唐辛子の栽培・加工・使い方を狭山「蓮華」で学ぶ

泡辣椒(パオラージャオ)は4~7%前後の塩水に唐辛子を漬け、乳酸発酵させた漬物兼調味料だ。中華食材店で輸入ものを買うこともできるが、自家製の香り高さはいうまでもない。

作り手によって材料は多少異なるが、蓮見さんが漬け汁に使うのは、水、泡菜(パオツァイ)の漬け汁(ページの後半にて解説)、塩、砂糖、花椒、白酒 (中国の蒸留酒)。作り方は次の通りだ。

こちらが泡辣椒。ガラスの甕は、泡菜壇子(パオツァイタンズ)と呼ばれる塩水漬けのための専用壺だ。これがなくても瓶でできる
①塩水を作る

中国では一般的に湯冷ましを使うが、日本では水道水がそのまま飲めることから、蓮見さんは生水を使っている。塩は水に溶けやすいものをチョイス。

②塩水と泡菜の漬け汁を合わせる

ゼロからスタートする場合は塩水のみだが、店では泡菜の漬け汁(後半で解説)を加えて発酵のスターターとする。泡菜の漬け汁の分量は塩水の3分の1ほど。

③花椒、砂糖、白酒を加える

花椒は香り付け、砂糖は乳酸菌のエサ、白酒は消毒兼香りづけの目的で使う。白酒は北京の「二鍋頭」だ。

④唐辛子を漬ける

洗って清潔にした唐辛子(蓮見さんはへたをつけたまま漬けていた)を、調合した塩水に漬ける。これをガラス瓶などに入れて常温で保管し、乳酸発酵して漬け汁が乳白色となり、香りよく漬かったら泡辣椒のできあがり。

使うときは、包丁で刻んだりフードプロセッサーなどで挽いて細かくしてから、肉野菜炒めの調味や、魚にのせて蒸し調理すると、たちまち四川料理の香りが匂い立つ。

ここでは撮影のためにボウルで漬けているが、実際には瓶や甕に漬け込んでいる

それぞれの分量が気になるところだが、理論派ではなく感覚派だと自認する蓮見さんは、料理も発酵調味料も分量の書かれたレシピを一切残しておらず、すべてを舌と経験に頼るスタイルとのこと。

「どんな料理もそうですが、特に発酵調味料作りは、レシピ通りに作ればそれが同じ味になるというものではない。例えば夏と冬では気温が全然違いますよね。漬ける量でも変わってくるから、これはもう経験で判断するしかないんですよ。失敗したっていいじゃないですか。そこから学べばいいんだから。一回目から成功しようと思っちゃダメです!」

蓮見流の発酵調味料作りは、成功を前提とした料理教室というよりも、失敗さえも楽しむワークショップと捉えるべきかもしれない。

伝家の宝刀、泡菜(パオツァイ)の漬け汁とは

よって教えていただいた漬け汁の分量も不明だが、味見をさせてもらった感じでは、塩分濃度は一般より低めの海水程度だろうか(およそ3.5%)。

また、開業以来18年間育て続けた泡菜(パオツァイ)の存在は大きい。泡菜とは、泡辣椒と同様に野菜を塩水に漬けたもので、四川式ピクルスとも呼ばれる中国の伝統的な漬物だ。

様々な野菜のエキスが溶け込み、乳酸菌が程よく活性化している泡菜の汁は、日本でいえば秘伝の糠床。発酵のスターターとして泡辣椒の漬け汁に加えるからこそ、ただ辛いだけではないまろやかで奥深い旨味を含んだ泡辣椒へと成長するのである。

泡菜・泡辣椒の「泡」は、中国語の「浸泡(漬ける)」からのようだが、乳酸菌が元気な蓮見さんの漬け汁からは、文字通りに泡がシュワシュワと出ていて、フタを開けるとポンッとシャンパンを開栓したときのような音がした。

シュワシュワと泡が出ている。これまで何十人もの料理人が蓮見さんから泡菜の汁をもらっていったそうだ

「泡菜や泡辣椒は生物を飼うのと同じで、手間暇をかけてあげないと。夏場など発酵が進み過ぎていたら漬け汁を半分捨てて新しい塩水を補充したり、元気がなければ乳酸菌のエサとなる砂糖を与えてあげたり、様子を見ながら世話をしてあげてください」

この記事を読んで泡辣椒に挑戦してみたくなったという人も多いだろうが、残念ながら冬場は生唐辛子の入手が難しく、泡辣椒の仕込みができない。ならば塩水で野菜を漬けて泡菜を作るところからスタートして、大事に漬け汁を育てながら生唐辛子の時期を待ってみてはいかがだろうか。

もし畑があるのであれば、自分で唐辛子を育ててみるのも一興だろう。私はすでに蓮見さんからいただいた二荊条から種をとって育てるつもりになっている。

さて、これだけ魅力的な自家栽培の唐辛子、そして唐辛子の発酵調味料を見せていただき、食べられないのは酷すぎるということで、これらを使った料理を作っていただいた。さっきからお腹がグーグー鳴りっぱなしで恥ずかしい。

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