【餛飩/馄饨】hún tún フントゥン
中国料理のメニューに「饂飩(うどん)」の文字がと思いきや、よくよく見るとちょっと違うこちらの「餛飩(フントゥン)」とは、実は日本でもお馴染みの「ワンタン」なのです。
ワンタンは、中国全土で食べられており、地域によって様々な名前で呼ばれています。中国北部を中心に多くの地域では、餛飩(hún tún/フントゥン)と呼ばれています。この料理に大いなる発展をもたらした広東では雲吞(wan4 tan1/ワンタン)と呼ばれており、これが日本でもワンタンと呼称する元となりました。四川では抄手(chāo shǒu/チャオショウ)、福建・台湾では扁食(biǎn shí/ビェンシー)と呼ばれています。
その起源は、皮で餡を包む中国北部の料理にあり、唐代までは水餃子との明確な区別はありませんでした。その後、餛飩(フントゥン)と名称が定まって行く過程で、水餃子とは違った料理として発展していったのです。冒頭の饂飩(うどん)のルーツも、餛飩に求められるという説もあります。
●ワンタンと餃子(水餃子)の違い
・ワンタンの皮は方形で、餃子の皮は円形である。
・ワンタンの皮は比較的薄く、茹でると透明感があり、茹で時間も短い。
・水餃子は「三沈三浮」といわれるように、3回差し水をしてよく茹でる。
●中国・香港・台湾のワンタン
北京の「餛飩」は、餡は少な目。
香港の「蝦仁雲呑」は、プリプリで金魚のしっぽの形。
四川の「紅油抄手」は、やっぱりラー油で味付け。
台湾の「扁食」も餡は多めで、スープにセロリや揚げネギが。
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冬至餛飩夏至面(冬至にワンタン、夏至に麺)
中国では、冬至にワンタンを食べ、夏至に麺を食べる風習について、以下のような言い伝えがあります。
漢王朝の頃、国境の北方をしばしば匈奴に荒らされ、人々は安心して生活することができませんでした。その当時、匈奴の部族には渾(hún)と屯(tún)というとても残忍な首領がいました。人々は彼らを大変憎んでいたため、肉を包んだ餃子状の料理に彼らの名前と同じ音の餛飩(hún tún)の文字を当て、それを食べることで憂さを晴らしていました。その後戦乱も治まり、平和な時代が訪れても、最初に餛飩を作ったのが冬至の日だったことにちなみ、冬至の日には家々では餛飩を食べるようになったと言われています。
また別の言伝えでは、冬至の日に都の道教寺院では、元始天尊の誕生祝のための祭祀が盛大に執り行われていました。元始天尊は原初の混沌未分を象徴する神です。それが民間に伝わり、混沌(hún dùn)と音の似通った餛飩(hún tún)を食べる日として広まったと言われています。
なお、夏至に麺を食べるのは、一年で昼間の一番長い日に、長い麺を食べることで、長寿を願っているのです。
「餛飩/雲呑」な料理
ベトナムのワンタン麺「ミー・バンタン」
ベトナムのハノイで、何気なく注文した「ミー・バンタン」が、出されてみたら「ワンタン麺」。脳内でミー=麺、バンタン=ワンタンだと直感的に翻訳できてしまいました。
中国北方で生まれた「餛飩(hún tún/フントゥン)」が、広東に伝わり「雲吞(wan4 tan1/ワンタン)」と変化し、それが日本にも伝わって私たちも「ワンタン」と呼んでいることはすでに述べましたが、ベトナムでは「Vằn thắn /バンタン」と変化したのですね。
日本と同じく中国の影響を受けてお箸を使う国ベトナムの言葉は、中国語が分かると何となく分かるところもあるので、中華好きには面白いですね。特に広東語ができると。
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日本語 |
漢字表記 |
北京語 |
広東語 |
ベトナム語 |
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ベトナム |
越南 |
ユェ ナン
yuè nán |
ユッ ナム
jyut6 naam4 |
ヴィエット ナム
Việt Nam |
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ハノイ |
河內 |
フー ネイ
hé nèi |
ホー ノイ
ho4 noi5 |
ハ ノイ
Hà Nội |
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ホーチミン |
胡志明 |
フー ジー ミン
hú zhì míng |
ウー ジー ミン
wu4 zi3 ming4 |
ホー チー ミン
Hồ Chí Minh |
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参考
中国文化网「中国的冬至>冬至美食与进补」
维基百科 自由的百科全书「馄饨」
Text 小杉 勉
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