四川料理は香りが決め手。スパイスの香りを最大限に引き出すコツは?スーツァンレストラン陳・菰田料理長の料理とともにご紹介します。

唐辛子とは弱火で付き合おう

中華料理は強火で調理するものと思われがちですが、じっくり火を通すことでおいしくなる食材があります。それが唐辛子です。なかでも鷹の爪より辛味が少なく、糖分が多い朝天干辣椒は、四川料理に欠かせない香辛料のひとつ。その香味を引き出すには、油を入れた鍋に入れ、弱火でゆっくり火を通すことが肝心です。
そうすることで、油に朝天干辣椒の旨みが抽出されるだけでなく、赤茶色になった朝天干辣椒からほどよく水分が抜け、丸のまま食べられるようになります。これを強火で炒めてしまうと、あっという間に焦げてしまい、残るのは辛味と苦味だけ。食材によって火加減を調節するのがポイントです。

こうして作られた唐辛子油は肉料理と好相性。肉は下味をつけ、旨みを逃さないよう、コーンスターチをまぶしてから揚げています。家庭にはあまり浸透していないコーンスターチですが、片栗粉より衣がはがれにくいため、しっかりと揚がります。

肉は牛ヒレ肉の替わりにクミンと相性のいい羊肉を使用してもいいでしょう。生の羊肉が手に入ったら、ぜひ朝天干辣椒やクミンで調味してみてください。

料理:菰田欣也(スーツァンレストラン陳
撮影:2009年2月 古樹軒の料理教室にて
中国語料理名:孜然牛柳片(zi ran niu liu pian ズー ラン ニィゥ リィゥ ピィェン)


Text 長谷川亜紀
Photo 西田伸夫