寒さが厳しく、身体の冷えやすい冬は、なんだか身も心も縮みがち。つい、活動することがおっくうになってしまうこともあるのでは…。

そこで、今回のC’s kitchen(シーズキッチン)スペシャルセミナーでは、冬でも暖かい身体で伸びやかに過ごすための“養生のコツ”をご紹介。前回同様、営養薬膳大師・古月オーナーシェフの山中一男先生と、HAS YOGA髙橋ちひろ先生のコラボレーションによる「食の座学×食養生ランチ×ヨガ実践」の3本立てでお送りします。

【食養生×ヨガ】東洋の叡智で身体をキレイに!冬編

講義1:寒さから身を守り、腎をいたわる冬の養生とは? 料理2:営養薬膳大師・山中一男先生の冬の食養生レシピ ヨガ3:凝り固まった心身を緩める呼吸法&ヨガポージング

 


冷えは万病の元…、その背景にあるものは?

今年の冬は全国的に厳寒。「もともと冷え性なのに、こんなに寒いとますます凝り固まってしまう」という方もいらっしゃることでしょう。

今回のセミナー当日も、あいにくのみぞれまじり。「冬はまず、この寒さから身を守りましょう」と山中先生もおっしゃる通り、冬はずばり、寒さを身体に入れないことが肝心です。
なあんだ、当たり前じゃないか、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、東洋医学で「冷え」は万病の元。寒さによる冷気を“寒邪(かんじゃ)”とし、決して侮れない「病の源」として捉えているのです。

山中一男先生

例えば、寒邪が体内に入って引き起こすのは、悪寒、発熱、消化不良、腹痛、手足の冷え。さらにそこから発生するのは、気分の落ち込みなど、精神的な萎縮です。

また、寒い季節に起こりがちな、ふしぶしの痛みも寒邪の仕業。手足の痛みや関節のこわばり、麻痺、月経痛は“気”や“血”の流れが停滞して生じるもの。さらに血管が収縮し、急激な血圧上昇から脳梗塞や心筋梗塞になる危険も、冬にこそ大きくなる心配が…。

すなわち、部分的な不具合ではなく、身体全体の不調に関わってくるのが“寒邪”なのです。そこで冬に心がけたいのが、

①補陽(ほよう)=陽気を補い、身体を温め、身体機能を高める
②理気活血(りきかっけつ)=気血の循環を高める

という、2つの考えになります。

お腹

冬は生命エネルギーの貯蔵庫“腎”を養うべし

では、寒い季節でも伸びやかに過ごすためには、身体のどの部分をケアすればいいのでしょう。前回、山中先生からは秋に養生すべきは肺というお話がありましたが、実は東洋医学のベースとなる陰陽五行説では、季節ごとにケアすべき五臓(ごぞう)、すなわち臓器が決まっています。

その理論に則ると、冬に養生すべきは“腎(じん)”。腎は腎臓の腎と同じ漢字を用いますが、これは腎臓という臓器そのものに限りません。「腎は生命エネルギーの源。親から受け継いだ先天的な生命力と、食物から摂取するエネルギーを合わせて腎のエネルギー、すなわち“腎精(じんせい)”として貯蔵し、生殖、成長、発育、ホルモン分泌など、生命活動をコントロールする重要な役割を担っているのが腎」と山中先生。

黒板

また、腎精には、臓器を滋養して休ませる陰気と、身体を温め、臓器を活性化する陽気のバランスを保つ働きがあります。それゆえ腎機能が低下すると、身体の陰陽バランスが崩れ、水分代謝が悪化し、疲れやすく、思考力が低下し、耳鳴りや腰や背中のうずく…と、多岐にわたって支障をきたすことに。そこで、腎を養い精を補う、補腎益精(ほじんえきせい)も冬の養生のポイントとなります。

さらに、「腎を健やかに保つことは、アンチエイジング、東洋医学でいうところの“不老延年”にも繋がるんです」と山中先生。なぜなら、これまで挙げた不調の数々は、生命活動を支える腎精(じんせい)の衰え→老化現象ともいえるため。思えば中国は秦の始皇帝の時代から、不老不死の仙薬を求めてきた元祖アンチエイジング提唱国。冬に老けない身体をつくる、補腎益精食材もしっかり記録されています。

冬に老けない身体をつくる、補腎益精(ほじんえきせい)食材

青字は次ページの食養生レシピで使用している食材です。


●平性(体温に影響を与えない)食材

キャベツ、たらの芽、山芋、ムカゴ、里芋蓮の実、黒豆、ささげ、栗、胡麻、銀杏、米、アーモンド、白きくらげ、葡萄、枸杞(クコ)甲イカなまこ、豚肉、豚足、豚腎臓、牛アキレス腱、烏骨鶏、鳩、ツバメの巣、スッポン、フカヒレ、エイ、いわし、鮪、鮭、まながつお、すずき、いしもち、魚の浮き袋、かさご、鮒、鰻、とこぶし、あわび、平貝

白キクラゲ白キクラゲ フカヒレフカヒレ クコクコ

 


●温熱性(身体を温める)食材

ゆきざさ、うこぎ、ニラ、なた豆、胡桃松の実、ピスタチオ、金木犀、さくらんぼ、ラズベリー、胡椒、八角、ういきょう、クローブ、砂仁、陳皮、豚軟骨、牛腎臓、牛ペニス、羊肉、鶏肉、鶏肝、鶏腸、すずめ、鹿肉、タツノオトシゴ、おこぜ、ふぐ、田うなぎ、ムール貝、帆立貝海老、伊勢海老

 

 

生命エネルギーを高める≒腎精(じんせい)を養う

また“腎精”をアップさせる=生命エネルギーを高めることは、ヨガの目的にも通じるものが。
ヨガの基本である呼吸を意識するだけでも「血流がよくなり、身体の巡りもよくなっていきます。それにヨガのポージングは“内臓のマッサージ”にもなるんですよ」というのは髙橋ちひろ先生。

髙橋ちひろ先生

「呼吸法とポージングによって、体内に溜め込んだ老廃物を外へ排出し、心身をととのえながら生命エネルギーを高めていく」―――、そうすることで、次第に自分の身体の変化に繊細に気づけるようになるのがヨガの大きなメリット。
食養生は未病医学にも通じますが、ヨガもまた、心身のサインをしっかりキャッチできる自分になるために、有効な手段といえますね。

 


 

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TEL 03-3820-0030 担当:笠原(株式会社中華・高橋)
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TEXT 吉谷環
PHOTO 佐藤貴子(ことばデザイン)