認知度上昇!そして定着へ…!やみつきになる麻辣味
麻辣:[読み]マーラー[ピンイン]málà
ひと昔前、日本で麻辣(マーラー)が食べられる場所といえば、中華料理好きが通うような、一部の四川料理店だけ。しかし昨今は、コンビニのお弁当やスーパーのお惣菜、レトルト食品やスナック菓子でも麻辣(マーラー)の文字を目にする機会が増え、ファミリーレストランや定食屋でも麻辣の文字がメニューに登場しています。
花椒と唐辛子が織り成す、痺れと辛さの世界
この麻辣という単語ですが、中国語では麻(マー)と辣(ラー)の組み合わせから成る、形容詞または動詞となります。
麻も辣も辛さを表しますが、麻は「舌がしびれる(しびれさせる)」、辣は「舌がヒリヒリする(ヒリヒリさせる)」という意味。これを料理用語として使う場合、麻=花椒(ホワジャオ:中国の山椒=華北山椒)、辣=唐辛子となり、麻辣はこの2つが融合した調味となります。
麻辣味の料理にはどんなものがある?
料理名に使う場合は、麻辣豆腐のように麻辣+食材、または麻辣拌時菜(麻辣風味で和えた旬の野菜)のように、麻辣+調理法+食材のパターンが王道です。
また、四川料理の麻婆豆腐、水煮牛肉、口水鶏(よだれ鶏)、沸騰魚ように、料理名に麻辣を冠してはいないものの、麻辣味が仕込まれているものも少なくありません。
品種や産地の組み合わせで、麻辣の描き方は無限大!
最近では、食材の仕入れルートの拡大によって、花椒も唐辛子も、それぞれに品種が選べるようになってきて、お店によって麻辣の個性が表現できるようになってきています。
赤茶色をした花椒であれば、四川省の漢源県産が有名ブランド。一方、柑橘系の爽やかな風味で魚介類や鶏肉によく合う、緑色の青山椒(藤椒:タンジャオとも)は仁寿県産が有名。油にも加工され、前菜等に活躍します。
また唐辛子であれば、丸っこい形で、ほのかに甘味も感じる朝天辣椒(チャオティェンラージャオ)も中華料理店でよく使われる品種。選び方や配合によって、料理の印象を大きく変えることができるのも麻辣の魅力といえます。
四川料理店を食べ歩き、好みの麻辣味を探ったり、花椒と唐辛子を使って、自分で理想の麻辣味作ってみると、きっと麻辣の魅力にどっぷり浸れるはずです。
「麻辣」が味わえる料理レシピ
麻辣袋仔槍烏賊(子持ヤリイカの麻辣薬味ソース)。子持ちヤリイカ、菜の花、ホワイトセロリで作る、爽やかな麻辣風味の前菜です。
麻辣拌時菜(ザーサイと季節野菜の特製辛味ソース和え)。新タケノコ、モヤシ、ヤングコーンなどを取り合わせた、野菜主体の軽やかな料理。辣油と花椒粉を使って作る麻辣味です。
麻辣煎牛肉(黒蜜牛のたたき マーラーソースがけ)。牛モモ肉に、黒酢と麻辣味を効かせた一品。麻辣は牛肉との相性抜群です。
麻辣拌鶏肝(鶏レバー、ハツ、ズリのマーラーソース和え)。鶏の内臓を麻辣味で和えた、ビールの進む一品。鶏雑(鸡杂:鶏モツ)は四川省でこよなく愛される食材です。
【麻辣コラム 1】マーラーはマーラーでも「マーラーカオ」は別モノ!
中華スイーツに詳しい方は、マーラーと聞くと「マーラーカオ(中国風蒸しカステラ)」を思い浮かべる方も少なくないのではないでしょうか。
しかし、同じマーラーでもこちらのマーラーは甘いお菓子。馬來糕または馬拉糕と書いて、「マレーシア風カステラ」(馬來/馬拉=マレーシア、糕=ケーキ類)を意味します。
マーラーカオがこのように呼ばれるようになった所以は諸説ありますが、最も有力なのが「マレー地方から広東省へ移民してきた人々が食べていたケーキが広東地方で流行った」というもの。
広東省は飲茶がさかんですから、瞬く間に茶楼の人気メニューになったのでしょう。
参考文献
『中国料理技術大系 烹調法』社団法人日本中国料理調理士会 編(2000年)
『中国料理小辞典』福冨奈津子 著(柴田書店 2011年)
TEXT:山田早苗