東十条に用事ができ、「ひる中華」でもするかとGoogleマップを見てみると、実はめちゃめちゃ中華が多い。

実際に歩いてみると、戦後に根付いた町中華が多い印象だが、中国人が経営する店もある。
そのなかで、駅に近くてランチタイムが15時までということで、行ってみたのがこちらの店。

「土鍋・大餃子」。店名というより、商品が店名とでも言おうか。わかりやすい。
入って左の窓際席に座ると、正面には額縁入りのポスターがある。
むむ、目を凝らして見てみよう。
四川麻婆豆腐390円+税。そして左に目線をずらす。
黒胡麻担々麺380円+税。この値段、昭和か?
一番人気の「四川黒胡麻担担麺」と、店名にもなっている「大餃子」を頼んでみた。
店員さんに尋ねると、同店の一番人気は、ポスターにもある「四川黒胡麻担担麺」。
ランチだと、セット(ごはん、漬物、スープ付き)で480円(税抜)。店名にもなっている「大餃子」は6個560円で定食になるという。さて、どうするか。

ここは「土鍋・大餃子」という店だからして、「大餃子」は食べたい。
しかし「スゴクオオキイノデ、『やみつき餃子』(普通サイズらしい)ハドウデスカ?」と店員さん。
そこで「大餃子をハーフでお願いできませんか?」と頼んだところ、4個で交渉成立。こういうことを、その場で判断して売ってくれるのは中国店舗っぽい。
看板に偽りなし!土鍋と大餃子が登場
そして待つことしばし、ほのかに酸味のある香りとともに、卓上に現れたのが「四川黒胡麻担担麺」だ。

店名の通り、土鍋入り。中国の砂鍋というところがいい雰囲気だなぁ。
黒胡麻はペーストでなくトッピング(その方が嬉しい)。乾燥唐辛子を軽く煎ったものが2、3本入っており、花椒も軽やかに効いている。
麺は中太でもっちり。なかなか気持ちいい歯ごたえで、次へ次へと手繰り寄せたくなる食感にゆで上がっていた。
食べ過ぎさえ気にしなければ、麺のあと、残ったスープにごはんを投入したくなる味わいとはこのこと。見た目の通り、コクはしっかりしているが、絶妙な酸味で重たさを感じない。
そして、遅れてくること「大餃子」4個、どどん。
上野「昇龍」や「銀座天龍」を彷彿とさせるバナナ型だ。
個人的には“よく焼き”が好み。ランチも終わりに近い時間だったから、焼きはやや甘めなのはしょうがないか。餡は野菜が多めなので、味は付いているもののくどくない。
大餃子が大きすぎるからか、箸で運ぶ途中に土鍋の端にひっかけて、うっかり汁に沈没させてしまった。しかしこれはこれであり。コクのある担担麺のタレに辣油をたらし、交互に食べ進めるのもいい。
安旨店のオーダーで心がけていること
お会計は777円と縁起のいい数字(担々麺410円+大餃子4個367円 税込)。聞けば、店はこの地で9年。もうすぐ10年になるそうで、厨房は哈爾濱(ハルビン)出身の料理人さんが担っているという。
ちなみに、どんな店でも得意分野があるものだ。個人的に、比較的廉価な店でオーダーする際には、鶏肉の冷菜は頼まないことが多い。理由は、結果論ではあるが、においが気になることがあるからだ。
そして「調味はいけそうだ」と思った店であれば、ひき肉をサブ的に使った料理は比較的ハズレにくいと感じている。例えばこの店の売れ筋である、担々麺や麻婆豆腐。春雨の炒め煮などもそうだろう。
このような料理のひき肉は、コクを出したり、肉味噌のように調味料的にはたらく。そして、他の材料と一体となってひとつの味わいを形成するため、調味のうまい店は、肉のいいところを引き出せると思うからだ(あくまで個人の指標です)。
昭和な十条味わい散歩はいかが?

店の最寄り駅は東十条。黒砂糖と蜂蜜を使ったどら焼き「黒松」を買い求める客で行列のできる和菓子店「黒松本舗 草月」や、巣鴨「とげぬき地蔵」の分尊の隣に「地蔵湯」があるなど、この界隈は昭和の面影が残り、そういう味わいが好きな方なら散策も楽しい。

大衆演劇専門劇場「篠原演芸場」がある通称・篠原演芸場通り(十条中央商店街)を抜ければ十条駅もすぐ。東十条、中十条、上十条と、町中華と現地系中華をハシゴする、味わい散歩もオツですよ。
土鍋・大餃子 住所:東京都北区東十条3-1-7 1F アクセス:JR東十条駅から徒歩2分 電話:03-3919-3928 ※ランチは15時閉店 ※店内喫煙可能 |
TEXT & PHOTO サトタカ(佐藤貴子)