ただふかしただけのじゃがいもなら、1個が限界かもしれない。しかしこの料理は罪深い。「じゃがいもってこんなに食べられたっけ?」と思うほど、皿の上の芋があっという間に消える。ビール党なら、見た瞬間に「ビールビール!」となることを約束する。
主材料は新じゃが、葱、油、挽肉。ポイントは「煎り焼き」だ。焼いたじゃがいもに限らず、焼肉、お好み焼き、クッキーなど、茶色いおいしさは、みんなメイラード反応でできている。すなわち糖とアミノ酸を加熱すると、褐色に色づき、おいしそうな香りが出るのだ。これは、その化学反応をいかしたじゃがいも料理だ。
食べるタイミングは、作りたてが圧倒的においしい。店頭で新じゃがを見かけたら、迷わず買って作ってほしい。後悔はさせない。

メイラード反応で美味くなる!じゃがいも・葱・ひき肉でつくる「香煎土豆肉末(シャンジェン トゥドウ ロウモー)」のレシピ
| <作り方のポイント> じゃがいもは包丁で切らずに軽く潰す。焼くときは多めの油で、カリッと焦げ目がつくまで動かさない。挽肉は芋を片面返したところで入れると、焦げすぎず塩梅がいい。冷えたビールと一緒にどうぞ。 |
材料 ※所要時間約12分
・新じゃが 8個(350~380gくらい)
・豚ひき肉 60~70g
・油 大さじ2弱
・醤油 大さじ1杯弱
・小葱 2本(刻む)
1:じゃがいもをレンジなどで加熱し、中まで火を通す

じゃがいもを洗って汚れを落とし、皿に入れて、水を少々ふりかけ、レンジで加熱して火を通す。目安は8分(500W)。レンジは加熱ムラが出やすいが手軽だ。蒸した方が均一に火が通るが、やりやすいやり方でどうぞ。
2:じゃがいもの皮をむく

じゃがいもを加熱してすぐ皮をむくと、指が熱くて大変なことになる。一度冷水にくぐらせ、表面を冷やしてから皮をむくとやりやすい。むくときは、爪楊枝などで皮に軽く傷を付け、指で引っ張るとぴら~っとはがれる。完熟の桃の皮むきに近い感覚だ。
もし、ここで皮がむけない場合は、じゃがいもがまだ硬いという証拠。さらにレンジで加熱し、中で軟らかくすると、ぴら~っとむけるようになる。
3:じゃがいもを軽く潰す

皮をむいたじゃがいもに包丁の腹を軽く押し当て、むぎゅっと潰す。ぺたんこにせず、かといって遠慮しすぎもよくない。元の高さの半分くらいを目安に潰そう。
この潰れたかたちが、加熱したときの焼きやすさ、香ばしさ、食べたときの口当たりのよさにつながる。
4:鍋に油を入れ、じゃがいもを煎り焼く

香り高く焼くために、油は気持ち多めがいい(大さじ1.5~2弱)。潰したじゃがいもを入れ、こんがりと焼き目がつくまで中強火で煎り焼く。
じゃがいもは既に火が通っており、焼き色を付ける(メイラード反応を起こす)のが目的なので、油の上に置いたらむやみに動かさない。時間の目安は40~60秒。
5:じゃがいもを裏返し、豚ひき肉を入れる

片面がに焼き目がついたじゃがいもをフライ返しなどで裏返し、もう片面も煎り焼く。同時に、豚ひき肉を加え、鍋の端で一緒に加熱する。
このタイミングで豚ひき肉を入れるのは、最初から入れると肉が焦げすぎてしまうからだ。脂が多めのひき肉なら、ラードが香り立ち、赤身のひき肉(写真)なら肉肉しさが味わえる。
じゃがいもは焼くうちに自然と崩れるが、崩れない場合、フライ返しなどで一口大に崩しながら焼くと、全体に焼き色がついて香ばしくなり、食べやすくなる。
6:塩と醤油を入れて調味する

じゃがいもの表面にとこんがりと焼き色がついたら、塩少々、鍋肌から醤油大さじ1杯弱を入れて全体になじませる。醤油は1カ所に集まらないように回し入れよう。ここで油を足すと、さらに罪深い味になる。
7:葱を加え、香りが出たらできあがり!

鍋を返しながら、醤油が全体に回ったら、小葱を入れ、軽く香りが立つまで煽ったらできあがりだ。
止まらない箸、止まらないビール!じゃがいもってこんなに美味しかった⁉

煎り焼いた新じゃがは、肉のうまみと油で焼けた小葱の香りをまとって、さらにぐんと美味くなる。この焦げ跡の香ばしさこそ、香煎土豆肉末(煎り焼き肉じゃが)の真骨頂。大きなじゃがいもを角切りにするのではなく、新じゃがを潰してうまれる口当たりのよさも後を引く。
調理時間はレンジ8分、煎り焼きに2分程度。おかずだけでなく、おやつ、おつまみにも向いている。恐らく新じゃが8個なら2人で秒殺。店頭で新じゃがを見かけたらぜひ作ってみてほしい。よく冷えたビールの準備をお忘れなく。
[補足]粗びき肉が手に入るなら、ひき肉を最初からじゃがいもと炒めてもいい。そうすると、豚肉から出るラードも加わって、さらにコクがでる。「ジャーマンポテトみたい」と言われそうだが、生肉でつくる一種の“軽さ”があるのも、この料理の魅力だ。


RECIPE&TEXT&PHOTO サトタカ(佐藤貴子)








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