クリーム仕立て×コンソメのジュレ――? 一見そんな風にも見えますが、口に含めばはっきりわかる、なんとこちらは皮蛋(ピータン)豆腐。

主材料は皮蛋、ほうれん草、絹ごし豆腐、さらに琥珀色に輝くジュレは、黒酢をベースに作ったもの。伝統的な中華の前菜は、どのように新しい一皿に生まれ変わったのでしょうか。「麻布長江 香福筵(こうふくえん)」の田村亮介オーナーシェフに伺いました。

烏骨鶏のピータン豆腐・青菜のマカロン風 8年熟成の黒酢ジュレ

皮蛋の黄身と白身を分け、濃厚かつ軽やかなおいしさをクリエイト

実はこちらの皮蛋豆腐、作り方は思いのほかシンプル。土台となる白いペースト、間に挟む緑の層、上に乗せるジュレを順に用意します。

まず、しっかり水切りした豆腐と皮蛋の卵黄をミキサーにかけ、醤油少々で調味した後、みじん切りにした卵白を混ぜて、白いペーストを作ります。緑の層はほうれん草で、さっとゆでたら、水に放って色止めをし、刻んでごま油と塩を和えておきます。

琥珀色のジュレは、黒酢、清湯(透明のスープ)、味醂、薄口醤油をゼリー状に固めて崩すだけ。もち米、塩、塩だけで熟成された黒酢は、アミノ酸豊富で酸味がまろやか。ここでは8年物の黒酢を使用し、芳醇な味と香りに仕立てました。

使う素材がシンプルなだけに、熟成された黒酢の風味は、味のアクセントとして大切な要素。皮蛋は烏骨鶏のものを使用していますが、手に入れやすい松花皮蛋や青島皮蛋でも大丈夫です。

最後は直径5㎝、高さ3㎝のセルクルに、白、緑、白の順に重ねて仕上げます。提供する直前に黒酢のジュレを盛り付け、型を外したらできあがり。言われなければ皮蛋豆腐には見えませんが、皮蛋のコクと風味は健在。皮蛋の見た目や食感が苦手な方でも、これなら食べられそうですね。

料理:田村亮介( 麻布長江 香福筵
撮影:2016年5月27日の古樹軒の料理教室にて
中国語料理名:馬卡龍皮蛋豆腐(mǎ kǎ lóng pí dàn dòu fǔ / マー カー ロン ピー ダン ドウ フー)


text 近江文代
photo 西田伸夫