今、日本の中国料理業界は、40~50代の料理人を中心に、実力派の役者揃いだ。なかでも、首都圏中華料理人仲間きっての愛されキャラといえば“しばちゃん”である。朗らかで、仲間を率先して手伝い、破顔の笑顔を見たら、きっと誰もが好きになってしまうだろう。
そんな“しばちゃん”こと柴田順平さんがオーナーシェフを務める店「中国料理 香(しゃん:xiang)」が、横浜山手エリアにオープンした。

柴田さんは、薬膳中華「essence(エッセンス)」、三笠会館「揚州名菜 秦淮春」、経堂の四川料理店「蜀彩」等を経て、自身の店を開業。2023年12月までは本牧町に店を構えていたが、2026年3月5日、山元町に移転。随所に天然木と中華の意匠をさりげなく取り入れ、温かみのある、心安らぐ空間として生まれ変わった。


コースもアラカルトも充実。居心地がよいからまた来たくなる。
筆者が訪れたのは平日の昼だが、店内は常連さんで満席。聞けば「ありがたいことに、料理をおまかせでご予約いただくことが多いんです。駅から遠いですが、ほとんどのお客様はタクシーでお帰りになりますね」と柴田さん。
この日も「オープンを楽しみに待ってたわ!」という奥様方の声が聞こえ、前の店からいかに愛されてきたかが伝わってきた。

料理はコースはもちろん、アラカルトも豊富だ。もはや日本の新・定番中華といえる「よだれ鶏」は、四川料理のお手本のような仕上がり。もも肉、むね肉、もも・むね両方の合わせ盛りがあり、辣油は色よく、甘やかな焙煎香。辛さを抑えているので食べやすく、残ったたれまで持ち帰って食べ切りたくなる。

また、前菜に定番のくらげの冷菜は、コリッ、ブリンとした花くらげを使い、大ぶりカットで登場。シャキッとした生野菜と香味油で和えており、爽やかな甘酢仕立てが胃袋を開く。

店主のおすすめは「鴨の燻製香り揚げ」だ。中国料理名では樟茶鴨(ジャンチャーヤー)というこの料理は、塩、花椒、老酒、スパイスなどの液に漬け込んだあと、ふっくらと蒸し、しっかりと燻してから香ばしく揚げるという、中国料理の技を贅沢に重ねた名菜。皿が運ばれてくるやいなや薫香がただよい、食欲を高めるのはもちろん、しっかりと火を通した鴨の濃密なうまみが楽しめる。

また、中華鍋から立ち上る“鍋気”を味わうなら、炒めものもマストだ。例えば、十彩の鮮味を取り合わせた「海老と季節野菜の塩味炒め」は千紫万紅の一皿。調味は食材の風味を生かして最小限に留めているので、旬を味わうのにぴったりといえる。

コースは6,500円からで、昼は週替わりランチセット(1,800円)や麻婆豆腐セット(1,500円)も。いずれもごはんまたは週替わりのお粥、メイン、季節のスープ、自家製野菜ジュースのセットも用意されており、ひとときの口福を味わうのに十分な内容だ。

横浜の中華文化のこころを訪ねて、食後の山元町散策。
お世辞にも利便性がよい場所とはいえないが、実はそこも魅力のうち。店の前のゆるやかな坂を少し上ると、清朝末期にあたる1892年、横浜の華僑によって建立された「中華義荘」を見学することができる。

横浜の山手といえば、丘の上にある「横浜外国人墓地」が有名だが、「中華義荘」は華僑が故郷へ帰るまでの仮の安置所から、時代とともに永眠の地へと変化した歴史を刻んでいる。事実、老華僑の末裔のなかには、ここに祖先が眠っているという方も少なくない。
山手周辺は、中華街の賑やかさとは対照的に、静かで落ち着いた住宅地だが、横浜の歴史や奥行きが感じる無二の場所だ。しばちゃんの笑顔と、歴史の薫り。山元町という場所だからこそ完成する、横浜中華の味わいがここにある。
中国料理 香(しゃん:xiang)
住所:横浜市中区山元町3-156(山元小学校正門の前:MAP)
アクセス:山手駅から徒歩20分。横浜市営バス山元町2丁目から徒歩2分
TEL 045-211-4134
営業時間 11:30-14:00 17:00-21:30
※ランチの予約は11:30スタートのみOK。人数が揃ってからのご案内
※予約は電話のみ
月火定休 ※その他不定休あり
Instagram @honmoku.xiang
参考記事
移転前の「香」:三渓園やジャズ祭で有名な本牧の「香(シャン)」で中華の香りにとことん没頭!
公益財団法人中華義荘
有隣堂[座談会]横浜の外国人墓地 -山手・根岸・中華義荘・英連邦戦没者-
TEXT&PHOTO サトタカ(佐藤貴子)







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