葱油を自家製すると、副産物として葱の揚げカス=油葱酥(ヨウツォンスー|yóu cōng sū)ができる。水分が抜け切り、サクサクになった揚げ葱は甘く香ばしい。これを料理に活用しない手はない。※自家製葱油を熱く語る回はこちら

料理の第一候補は、葱油拌麺(ツォンヨウバンミェン|cōng yóu bàn miàn|葱油拌面)だ。
葱の揚げカス料理というジャンルがあるならば、葱油拌麺は知名度、おいしさ、作りやすさの全方位から、この分野の超級明星(スーパースター)といえる。
材料は、麺、葱の揚げカス、茶色い調味料。麺とタレを食べる前に一心不乱に混ぜて混ぜて、麺が茶色くぬらぬらと色づいたらずずーっ。甘塩っぱく、どこか下世話で、思わず口から麺を迎えに行きたくなってしまう魔性の味だ。
雰囲気としては、ソース焼きそばのソースが醤油と葱油だれに代わった感じだが、葱油の香り、葱の揚げカスの香ばしさは、決してこの味付けに負けることがない。そして食べれば食べるほど、自家製葱油の威力を感じることとなるのだ。
ともかく難しいことは何もない。葱油を作った勢いで作ってみてほしい。
葱油料理のスーパースター。葱油拌麺(ツォンヨウバンミェン|葱油の和え麺)の作り方
材料 2人前(1人あたり乾麺80g。やや控えめの量)
乾麺 160g ※日本で手に入るものだと、細いうどんが適する
葱の揚げカス お好みの量
▼たれ
醤油 大さじ1
老抽(中国たまり醤油) 大さじ2分の1
オイスターソース 大さじ3分の1
黒酢 たらっと(少々)※なくてもいい
砂糖 小さじ山盛り1
葱油 大さじ1くらい→レシピはこちら
※老抽は中華食材店で手に入る。「業務スーパー」では「照りだし専用醤油(海天招牌老抽王)」という名称で小さいボトルを入手可能。全量を普通の醤油にするよりも、色よく、しょっぱくなく仕上がる。
作り方のポイント ・基本的に、醤油と老抽(中国たまり醤油)と砂糖で味を決める。肝心なのは砂糖の量。少なすぎると、この料理の親しみやすい雰囲気が出ず、味が決まらない。 ・オイスターソースはうまみを膨らませる。黒酢を少量入れると、後味がややさっぱりする。 |
1:たれの材料を合わせ、ひと煮立ちさせる
小ぶりのフライパンまたは鍋にたれの材料を入れ、混ぜてからひと煮立ちさせる。ふわあっと泡が立ったらすぐに火を止めて冷ます。決して焦がさない、煮詰めない。目指すのは、甘塩っぱくてコクのある味わいだ。
2:麺をゆでる
中華麺よりも、細いうどんのような白いストレート麺がおすすめ。クセがない麺こそ、葱の揚げカスと葱油の風味が引き立つ。
ゆでたら湯を切り、サッと水で流して麺のぬめりを取り(冷やさない)、再び水を切って皿に盛る。
3:たれをかけ、葱の揚げカスをのせる
たれを大さじ1杯ほど麺の上にかけ、葱の揚げカスをのせたらできあがり。混ぜて混ぜて、麺がヌラヌラと茶色に輝き始めたら召し上がれ!
葱の揚げカスは最高の調味料。混ぜるほどに美味くなる!

この料理のいいところは、材料も工程もシンプルなところだ。素材にこだわればその味が生かされ、インスタント麺の上位変換のような品格をまとう。
香りの決め手は葱の揚げカスと自家製葱油。そこに、甘めの醤油ベースのタレが絡めば、煽情的なうまさが生まれる。
一気呵成に食べ切って、もし「また作りたいけど、葱油を作った後しかできないじゃないか!」と思ったら、2回目は調合したタレに小葱を散らせばよい。
葱の揚げカスがあったほうが香ばしさは増すが、さらに簡便にできるので、忙しいときの昼ごはんやおやつにぴったり。揚げ葱がない分、自家製葱油のクリアな香りが立ってきて、これはこれでいいものだ。

さらにバリエーションとして、干しえびを加えた開洋葱油拌麺が挙げられる。これは、日本の上海料理店でもよく見かけるメニューだ。
作る場合、海産物のうまみを干しえびに譲り、レシピからオイスターソースを省くといい。また、干しえびは水や酒で戻してから加熱する。
ちなみに、葱油拌麺で使い切れなかった葱の揚げカスは、豚肉を煮るときに使うといい。鍋に入れると、コクと香ばしさを増すことができる。

続編では、これを使った即席肉味噌の作り方を紹介する。ごはんにのせて魯肉飯のように食べたり、ビーフンと一緒に炒めるなど、夢が広がる肉味噌だ。
[続編]葱油の副産物でつくる即席肉味噌と魯肉飯風ごはん、炒めビーフンのレシピ[5月上旬公開]
▼中華の香りは葱油でつくる。自家製葱油シリーズ
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RECIPE&TEXT&PHOTO サトタカ(佐藤貴子)