かつて横浜中華街に住んでいた華僑の中には、観光地化した山下町を離れ、本牧・山手・弘明寺・井土ヶ谷・蒔田などに暮らしている方も少なくありません。

これら山下町の西南に広がるエリアは、今では中華街では少なくなりつつある、オーナーシェフの店が残っており、新規開店もしています。

特に弘明寺・井土ヶ谷・蒔田は、古くから中華街を知る人には懐かしい「永楽製麺所」の流れ汲む永福や、「四五六菜館」のオーナーが鍋を振るう孫特家など、横浜中華街にルーツを持つ店も多々。筆者はこのエリアを“裏中華街”と名付け、好んで散策しています。

横浜中華街の名店で修行した点心師の店「公珠」

今回ご紹介するのは、そんな裏中華街の一角にある「公珠(こうじゅ)」。場所は井土ヶ谷駅からゆっくり歩いて10分ほど、住宅街の中にあります。

こちらのオーナーシェフ夫妻は、長年にわたり横浜中華街の名店の点心部門を支えてこられたキャリアの持ち主。食にうるさい華僑に聞いても「あそこはメニューと調理技術をすごく研究しているよ」と太鼓判を押すほど。そんな名店のおすすめは? さっそくご紹介していきましょう。

飛び出す肉汁!小籠包のようなスープとカリカリの羽根が一緒に味わえる「銀餃子」

「公珠」の「銀餃子」とビール。

「公珠」では、店の看板に「餃子・ワンタン」を掲げている通り、一番のおすすめは点心です。そこでまず、夏にぜひおすすめしたいのが焼き餃子。

メニューを見ると、にんにく入りの「金餃子」とにんにくなしの「銀餃子」が目に留まりますが、「金餃子」はにんにく好きの日本人向けに用意しているそうで、素材の味を存分に楽しむのであれば「銀餃子」がおすすめ。筆者もオーダーのときに少し迷ってニンニクなしの「銀餃子」を選んだら、奥さんに笑顔をいただきました。

スープが服に飛ばないよう、注意しながら召し上がれ。

餃子は口に入れると、スープがドバッと口の中に飛びだし、次に野菜の甘みが広がり、噛めばパリパリの羽根の食感が到来。一口ごとに違いが感じられます。そして何より素晴らしいのは、小籠包のようにスープがたっぷり含まれた餡。味付けはされているので、なにもつけずに、そのままガブリといってください。

さらにここでビールをガーーッといってしまいたいところなのですが、まずはその余韻を楽しんで。なぜならこちらは、お子さんたちに野菜を食べてほしいという気持ちからスタートした店。この餃子も野菜の旨味が存分に引き出されているからです。余韻を味わったら、心置きなくグビリとどうぞ。

スープも絶品!ワンタン麺の実力に悶絶

そしてもう一つの看板メニューはワンタンです。実は初めてこの店を訪れたときにワンタン麺をいただいたのですが、その実力は都内有名ラーメン店を凌ぐレベル。そこで完全にノックアウトされてしまいました。

「公珠」の「ワンタン麺」。

主役はワンタンですが、特に丸鶏でとったスープの香りが素晴らしく、合わせた醤油との調和も抜群。叉焼は汁麺に合う軟らかめのもので、麺は小麦の香りがする上等なものです。

「公珠」の「ワンタン麺」。

そして、ビールに合わせるなら「揚げワンタン」もいっておきたいところ。ここでは客席と厨房が近いので、熱々でカラリと揚がったワンタンが登場。ビールのみならず、キリリと冷やした白ワインにも抜群に合いそうですね。

「公珠」の「揚げワンタン」。横浜中華街の古いお店のメニューには、揚げワンタンがよく多く見られます。

〆は蓮の葉ちまきと牛バラあんかけごはん

そしてもうひとつ、飲茶が好きな方なら必ず頼みたくなるであろう「ハスの葉ちまき」もおすすめです。蓮の葉を開くと独特の芳香が立ち上り、中のおこわは旨味たっぷりながらしつこくない仕上がり。高級店の味わいですね。

「公珠」の「ハスの葉ちまき」。

さらにお腹に余裕があったら「牛バラあんかけごはん」もいっちゃいましょう。こちらはカウンターに貼ってある「食べるべき一品」。横浜中華街の古い店では、ガツンとボリューミーなごはんものの定番ですが、ここで牛バラ餡かけごはんのイメージが変わりました。

「公珠」で食べるべき一品に掲げられていた『牛バラあんかけごはん」。

聞けば、オーナーシェフが横浜中華街時代に総料理長から伝授されたというレシピを受け継いでいるとか。牛バラの煮込みにありがちな獣臭を全く感じさせない軽やかな仕上がりで、なおかつ食べごたえのある、満ち足りる味わいでした。

保冷バッグ持参で井土ヶ谷へGO!

こちらのお店はメディアには登場していないものの、味にうるさい地元のハマっ子たちたちの通う人気店になっています。そのため、訪れる際は必ず席の予約を。 週末のランチであっても予約したほうが無難です。

また、見逃せないのがお持ち帰り用の販売コーナー。こちらは食品製造業の免許を取得しており、入口の冷凍庫にはお持ち帰り用の点心類が並びます。

ちなみに筆者のおすすめは、保冷バッグ持参で来ること。保冷バッグにコンビニで買ったロックアイスを詰めて餃子や肉まんを持ち帰るのです。せっかくここまで来たのですから、お土産もお忘れなく。一回の訪問で二度三度と楽しめること請け合いです。

「公珠」外観。ワンタンと餃子が看板に。
今回ご紹介したお店

公珠(こうじゅ)
住所:神奈川県横浜市南区井土ケ谷下町37-6 沼上マンション1F(MAP
TEL:045-298-9091
営業時間:11:30~22:00(L.O. 21:30)
定休日:適宜更新されるお店のホームページで確認してください。


text & photo:ぴーたん
ライフワークのアジア樹林文化の研究の一環として、台湾・中国・ベトナム・マレーシアを回って飲食文化も研究。10数年前の勤務先で、江西省井岡山に片道切符で送り込まれたことを機に、中国料理の魅力に目覚め、会社を辞めて北京に自費留学。帰国後もオーセンティックな中国料理を求めて、横浜をはじめ、アジア各国の華僑と美味しいものについて情報交換をしている。

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