上野の「幾道菜」で必ず注文したい客家料理3選
皮付き豚バラ肉と漬物でつくる肉ドーム「梅菜扣肉(メイツァイコウロウ)」
梅菜扣肉(メイツァイコウロウ|méicàikòuròu)は、客家料理の中でも最も有名かつ覚えておきたい料理である。
調理法は、皮付き豚バラ肉の中に、カラシナ系の青菜を塩漬けにして干した梅菜(メイツァイ:梅干菜(メイガンツァイ)、霉干菜(読みは左に同じ)とも)をたっぷりと詰め、ドーム型に調えて蒸すというもの。
じっくり蒸して豚肉のうまみを吸った梅菜には、独特のひなびた味わいがあり、しっとりとしてふわ、ほろ、と崩れる豚肉の食感が頬を緩ませる。
梅菜扣肉は中国南方のさまざまな地域で見られる料理だが、濃い味付けのものもの少なくない。こちらは劉さんのいうとおり、味わいがやわらかく、米を呼ぶ料理かと思いきや、そこまでしょっぱくはない仕上がりだった。
淡泊な豆腐に、動物性タンパク質のうまみを詰めた「客家醸豆腐(クージャーニャンドウフ)」
梅菜扣肉同じく、マストオーダーな客家料理といえば醸豆腐(ニァンドウフ|niàngdòufǔ|酿豆腐)である。
醸(ニァン)とは、中国料理用語で「中をくり抜いて詰めものをする」という意味。淡泊な味わいの豆腐に、味のしっかりとした餡を詰めて煮る料理に使われる言葉だ。
ここでは豆腐に豚ひき肉の餡を詰め、表面を煎り焼いたあとに煮込んでおり、油の香ばしさもうまみの一部。煮汁にはゆで大豆が潜ませてあり、元は同じ素材の豆腐と大豆を一緒に煮るという趣向がおもしろい。地域によっては魚の餡を詰めることもあり、原価はかからなくてもひと手間かかった料理といえる。
塩味はおだやかで、ごはんを欲するというより、お茶や黄酒と楽しむのにいい塩梅。ぐつぐつと煮え立つ土鍋仕立てで、登場するなり箸を伸ばしたくなる一品だった。
大根が清々しい!客家スタイルの牛バラ肉と大根の煮込み「蘿蔔燉牛肉腩(ルゥボォドゥン ニウロウナン)」
前出の2つの料理ほどではないものの、劉さんが「大根、大根!」と駆け込むように注文したのが、牛バラ肉と乱切りの大根を煮込んだ蘿蔔燉牛肉腩(ルゥボォドゥン ニウロウナン|luóbodùn niúròunǎn|萝卜炖牛肉腩)だ。
中医学的観点では、大根は喉と肺を潤し、皮膚を整えてくれる存在。いくぶんか寒さが残り、乾燥が気になるこの季節、大根と牛肉は間違いのない組み合わせで、今の時期にはぴったりの料理といえる。
こちらは塩味でスッキリとした味わいが身上。大根はやわらかく煮込まれているものの、本来の持ち味である清々しさを残しており、するりと胃袋に収まる軽やかさがあった。
ここまでご紹介した客家料理3品は、いずれもおだやかな塩味で食べやすい料理ばかり。一方、江西料理は味のしっかりしたものが中心で、どれも酒や白米を呼ぶ。さっそく次のページでご紹介しよう。