来る日も雨が降り続き、高温多湿となる梅雨。この季節は、身体のむくみやだるさを感じたり、鬱々した気分になったりと、いつもは健康な方でもダメージを感じがちではないでしょうか。

そんな季節特有の不調を暮らしから改善するため、2013年に中華・高橋で開催したのが、C’s Kitchen 食養生×ヨガセミナー。東洋医学で長夏(ちょうか)と呼ばれるこの時期を健やかに乗り切るコツは、いったいどんなことなのでしょうか?

今回も、栄養薬膳大師の山中一男先生(中国料理 古月オーナーシェフ)とヨガインストラクターの髙橋ちひろ先生(HAS YOGA)による食養生レシピと、手軽にできるヨガポージングをご紹介します。

もくじ|食養生×ヨガ|東洋の叡智で身体をキレイに!Vol.5 長夏(梅雨)編

1:LECTURE|むくみ&だるさと梅雨の関係
2:RECIPE|梅雨に楽しむ食養生点心レシピ
3:YOGA|経絡ヨガでむくみ&だるさ改善

むくみやすく、疲れやすい…。梅雨の季節は手厚く「脾」の養生をしよう

日本には「四季」という言葉がある通り、季節は4つあるのが当たり前。しかし、食養生(薬膳)のベースとなる陰陽五行思想では、1年を五季に分けてとらえます。

ひとつ多いのは、夏と秋に挟まれた73日間の長夏(ちょうか)。耳慣れない言葉ですが、日本の梅雨がちょうど長夏にあたります

梅雨といえば、湿気と蒸し暑さ。東洋医学では、自然環境の変化に身体が対応できなくなり、病気を引き起こす外的要因として「六淫(風・寒・暑・湿・燥・火)」を掲げていますが、長夏で最も強くなるのが「湿」。

中でもこの季節の陰の気は「湿邪(しつじゃ)」と呼ばれ、身体に水分を溜めてしまいがち。そこでケアしたいのが、消化器系統全般を司る「脾(ひ)」です。

「中国料理 古月」山中一男先生。

「脾は、食べものから水分や栄養素を吸収して、気・血・体液を生成し、全身に運び、さまざまな器官を滋養する働きがあります。『健康の根本は脾の養生にあり』と言われるほど重要なんですよ」

そう山中先生がおっしゃる通り、脾は栄養と水分の代謝に大きく関わる部分。特に食べ過ぎや夜更かし、運動不足、ストレスなどがあると、消化力が衰え、水分代謝が悪くなりがちです。

以下にご紹介するのが、脾の働き。読んでみると、碑の機能低下による症状を感じている人も少なくないのでは?

脾の主な働き

●「後天の精」を作り出す=消化吸収

飲食物を消化して栄養素を吸収する働き。この機能が衰えると、食欲不振、消化不良、便の異常(食べるとすぐに排便したくなる、軟便、便秘、コロコロ便)などの症状が。ちなみに「先天の精(父母から受け継ぎ、成長と生殖に関わる)」は腎がつかさどります

●運化(うんか)=栄養素を全身に運ぶ

栄養素を全身に運んで諸器官を滋養する働き。この機能が衰えると、元気がない、気力が出ない、疲れやすくなるなどの症状が。

●統血(とうけつ)=血を統制する

血を生成し、血管の外に洩れ出ないように血を統制する働き。脾が激しく衰えると、血便、血尿、潰瘍など、消化器官の出血に至ります。

また、この季節は蒸し暑いからといって、冷たいものや生ものを食べ過ぎてしまうと、外側だけでなく、身体の中からも「湿」が盛んになり、手足の冷えや倦怠感などが生じる「水毒(すいどく)」状態になりやすいので要注意。

こうした状態を防ぐためには、食べ過ぎないことはもちろん、脾を養い、身体に水分や熱を溜め込まない食事の選び方が肝心。また、いつも空調の効いた部屋にいて汗をかきにくくなっている方は、ヨガなどの適度な運動によって体内の湿気を排出させることが、脾の養生につながります。

四季を通じて快調に。脾を健やかにし、暑さや湿邪から身を守る食材

それでは、どんな食材が脾を養生してくれるのでしょうか。大きく3つの役割に分けてご紹介しましょう。

①補気健脾(ほきけんぴ)の食材

気力を高め、消化吸収を高めて、元気をつける食材です。特に女性は冷えやすい体質の人が多いので、体を冷やす寒涼性食品は避け、平性または温熱性の食材を選びましょう。

▼涼寒性
ナズナ、明日葉、百合根、くわい、ハヤト瓜、ズッキーニ、冬瓜、菱の実、粟、小麦、大麦、ハトムギ、蕎麦、イワタケ、柚子、林檎、無花果、鴨、うさぎ

▼平性
大根、にんじん、チョロギ、さつま芋、山芋、じゃがいも、里芋、蓮の実、かぼちゃ、ふじまめ、大豆、黒豆、そら豆、ささげ、落花生、栗、胡麻、ハシバミ、すいかの種、米、マッシュルーム、ヤマブシタケ、グミ、ココナッツ、サメ肉、ボラ、マナガツオ、スズキ、鯛、ニベ、ヒラメ、ウマヅラハギ、鯉、鮒、どじょう、豚肉、中国ハム、牛肉、烏骨鶏、ツバメの巣蜂蜜

▼温熱性
シソ、松の実、はまなす、さくらんぼ、棗(なつめ)、レイシ、竜眼、白ズク、草ズク、肉ズク、砂仁、木香、ヒラ、鮭、なまず、田うなぎ、雉、鹿

②利水化湿(りすいかしつ)の食材

湿邪が滞らないよう、余分な水分を汗や尿として排泄させる食材です。

▼涼寒性
キャベツ、ツルムラサキ、チコリ、空心菜、セロリ、芹、オレガノ、なずな、じゅんさい、かんぞうの芽、ぜんまい、わらび、ミズ、ゴボウ、小豆、緑豆、大豆もやし、金糸瓜、キュウリ、冬瓜、ユウガオ、もち粟、大麦、ハトムギ、イワタケ、昆布、のり、おごのり、ひじき、西瓜、桑の実、マテ貝、青柳、蛤、蜆、鴨、ワタリ蟹

▼平性
三つ葉、蓼(たで)、アスパラガス、ムカゴ、菊芋、蓮の実、インゲン豆、大豆、ふじまめ、豌豆苗、ササゲ、銀杏、かぼちゃの種、麻の実、黒米、ダッタンソバ、トウモロコシ、トウモロコシの鬚、キヌガサタケ、蓮の花、葡萄、パパイヤ,ココナッツ、サメ肉フカヒレ、エイ、ニシン、鯛、ハゼ、コチ、ホウボウ、白魚、鯉、鮒、ナマズ、クラゲ家鴨

▼温熱性
うど、バジル、よもぎ、ウコギ、蕪、玉葱、山椒、クローブシナモン、白ズク、草ズク、砂仁、三奈、クミン、鮭、フグ、田うなぎ

③解暑(げしょ)の食材

夏バテ予防にも威力を発揮する、身体を冷やす食材です。

レタス、クレソン、金糸瓜、きゅうり、白瓜、冬瓜、苦瓜(ゴーヤ)、蓮根、蓮の葉、トマト、フクロタケ、豆苗、緑豆、緑豆もやし、レモン、西瓜、メロン、スモモ

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