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中華好き人口を 増やす会 第2回: 君たちエビチリ、酢豚、麻婆豆腐だね

当コーナーは「中華好きを増やす」というミッションのもとに集まった、同士たちのトークセッション。中華を愛し、中華に一家言あるメンバーが、円卓と料理を囲んで、熱く語り尽くします。

 ※このシリーズは、3月8日に新橋亭新館にて行われた座談会「第1回 中華好き人口を増やす会」の模様をお届けします。


2012/5/11up

2:君たちエビチリ、酢豚、麻婆豆腐だね

昭和な出だしですみません。さてこの「エビチリ、酢豚、麻婆豆腐」とは、誰もが認める中華御三家料理。中華と聞いてイメージする料理として、少なくとも半世紀くらいはこのトップ3が覆ったことはないのではないでしょうか。(ここでは敢えてラーメン・餃子は日本に帰化した中華料理と捉え、グランドメニューからは外します)。そして私たち「中華好き人口を増やす会」が目指すのは、新・御三家もとい、新たな中華の定番料理をつくること。識者が、この難題に挑みます。


――さて、本日は皆で「新・定番中華」を提案しようというゴールイメージを描いているのですが、そこで解決すべき問題というか、議論すべきことが2つあるかと思うんです。

まずひとつは、中華の定番が、どうしてエビチリ、酢豚、麻婆豆腐になったのか?ということ。実はこの座談会を主催している中華・高橋では、小売店舗として古樹軒(こじゅけん)という中華食材専門店を持っているんですが、以前こちらのECサイトのお客様に「みんなの好きな中華料理は何ですか?」とアンケートをとらせていただきましたところ、幸か不幸か、やっぱりこの御三家に落ち着いてしまったんですね。鶏肉とカシューナッツの炒めものとか、中国料理店では極めてメジャーな料理でさえ、グッとランキングが下がり、御三家の前ではすっかりかすんでしまうんです。

それからもうひとつ、過去に消えていった名菜がなぜ消えたのか?ということも、定番になる、ならないに深く関わっているかと思います。一時はコースメニューに必ず入っていたけれど、今は全くでてこない料理ってありますよね…、例えばクリーム煮とか、鯉の甘酢餡かけとか。このように、いつしか消えていった名菜を振り返り、反省もしつつ、今後日本に定着させたい中国料理について語れればいいなと。そして、ひとつの定番として愛されていく料理を、ぜひここから発信して、育てていけたらと思っております。

そこで早速ですが、なぜ今の定番料理ができたのか?ということで、我々の方で簡単な日本中国料理年表を作成してみました。



南條 これはいいですな。

――ほんと、ごくごく簡単な年表なんですけど。で、思ったのは、麻婆豆腐や回鍋肉、青椒肉絲など、今メジャーになっている料理はみんな、テレビ『きょうの料理』で陳建民さんが出て紹介した料理ではないか?ってことなんです。
1967年、麻婆豆腐が『きょうの料理』で紹介され、それを受けてか受けてないかわかりませんが、丸美屋で「麻婆豆腐の素」が発売されます。その翌年には理研の「マボちゃん」が発売し、その後満を持して1978年にCook Doが誕生した際、「麻婆豆腐」がシリーズ6メニューのうちのひとつに。こうして、中華合わせ調味料が、『きょうの料理』の陳さん効果で広まって、それが根付いちゃったという説がひとつあるかと思うんです。実は陳さんが四川人じゃなくて広東人だったり上海人だったら、もしかして違う流れになってたかもしれませんし。

南條 今思ったんですが、給食の献立に取り入れられているかどうかってお調べになりましたか?給食に。

――それは考えたことがなかったですね。

南條 私の子どもの頃は、出た記憶はないんですけど。

田中 今は出ますね、給食に。しかし麻婆豆腐というのは、スパイスの効き具合で子どもにウケるのと、ウケないのとありますよね。あと、だいたい中国料理って「駅前飯店」っていうように、駅の前には必ずある。駅を降りたらスッと入れて、頼みゃすぐ出てくる。で、時間も制約されないし、他人を気にせず食べられて、いろんな人が集まっても食べられる。そこで出てくるメニューがそれだったんじゃないかな。
しかし悔しいのは、中華ってイメージとして繊細さがないっていうか、華がないっていうか…中華に詳しくない人から見ると、そうなんですよね。

南條 知っていれば全然違いますのに。

田中 フレンチやパティシエって、華がありそうじゃないですか。

南條 なぜ点心師がもっと支持されないのか。芸術的なのに。

田中 それに、料理専門学校に行くと中華の生徒ってものすごく少ないの。

―― 確かに料理学校の学園祭に行きますと、中華クラスの人数が一番少ないと感じますね。代々木の学校では、和食、洋食、中華の順だっていう話ですが。

田中 今、料理学校で一番規模が大きいのは後藤学園ですよね。学校名は武蔵野調理師専門学校。そこでは生徒が700人くらいいるんですけど、中華は70人しかいないの。10分の1です。

―― 何がそんなに中華人気を阻んでいるんでしょうか。

田中 やっぱりね、野暮ったさなんですよね。センスのなさというか。要するに、料理を出したときにお客さんがハッとするようなものが…。

―― プレゼンテーションがいまひとつっていうことですか。



田中 それに加えて、昔から中華料理の厨房って汚いというイメージが一般常識化されてるんじゃないでしょうか。万人においしいって言われるのは中華なのに。生徒からするとあまりカッコよくないんでしょうね。実際にはいろんな調理工程があるし、非常に繊細な料理もあって、中国語の料理名もいろいろあって奥が深いのに。中華って、100円の料理も作れれば、100万円の料理も作れる。でも高級感がイメージされづらい。我々が所属している日中協(日本中国料理協会)でも、一般の人に中国料理をもっと楽しんでもらおうということで、検定というような形で行ってはいるんですけどね。やっぱり一般の人にエビチリ、酢豚、麻婆豆腐以外にも、本当の中華を知っていただかないと。





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Text 佐藤貴子(ことばデザイン)
人物撮影 林正


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記事公開日: 2012/5/11

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