食事の席に着いて、「とりあえず」と来たら乾杯はビールと相場は決まっている。国産大手メーカーに、海外産。最近ではクラフトビールの勢いもとどまることを知らず、ビールの選択肢は百花繚乱。

でもここが、中国料理店の円卓だとしたら? 反射的に「青島ビール!」をオーダーする人が多発するだろう。この圧倒的な地位を確立した中国産ビールといえば、青島ビールの右に出る銘柄はない。

さて、その青島ビール。軽くてすっきりとした飲み心地、スムースなのど越しは思い浮かぶものの、素性を知る人は少ないのでは? そもそもどんなビールなのか。

青島ビールが誕生したのは1903年のこと。香港に拠点を構えるイギリスおよびドイツの商人によって山東省青島市に設立され、創業当時はドイツの原料と生産設備でビールを醸造していた歴史がある。

2003年に創業100年を迎えた青島ビール。創業時、ドイツの資本と醸造技術を用いた背景には、青島が1898年よりドイツ租借地であった影響がある。

現在は中国各地に約60か所の工場を構え、中国産ビールにおける輸出量は第1位。世界100ヵ国以上で愛飲されており、中国国内のブランド力を評価する機関世界品牌实验室(World Brand Lab)」の評価では、ビール部門にて15年連続ブランド価値No.1に輝くトップランナーだ。

日本においては、中国からの輸入ビールとして唯一の銘柄であり(プライベートブランドを除く)、2018年度の輸入ケース数は約10万ケース(24本入)。加えていうならば、日本向けに出荷されている青島ビールは、世界的な名水のひとつとして知られる嶗山(ろうざん:中国語でラオシァン)の水系を使用しており、マイルドな口当たり、クセのないすっきりとした味わいが特徴である。

青島ビールの第一工場には、青島ビール博物館が併設されている。

世界100ヵ国以上で愛される、青島ビールの知られざる素性とは?

青島ビールの圧倒的な存在感を知ることができるのは、数字からだけではない。現地には博物館があり、毎年盛大なフェスティバルも開催されているのだ。

青島啤酒博物館は、青島に行ったら必ず寄るべきスポットに挙げられる青島の一大名所。中国国内の子供たちが修学旅行や社会科見学に訪れる施設でもある。歴史や製造の流れ、過去のノベルティグッズなどの展示がされ、工場の実際の生産ラインを見ることができる。

青島市の観光スポットともなっている青島ビール博物館。地元の子供の社会科見学にも利用されている。
青島ビール博物館では、歴史や製造方法がわかり、試飲やショッピングもできる一大ビールテーマパークだ。

博物館ではオリジナルグッズの展開も多彩で、つい手に取りたくなる逸品も

栓抜き(右)はお土産の定番。飲みたい気分を盛り上げるオリジナルジョッキや、ホップソープなども人気だ。

毎年8月第2週には、青島市政府を挙げて青島国際ビール祭を開催。ドイツ・ミュンヘンのオクトーバーフェストに次ぐ規模のビール祭とされ、1991年から催されている。

開催期間はなんと15日間に及ぶ。中国全土、海外からも人が押し寄せ、400万人以上もが訪れるという。その規模の大きさがおわかりになるだろうか。

青島国際ビール祭。15日間におよぶ夏のビールフェスだ。
青島国際ビール祭。ネオンが中国的だ。

青島ビールは1種類じゃない!それぞれの風味と、中国料理との相性を探る。

これだけのブランド力を誇る青島ビール。メーカーの製造の体力は、当然ながら1種類のビールを造るにとどまらない。緑の小瓶に赤と緑のラベル。白抜きの「TSINGTAO」のロゴ。クラシックラガーは、もっとも私たちが見慣れている青島ビールだろう。

しかし驚くなかれ。実は、本国では多彩なシリーズ展開がなされている。

中国における青島ビールの主要ラインナップ。センターがクラシックラガー。

主要な種類を選んだだけでも上記の写真のとおり。左からピルスナー、苦味の効いたIPA、いわゆる黒ビールのスタウト、小麦入りのウィート、もっとも定番のクラシックラガー、軽やかで度数が低く、比較的低価格帯の純生ピュアドラフト、高級路線の1903、さらに青島ライトストロングラガーといった種類がある。しかもこれはほんの一部。限定流通のものも含めば、さらに種類は多い。

春節(中国の旧正月)限定のボトルもある。

現在、日本で飲めるのは、クラシックラガー以外にプレミアムスタウト がある。そこで、輸入元である「池光エンタープライズ」の営業部・福島悟さんと、広報担当の山川ともみさんとともに、さらに青島ビールを深く楽しむために、それぞれの特徴と、合わせたい料理を聞いてみた。

青島ビールの輸入元・池光エンタープライズの福島さん(左)と山川さん(右)。

中華料理に添い遂げる、永遠の定番「青島クラシックラガー」

定番の青島クラシックラガー。

おなじみ、超定番の青島ビール。淡い黄金色で味わいは軽く、ほのかな苦味と酸味をもつ。炭酸も軽やか。

「本国では常温でも愉しまれていますが、私はキンキンに冷やして飲むのがお薦めです。ただ、本国では乾杯をして飲み干す慣習があるので、その時は常温の方が量が飲めますね(笑)。主張が強くない分、料理のいいところを引き出しますので、肉料理、炒め物、麻辣など幅広く料理と合わせられます」(山川さん)。

合わせたい料理:食事を邪魔しない食中ビールなので、比較的万能。

発酵時間が長く、ピュアで雑味が少ない「青島プレミアム」

青島プレミアム。クラシックラガーとあわせて揃えている店も少なくない。

通常より発酵に時間をかけて醸造した中国初のプレミアムビール。クラシックラガーとは使用する麦芽を変えて低温熟成しており、麦芽の味わいや旨味、甘味が愉しめる。ホップによる軽い苦味があり、洗練された味わいで後味が締まる印象。

「レギュラーのクラシックラガーに比べ、味わいがピュアで雑味が少ないのが特徴です。繊細な飲み心地なので、料理の味付けもそう強くないものが合うと思います」(山川さん)。

合わせたい料理:海鮮料理、塩味で仕上げた炒め物など軽やかな味わいの料理と。

若筍と青菜の炒め。

ロースト麦芽の厚みある‟重低音”を味わう「青島スタウト」

青島スタウト。既に日本に導入されているものの、まだレアキャラだ。

上面発酵の黒ビール。アメリカで開催された世界的なビールのコンペティション「World Beer Championships 2018」で 金賞を獲得した。ロースト麦芽の“重低音”な濃く深い旨味、心地よい苦味、ふくよかでリッチな厚みのあるフルボディ感が愉しめる味わい。

「黒ビールの中でも軽やかな味わいのタイプもありますが、こちらは黒ビールらしい深いコク、重み、苦味を貫いています。個人的には、青島ビールの中で一番好きな1本です」(福島さん)。

合わせたい料理:花椒と唐辛子を効かせた麻辣味の料理と。

花椒が効いた麻婆豆腐。黒ビールには麻の痺れを一旦切ってリセットする効果も。

そしてこの夏、新たにIPA&ウィートが日本にやって来る!

しかし、この夏はそれだけでは終わらない。2019年7月1日より、青島ビールに新たな種類が日本上陸を果たすという。

ホップを豊富に使って苦味を引き出すIPAと、小麦を使ったウィートの2種類である。中国現地では、それぞれ2018年1月、2015年8月に発売をしているが、日本での発売に至った理由を福島さんはこう語る。

「青島ブランドの認知力向上と、新商品のテストマーケティングの為に日本発売に踏み切りました。数ある青島ブランドアイテムの中で、この2種類がひと際おいしいと思ったことも大きな要因です」

この2種も、福島さんと山川さんとともに試飲しながら、その特徴や合わせたい料理を探ってみた。

ホップの香りと味わいににんまり。クラフト感のある「青島IPA」

2019年7月、日本初上陸。注目の青島IPA。

ホップの投入量を多くし、ホップ特有の華やかな香りと苦味が広がるクラフト感を前面に押し出した造り。IPA好きなら思わずにんまりしてしまいそうな味わいである。

ビールの苦味を表すIBUは45。苦味を売りにするものの中には、100を超えるものもあるので、ほどよい苦味レベルといえる。温度は冷やしすぎず9~11度ほどが適温。

合わせたい料理:豚の角煮、酢豚など、ビールの味に負けない料理と。

こってりと甘辛に煮込まれた紅焼肉(ホンシャオロウ)。

バナナ香のふくよかな飲み心地「青島ウィート」

2019年7月、IPAとともに日本初上陸の青島ウィート。

小麦を加えた造りのビールで、バナナのようなフルーティな香り、華やかなフローラルな香りが愉しめる。ジャーマンスタイルに則り、柑橘のピールやスパイスは入れずに、麦芽、ホップ、小麦のみで醸造。ふくよかで柔らかい飲み心地でほっと落ち着ける。温度は、4~7度ほどを目安に。

合わせたい料理:魚介類。白身魚のあんかけ風、イカの塩炒めなど。

海鮮塩餡かけ焼きそば。

この夏は青島ビール飲み比べ!

飲み比べてみると、「軽くてすっきり!」な青島ビールの印象はがらりと変わる。

これだけキャラクターの異なるラインナップが揃えば、選択肢も広がるというもの。前菜はクラシックラガーで始めて、点心にはウィートを、濃い味の炒め物にはIPAを。続いて〆にはスタウトを。なんて飲みわけができるのも愉しみなところ。

円卓でなくとも、ビアバーのようなカウンターで、あるいはオープンテラスのテーブル席で、と飲みたいシチュエーションも広がってくる。これから会える青島ビールに、括目すべし!

青島IPAと青島ウィートが飲める店は、適宜80Cのtwitterでご紹介していく予定です。ぜひフォローをお願いします!

TEXT:沼 由美子
PHOTO:池光エンタープライズ株式会社(現地画像)、佐藤 貴子(日本発売青島ビール各種、料理、人物)


当記事は青島ビール輸入元・池光エンタープライズ株式会社とのタイアップです。