こちらは2020年12月1日で閉店となりました。シェフは現在、池袋の『蜀魚記』にいらっしゃいます。(2022年4月13日追記) |
池袋から東武東上線各駅停車にて3駅約5分、大山駅から伸びるアーケード街「ハッピーロード大山商店街」の通り沿いに、2019年9月2日、四川料理店がオープンしました。
商店街沿いからの視界には大きな看板がなく、店の入り口が細い通路を経て奥にあるため、つい見過ごしてしまうような場所。ですが、以前『西安刀削麺酒楼』があったところ、と聞いたらピンとくる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
店先の台に立てかけてあるシートには、ランチの定食メニューがずらりと並んでいます。ゆっくりと目で追っていくと、見聞きし慣れぬひとつの麺料理が。それは、麻哥麺(マーゴー麺)。
店名になっていることから、こちらのオリジナル創作麺かしら?とも思えますが、これが実は四川省の省都・成都から東へ約200km、広安市武勝県の名物麺なのです!
注文はタッチパネルで。辛さは三段階で選べて安心!
メニューや、背後の壁に掲げられた麻哥麺の解説などを食い入るように見続けていたら、サービスの方が声をかけてくださり、店内へ。
注文はタッチパネルで、辛さは微辣(小辛)・中辣(中辛)・极辣(大辛)の3段階から選べます。
ドリンクは、テーブルに冷茶が用意されるほか、ランチタイム限定でソフトドリンクのサービスがあります。それらをいただきながら、できあがりを楽しみに待ちましょう。
麻哥(マーゴー)麺、そのお味は?
待望の麻哥麺は、和え麺とスープ麺の中間くらいのサラリとした食感。芝麻醤(練りごま)が入っており、タレに深いコクを与えています。
また、粗挽き肉とレバーがたっぷりのっているのが麻哥麺の特徴のひとつ。発祥地の四川省広安市は「武勝豚」が銘柄豚として知名度が高いそうで、良質の豚肉をふんだんに使ったことも人気に拍車をかけたのでしょう。
ピーナッツのカリカリ、もやしや青菜のシャキシャキも加わり、豊かな食感が楽しい一杯。マイルドそうな見た目に反し、花椒の香りと痺れがしっかり効いています。全体をしっかり混ぜていただきましょう。
夫婦を結ぶ、麻哥麺誕生秘話
麻哥麺の誕生は40年ほど前。麻哥とは、この麺を創り出した人物「あばた(麻)の兄貴(哥)」を指します。そう、麻婆豆腐と一緒ですね。「麻哥」と呼ばれ、おおらかでユーモアに富んだ愛されキャラの料理人。
彼にまつわる伝説を辿ると、そこには麻哥麺誕生までの秘話がありました。
皆に愛される麻哥は真面目で優しい男。
結婚をしたのだが、妻は生まれつき体が弱く、病気がちで食欲もない。そこで麻哥は妻のために、食べやすく、元気が出る麺をと何度も試作を繰り返し、一杯の麺料理を完成させた。妻はそれを大変気に入ったという。 ところがある日、妻は川で洗濯中に誤って転落、そのまま流されてしまい行方不明に。麻哥は何年もの間、妻を探し続けたが見つからない。ついには疲れ果て、体力も失い、持ち金も底をつき、息絶えそうなところを、川下の町の料理店に救われ命拾いする。 そこで助けてくれたお礼にと、その店で腕をふるい、妻のために作っていたあの麺料理を披露。するとその店はたちまち大繁盛店に。 一方、麻哥が探し続けても見つけることができなかった妻。なんと!麻哥と同じ川下の町で救出されていた。 しかし、彼女は自身に夫がいたこと以外、記憶を失っている。力無く過ごしていたところ、彼女を救った人が「町に人気沸騰の店があるから」と元気付けに、麻哥が働く店に食べに連れていってくれた。 そして大人気と評判の麺を食べてみたら… 「この味、懐かしい味だ!」 まさか…と思いながら料理人の方へ目を遣ると、なんとそこには自分の夫、麻哥の姿が!妻を想い、愛情を込めて創られた一杯の麺がふたりを繋ぎ、ようやく再会を果たしたのだった。 この麺は「麻哥麺」と呼ばれ、麻哥の人柄同様、多くの人々に愛される名物に。この伝説をもとに、強固な愛を叶える「鴛鴦麺」との呼び名も。 |
この伝説をはじめ、麻哥麺について記したパネルが、店の入り口への通路にあります。そちらもぜひご覧ください。
広安市武勝県の名物を日本へ!
この麻哥麺を看板料理、そして店名に掲げたのは、社長が広安市武勝県の出身で、故郷の名物を広めたいという想いからなのだそう。
武勝では、大通りにも小道にもあちこちに麻哥麺の店が。「武勝の朝はこの一杯で始まる」と朝食の習慣にしている人も少なくないとか。
また、現地の店では、麻哥麺とともに、猪肝面(ヂュガンミィェン)も定番。猪肝面は武勝県の飛龍鎮発祥で、豚の名産地である武勝ならでは。新鮮なレバーも手に入るということで、店の二大柱として麻哥麺と同等の人気を誇るのだそうです。
こちらの店の麻哥麺は、そのふたつの麺をひとつにまとめ上げた、ハイブリッドな一杯にアレンジされています。
来日11年、都内の四川料理店で研鑽を積んできた料理長の馬さんが、麻哥麺への想いを熱く語ってくださいました。
四川省広安市といえば、鄧小平の生まれ故郷として知られていますが、麻哥麺は新たな広安の顔として認められ、2009年に「広安市無形文化遺産リスト(市级非物质文化遗产名录)」に登録されました。
麻哥麺の人気は、武勝県や広安市街、その周辺地域のみならず、成都や重慶をはじめ他の都市にも広がりを見せています。
「マーボー麺」ならぬ「マーゴー麺」、ぜひお試しを!
麻哥(マーゴー)麺以外のランチも充実!
ちなみに、こちらのランチ定食メニューにはマーボー麺(麻婆麺)もあります(笑)。ランチメニューはおよそ20品。
例えば、酸菜魚。料理は固形燃料で温められ、グツグツアツアツの状態で提供される嬉しい計らい。白身魚はふわふわ、酸菜と春雨のスープはそのままでも勿論、ごはんにかけてもまた良し。
充実のラインナップなので、ランチタイムに頻繁に足を運び続けても、しばらく飽きることなく楽しめそうです。
本格四川料理 麻哥 住所:東京都板橋区大山町40-4 泉ビル1F(MAP) アクセス:東武東上線大山駅から徒歩4分(ハッピーロード大山経由) TEL:03-5926-6608 営業時間:平日 11:00~15:00/17:00~22:30(L.O.22:00)休日 11:00~22:30(通し営業) 定休日:未定 ※営業時間と定休日は今後変更の可能性があります。 |
text & photo :アイチー(愛吃)
『中華地方菜研究会〜旅するように中華を食べ歩こう』主宰。日本の中華のなかでも、中国人シェフが腕を振るい、郷土の味が味わえる“現地系”に精通。『ハーバー・ビジネス・オンライン』等でも執筆中。
★アイチーさんの記事は、毎月10日前後に公開となります。お楽しみに!(次回11月12日公開予定)
参考資料(麻哥麺の由来):http://dy.163.com/v2/article/detail/D93P7JLV0522PVVL.html