蒸し暑さが一段と増す2025年の夏。東京の湿度は熱帯性気候のタイ・バンコクをも上回り、日中の外出は滝汗必至だ。
こうなるとつい、冷たいものに吸い寄せられるが、中華圏では「三伏天少喝冷飲(夏至から立秋の間は冷たいものを控えるべし)」といわれる。つまり、身体を冷やさず、夏のほてりを無くすことが肝心なのだ。
そこでおすすめしたいのが冬瓜のスープである。
東洋医学の視点では、冬瓜は喉の渇きを止め、のぼせなどの熱を冷まして排毒し(清熱解毒)、利尿作用があり、体内の余分な湿気を取るといった作用がある。そこでこの猛暑に、冬瓜をとことん楽しみ、身体を調えるスープのレシピをご紹介したい。
覚えれば一生モノ&展開は無限!冬瓜と肉団子のスープ(冬瓜肉丸湯)

冬瓜の料理で、真っ先にご紹介したいのは冬瓜と肉団子のスープ(冬瓜肉丸湯)だ。このスープのいいところは、出汁(ベースとなるスープ)をとる必要がなく、料理として食べごたえがあること。
普段まったく肉団子を作らない人からすると、肉を練ることは手間に感じるかも知れないが、安価なひき肉をちょっと丸めるだけで、ぐんとQOLを上げられる。
また、スープができあがれば、トマト、アサリ、昆布、春雨、ミントなど、さらに食材を加えた楽しみが続く。そもそも2種類の食材でつくるシンプルな味わいなので、プラス1でかなり味の幅を広げられるのだ。
なにより、中華式肉団子の作りのコツを覚えれば一生もの。この夏、ぜひトライしてほしい。
冬瓜と肉団子のスープ(冬瓜肉丸湯)のレシピ

[材料]※大きめの碗に4杯ほど
・冬瓜 4分の1(600g前後。種とワタを取り、皮をむいて440gくらい)
・水 800cc~
・生姜 薄切り2片
・油 小さじ2
・塩 小さじ3分の2(好みで調整)
・薬味(葱、香菜、ミントなど)好みの量
▼肉団子の材料
・豚ひき肉 250gくらい(中型1パック)
・白葱 10cm
・葱姜水 大さじ1(葱の青い部分2cmみじん切り、すり下ろし生姜またはみじん切り(薄切り3枚を刻む)に水を大さじ2~3杯加えたもの)
・溶き卵 2分の1個分
・片栗粉 小さじ1
・ごま油(焙煎タイプ)小さじ2
| ポイント ・ひき肉を練るときは、最初に塩を加え、軽く粘りがでるまで練る。 ・葱姜水で肉のくさみをマスキングする。 |
作り方
[1]冬瓜、生姜、葱を切る
冬瓜はワタと種をスプーンなどで取り除いた後、皮をむき、小塊にしてから6~7mmの厚さにスライスする。
生姜は皮付きのまま薄切りにし、一部をみじん切りにする(葱姜水用)。白葱はみじん切りにする。



[2]葱姜水を作る
葱姜水(ツォンジャンシュイ)は、プロの点心師が餃子や雲呑などを作る際、用いるもののひとつだ。
これが肉のにおいをマスキングして、中国料理らしい香りが出せる優れもの。肉団子だけでなく、餃子など幅広い肉ダネづくりに活用できる。
作り方は、葱のみじん切りと下ろし生姜を小さな器に入れ、水を注いで10分以上置くだけ。そうすると、2つの香りが合わさった水ができる。とはいえ、作るのが面倒な場合は省略してもOKだ。

[3]ひき肉に塩を加え、軽く粘りがでるまで練る
ボウルに豚ひき肉を入れ、まずは揉むようにして全体をまとめる。
まとまったら、塩を加え、同じ方向に混ぜ合わせて粘りを出す。練っていると、肉の脂肪や繊維が細長く変形し、少し抵抗が加わって肉が練りにくく感じる瞬間が訪れるが、これが粘りが出てきた目安だ。ここで肉に粘りを出しておくと、この後、水分や葱を加えても、肉がバラバラにならず、ゆでたときに崩れにくくなる。
なお、ひき肉を扱うときは、素手よりニトリル手袋をはめるといい。手を洗う手間が省けてかなり助かる。


[4]葱姜水を加えて肉を練る
肉のくさみをマスキングし、肉ダネを軟らかくするために、葱姜水を大さじ1杯ほど加えてさらに練る。肉だけでつくる肉団子は硬くなりがちなので、葱姜水を作らない場合は水を加えよう。

[5]溶き卵を加えて練る
4の肉ダネがまとまってきたら、溶き卵を2回に分けて加え、その都度練る。卵を加えると、つなぎ効果が得られるとともに、水分を保持して、加熱してもパサつきにくい肉団子に仕上がる。

[6]刻み葱、片栗粉、ごま油を順に加えながら練る
刻み葱、片栗粉、ごま油の順に、材料を加えるたびに混ぜ合わせる。最後のごま油は香り付けであり、がっつり混ぜなくともよい。これで肉ダネづくりは終了だ。

[7]冬瓜を炒める
鍋に炒め油を入れ、生姜の薄切りを加えて軽く香りがでたら、冬瓜を入れて全体に油を絡めるようにしながら炒める。焦がさないよう注意。

[8]水を加えて煮る
冬瓜が軽く透明感を帯びてきたら、水を加えて沸騰させ、5分煮る。

[9]肉ダネを団子にしてゆでる
水面が軽くふつふつと沸く火加減にして肉ダネを入れる。火が強すぎると肉ダネが崩れやすく、弱すぎると肉ダネを入れたときに温度が下がってしまう。
肉ダネは、手で掴んで、親指と人差し指で掴むようにしてむにゅっと押し出す。押し出た真ん丸の部分を、スプーンですくい取るようにして鍋の中に入れる。
このとき、スプーンに油を塗っておくと肉離れがよくなる。また、ニトリル手袋をして作業すると、手が汚れないので後が楽だ。


[10]肉団子に火を通し、塩で味を調える
蓋をして約5分煮て、肉団子に火を通す。蓋を開けると、湯気の合間から、ほんのり透き通った冬瓜と、肉団子から出たキレイな油がキラキラと輝いているはずだ。最後に塩で味を調えたらできあがり。さあいただこう。
熱々なのにスッとする。冬瓜のじゅわっとしみるやさしさに、肉団子のうまみが食欲を加速!

できたてをいただくと、肉団子はうまみを保ち、そのうまみを冬瓜が吸い、実にやわらかでやさしい風味だ。団子は噛めばじゅわっと脂と肉汁がにじみ出て、食べる悦びを倍増させる。
熱々なのに、どこか清涼感があるのは、煮込みすぎない調理法にもあるが、冬瓜の持つ素質だろう。また、塩だけで味を決めたスープは身体に軽い。食欲のないときや、夏の昼ごはんなどにぴったりだ。

プラス1食材でときめく味変!トマト、アサリ、ミントに春雨♡
さらに、このスープは二度三度と味展開の楽しみが待っている。比較的さっぱりとした味わいなので、加える食材によって新たなおいしさが生まれるのだ。
例えば、特に具を入れなくても、次に食べるタイミングに向けて出汁昆布を5cmくらい入れておくと、ぐんとうまみが増したスープになる(もちろん、最初から入れてもいい)。

また、トマトを加えれば、うまみ成分であるグルタミン酸とグアニル酸が加わり、さらにうまうま。トマトは加熱することでうまみが増す上、ほのかな酸味が食欲を刺激する。

アサリやハマグリとも相性がいい。貝のうまみ成分であるコハク酸が加わると、俄然リッチで奥行きのある味わいが生まれる。こうなると、もうこれだけでご馳走だ。

腹持ちをよくしたいときは春雨を入れ、爽やかに食べたいときはミントをはらり。冬瓜と肉団子という2つの食材の取り合わせが3つに増えるだけで、味わいの幅は何倍にも広がる。
余談になるが、過日、西早稲田の中国茶カフェ『甘露』の謝さんのご実家(遼寧省瀋陽市)を訪れた折、お父上がこの冬瓜と肉団子のスープを作ってくださった。
これが、ひと口飲めば身体にスッと溶け込み、冬瓜はどこまでもやさしく軟らかく、肉のうまみが食欲を増す。これは汗ばむ季節にぴったりだと感じ入り、帰国して今回のレシピ記事に至ったことを書き記しておきたい。

ちなみに、2025年の三伏は、7月20日から8月18日までの30日間。読者の皆様、どうか夏バテせずに、ともに猛暑を乗り切りましょう。つくれぽもお待ちしております。
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RECIPE&TEXT&PHOTO サトタカ(佐藤貴子)








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